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駆け出しの頃の話

社長「食品パッケージデザインにに使うから
草原、牧場、牛舎、ウシがいる風景を
絵自体にストーリーを持たせて描いて」

昔むかしの話。
入社したてのデザイン事務所で「とある商品パッケージデザイン」につかう絵を頼まれて描きました。

描いてはボツ描いてはボツをくりかえし10枚くらいは描いたでしょうか。

最後に社長からギリギリ合格点をもらえたのがこのTOPの絵。
何故かこの1枚の絵だけは捨てることができずに自宅の納戸に置いて時々眺めています。

絵を描くのは子どもの頃から大好きでした。
目的もなくただ絵を描いているだけで楽しかったし、授業中も絵を描いたりしててノートや教科書の端っこは落書きいっぱいでした。
パラパラマンガ描いたり。

小学校の頃の担任の先生が美術専攻の先生だった影響もあって、美術の授業だけは落書きもせずに授業に集中していました。
授業で先生から絵のアドバイスをもらうと、どんどん絵が上達するのも嬉しかったし、写生大会では賞状をもらったり展覧会でも入選したりすることもあり、親や先生・友だちにも褒めてもらえたのも嬉しかった。

でも、いつからか自分が描きたいから描くんじゃなくて「褒められたい」「誰かに絵を認められたい」というような気持ちで描いているような感覚に気づいてしまってから絵が描けなくなってきました。
描けなくなったというか、仕上がりを意識しすぎて描きたくなくなってきたというのが正しいかもしれません。

結局この絵は合格点はもらったものの、実際に商品デザインには使われず別な人(先輩デザイナー)が描いた絵が使われ、この絵が印刷されることはありませんでした。

でも、いま自分でこの絵を見れば社長の判断は間違っていなかったとハッキリわかります。
これはとても商品に使えるような絵じゃないと思います。

当時は修行中の身。
絵だけでなくレタリング・図のトレースしても、毎回毎回ボツ。
大の大人だけど悔しくて涙することだってありました。
優しくも厳しい先輩・社長に囲まれてデザイナーとして充実した修業の時期を過ごさせてもらったと思います。

景気の衰退とデジタル化の波に乗りきれなかったそのデザイン会社は解散。
それ以降社長との音信は途絶えていましたが、病気療養の末に亡くなったとを知人を通じて知りました。
そんな折、ふとこの絵を見た時に当時の事を思い出しこの絵に日の目を見させてあげようと思いつきました。

ボツの絵だけど

アップしちゃったよ。へへへ。

〈フリーペーパーSou.に投稿したものを加筆訂正して掲載〉

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