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ある儀式の話

これは私が先日見た夢のお話です。 #夢日記


猫のお迎え


S美はH氏に呼ばれフルメ駅に居た。
フルメ駅は企業城下町としてかつては栄えたと思われるが、現在は無人駅となり駅前は住宅地が広がっている。

S美の電話が鳴る。
H氏からだ。
迎えがもうすぐ着くと思うのでそこで待っていてください。
H氏はそういうと、こちらが返事をする前に電話を切ってしまった。
H氏からの電話はいつもこのような感じなのでS美も気にしないでいる。
いつもどこからか見ているような感じで電話をかけてくるからだ。

チリン チリン
小さな、しかしはっきりとした鈴の音が足元でした。
足元には細身で美人な黒猫がS美の顔を見上げていた。
S美と猫の目があった。
猫はついて来いと言わんばかりに歩き出した。
S美は猫の後をついていくことにした。

猫は時々S美がついてきているのを確認するかのように振り返りながら路地へ入っていった。
路地をいくつか曲がると目の前に小さな骨董品店のような店が見えた。
猫はその店の前に座り、鼻で3回ほど扉をノックした。
奥から店主らしき人が出てきて猫を招き入れた。

ちゃんとお使いが出来たね。
店主は猫を抱きかかえて言う。
その声から店主がH氏だと気づいた。
H氏とはいつも電話なので会うのは初めてだった。

S美さん、あなたに会わせたい人がいるので今日はわざわざ来てもらったんだよ。
店の脇の階段を下りて地下の店へ行ってください。
そこで待っている人がいますから。
H氏に言われてS美は地下に降りて行った。

老女との出会い


平日のお昼過ぎなので付近はとても静かだった。
照明も最低限しかつけておらず、そこにお店がある事も気づかないほどだった。
そっと扉を開けるとバーらしい店内が広がっていた。

いらっしゃい。
年配の小柄な女性が奥から声をかけてくれた。
こちらの席に座ってください。と老女が言う。
S美は隅のテーブル席に座った。
テーブルには直径15cmくらいある水晶玉が置かれていた。

S美さんはこの1週間どこで何をされていましたか?
S美はいきなり聞かれたのでどう返事をすればよいのか考えてしまった。
この1週間は非常に忙しくて、いつもの日と比べて遠くに出かける事が多かったのだ。
返事に悩んでいると老婆は言ってきた。

まぁ今こうして私と話が出来ているのだから、良い1週間だったのだろうね。
私はおまえさんにこれを見せたくて、ここへ呼んだのだから。

儀式を見せられる


老女はテーブルに置いてある水晶球をS美の前に置きなおした。
S美さん、とりあえずこの水晶球に映るものを見てほしいのだよ。
ただし私が良いと言うまでは、決して声を出してはいけないよ。
S美は言われるままに水晶球の中を覗き込んだ。

水晶球の中には20人ほどの山伏と言うか修験者と言うか、そのような服装をした男性が何やら忙しそうに作業をしていた。
そしてそれを見守る数人の人たちが居る。
その数人の人たちの中にS美が知っている人も入っていた。

離婚した元夫のM夫、M夫の兄のK夫、K夫の息子夫婦、傍にいるのはK夫の孫だろうか?
火を焚き、子牛を捧げ鬼を呼び出し、鬼を歓待すると作業をしている男性が説明をしている。
そしてS美の魂を縛り、所定の人形へ魂を入れ、鬼に捧げる儀式を行うと言っていた。

S美は思わず顔をあげ、老女のほうを見た。
老女は、まぁいいから見ていてご覧と言った。

K夫がなにやら言い出した。
あの女の為にいくら使ったと思っているんだ!
具合が悪いと言うからお金だって融通してやったのに。
それを離婚して恩をあだで返しおって!
そもそもM夫がきっちり縛りとめる儀式をしておかなかったらいけないんだ。
あの時だってタクシーで通院するって言うから1か月に100万円ずつ3か月間もだしてやったのに。
それを離婚なぞして、それならS美をN家の為に使ったって良いじゃないか!
この儀式が成功すればN家の繁栄に役立つのだから。

S美は驚いて老女を見た。
S美さんが何も知らないのは私だって知っているよ。
まぁいいから見ていてごらん。

水晶球の中には別の場面が広がっていた。
M夫がどこかに電話をかけている。
M夫の姿はとても若い時のように見える。
兄貴、S美が具合が悪くて毎日通院しているんだ。
タクシー代がかかって大変なんだけど少し融通してほしいのだけど。
月に100万ぐらいかかるんだよ。
M夫の所にK夫からカードが届きお金を融通して貰っていたらしい。

老女が言う。
M夫は合計300万もの大金を何に使ったんだろうね?

S美は答えた。
M夫さんはあの頃、野々田会に熱心だったんです。
知り合いに野々田会の指導員をしている方がいて、あの方のようになりたかったんじゃないでしょうか?
あぁ野々田会ね。
健康指導と言っているけど、宗教とほとんど変わらないところだね。

あぁもうこんな時間だよ。
S美さん、今日はもうお帰り。

S美は店を後にした。

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注意:この話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

最後まで読んで頂きありがとうございます。


読んでいただきありがとうございます。 アトリエを無事引っ越すことが出来ましたが、什器等まだまだ必要です。 その為の諸費用にあてさせていただきます。