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Hot, Spicy & Masochistic

辛い物を食べる。そうすると、なぜだか気分が爽快になる。どうしてだかどうしてだか、その辛さが増せば増ほどに、その爽快感が別次元のものとなっていくような気がする。そう僕は辛い食べ物好きだ。
夏が近づくと、世間では激辛商品などが店頭に並び、いよいよこの季節がきたか、と気分は高まる。とは言っても、季節隔てなく、辛い物が食べたい欲求があるので、その期間限定で出てくる激辛現象に疑問も覚える。
確かに熱帯地域において、唐辛子をはじめとしたスパイスを多用する料理は多い。暑い気候のもと辛い食事で体温を上げて、発汗をもって体を冷却するという原理は分かる。そして、やはり暑い日本の夏に同じ体験をしようと言うのが、期間限定の激辛現象の現れなのだろうとは想像できる。だが、もはやこちらの欲求は身体的なものと言うよりも、精神的なものであり、どちらかというと中毒的なものなのである。
辛味成分の刺激を快感として捉える中毒症状が世の中にある、そのような記事をを読んだ覚えがある。内臓系においてはそれらの刺激はむしろ痛みとして感じられているはずなのだけれど、中毒者はその倒錯した感覚をもってその痛みを快感として得るというのだ。
これでは、あまりにあまりではないか。これではまるで自傷癖のある、マゾヒスティックな精神の持ち主と言われているようなものではないか。と、心の中で抗議の声を上げるのだが、言わんとすることも分からんでもない、という弱腰な心も浮かんでくる。
だがしかし、唐辛子は南米原産でその発見以来世界各地に凄まじいスピードで拡散した植物だ。そして、現在でも唐辛子生産が取りやめになるという話も聞かないし、むしろスパイスを盛り込んだ料理はポピュラーになりつつあると言ってもいい。
そうである、皆なにがしかで、大なり小なり自傷的でマゾヒスティックなのである。僕もあなたも、彼らでさえも。