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2020/06/18 11:38 風文庫

ゆっくり時間が過ぎている。こんな時間に芦屋に来ており、またいったん神戸に帰って、今夜の夜勤の為に芦屋に舞い戻る。西と東の平行移動を繰り返す地域。かつてない生活空間の動きを面白がっている自分に気がつく。

限られた土地に密集して人々が住んでおり、街から放たれる情報が濃密にも関わらず、空気は軽やか。山と海と高層建築が目を引く。東西に走る高速道路や鉄道がこの土地のコントラストを強める。南北の動きはかなりスカスカにも関わらず、東西の動きはバラエティ豊富だ。

実家にいた頃は、そういう意味では、全方向に動く自由があった。北には京都があり、南には大坂がある。西に向かえば北摂、東に向かえば山城。入り組んだ河川が交通の障害となって、訪ねにくい地域はあるけれど、概ねどこなりと足を運ぶことは出来る。

行動空間の制限が人に与える感覚への影響を最近は感じている。繰り返し同じ地域を行き来するが、その地域の文化や地形の濃淡をなぞる。移動の線は東西ばかりに色濃く描かれる。時々南へ北へと少しだけずらしたりもするけれど、ほぼ同じ地域の同じ地形を身にしみて感じる。

そう、それは5月から自転車に乗り始めてから、顕著にそう感じ始めている。川を越える度に姿を現す勾配や、緩やかな山裾にそった道路や、土木工事が造成した痕跡を、ペダルを踏む度に感じられる。

山本常一が記していた、灘の文化が地名に宿っていることを確認したり、住吉川の急流を横目にする度、自然エネルギーを利用した人々の生活を想像してしまう。新参者には、何事もが新鮮に目に映る。新しい土地にすんでいることを、人との交流の中で、再認識する雨の日の昼。