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ゲテモノ喰い

嫌いな食べ物がほとんどない僕でも、世の中本当にこんなものを食べるのか、とちょっと口にするのを躊躇するものがある。
東南アジアの孵化しかけたアヒルの卵や、ゲンゴロウやらタランチュラやらを素揚げにした各種昆虫食。ヨーロッパにおいても子羊や豚の脳味噌が調理されたものなどがあり、世界にはまだまだ見知らぬ食べ物があることを知る。おっかなびっくりしながらも、いつかは食べてみたいという相反した気持ちが芽生え、そのいつかの時間を夢想する。
世界的に有名な旅行ガイドのLonely Planet社が出している本に『Lonely Planet's Extream Cuisine: Exotic Tastes from Around the World』という本がある。
簡単に言うと、世界のゲテモノ喰い案内だ。表紙はムカデを口にする女の人が唖然とした顔をしたデザインとなっており、読者にショックを投げかける。先に挙げたような、物珍しい食べ物が写真付きで紹介されているし、他にもアメリカの超ハイカロリー料理とか、ヨーロッパの伝統料理とか、あらゆる種類のゲテモノがこの本一冊にパッケージされているのだ。
この本を眺めていると、一つ気がつくことがある。そのゲテモノ料理なるものを産している国の名前を追っかけていくと、一番多くクレジットされている国がなんと言うことだろうか、Japanなのだ。1本足は信号機以外、2本足は人以外、4本足は椅子と机以外、飛んでるものは飛行機以外を食べ尽くすと言われる中国を抑えて、日本が一位に躍り出ていたのが以外だった。
どのような選考基準で掲載されることになったかは不明だが、Lonely Planet社が中国との関係が長いイギリスの会社であることを考えれば、日本の食文化の方が彼らにとっては未だかつてない不気味さを感じさせたのかもしれない。
イギリス人になったつもりで、想像してみる。
生で魚を食べるというだけでも馴染みがないのに、致死に至る毒を持つ河豚を食べるなどとは、確かにクレイジーだ。シラスの踊り喰いなどは、生きた魚の生飲みで、残酷至極だ。魚のなれ寿司に至っては、温帯の日本で魚と米と塩で長期熟成させるという、ほとんど腐れたものにしか見えない、だろう。
そんな、正体不明で残虐性が発揮されていると外国人に思われるものを、僕はある種自然なこととして受け入れている。
きっと、そのような自分が持つ文化への無知であったり、他の文化に対する無理解であったりするものが、様々な文化的な摩擦を引き起こしたりするだと想像するが、話が難しくなるので今日はここまで。
何にせよ、ゲテモノ喰いの話はどんな切り口であっても僕をハッピーにしてくれるし、それで良いのである。