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ある儀式の話 8

これは私が先日見た夢のお話です。 #夢日記


電話


S美は猫に案内され老女の店に来た。
老女に促されて水晶球を覗く。
いくつかの場面が次から次へと変化していた。

M夫とK夫が電話をしているようだ。
「おい!いつまで待たせる気だ?!
とにかく20日までにS美をT地区に連れてこい!」

「そんなの・・・兄貴もう少し待ってくれよ」

「もう少しっていつまでなんだ?
お前が死ぬまでか?
とにかく20日までに連れてこれなかったら俺が好きに使うからな!」
そう言うとK夫は電話を切った。

……………

「密教系の寺で引き受けてくれる所があったから頼むことにしたよ。
前回は拝み屋に頼んだから寄せ集め部隊だったから情報漏洩があったんだ。
だけど今回は寺だから部外者は入らないから今度こそ成功するぞ!
しかも寺だから200万円で引き受けてくれると言ったんだ。
3日からやるからお前も何かあるんだったらそれまでにやるんだな」
K夫は勝ち誇ったようにM夫に電話をしてきた。

……………

M夫はどこかへ電話をしていた。
「兄貴が3日からまたやるって。
俺の10万円女をまた兄貴にとられちゃうよ。
どうしたら良いんだ!」
M夫はそういって泣いている。

「簡単なことだよ。
お兄さんを止めたかったら、あんたがお兄さんを呪ったらいいんだ」

……………

M夫はA美のところへ電話をかけてきた。
「あなたもS美さんがいなくなると困るんだから2万円でなんとかなりませんか?」
「あんた1桁違うよ」
「え?2千円でいいの!?」
「あほか」
A美はあまりの事にそのまま電話を切った。

K夫が200万円かけて依頼しているのだから、防御するほうとしても2桁万円は必要になる。
それを「2万円でなんとかしてください」と言うのは「人を馬鹿にするのもたいがいにしなさい」と言われるのは当然の話である。

……………

K夫がM夫のところへ電話をかけてくる。
「5日からになったぞ。
2日遅くなって良かったな」

S美は覗いていた水晶球から顔を上げた。
「今日はこれで帰りなさい」
老女は言った。

目覚めたとき


S美は3日に目が覚めた時に墨汁のような匂いを感じながら起きた。
いつもは無い感覚だったのでとりえずH氏にメールをしておいた。

寺が行う儀式


S美の所にH氏から電話がくる。
「K夫さんが依頼した寺と儀式の内容がわかりました。
7日から11日までの間、危険物の取り扱いに注意してください。
寺の儀式は式次第が決まっていますから防ぐほうもやりやすいんですよ。
拝み屋さんのように途中変更はほぼないですから。
特に11日は気を付けてください」
「わかりました」
S美は答えた。

こういう事があると物が壊れることが多い。
S美は寿命だったと割り切ることにしていた。
とにかく安全第一で行動するしかないと考えていた。
期間中は車の運転を控えなければいけないので外出ができなくなる。
必要なことは6日までに片づけることにした。

6日に発送の用事が入ったのだが、出かけようとしたとき異様な眠さを感じたS美である。
まだ行動制限は入っていないが、安全を考えて集荷さんを頼むことにした。
そして6日の夕方S美のパソコンが壊れた。
ほぼ同時期にパソコンの横に置いてある時計も動かなくなった。
最初電池切れと思い電池を変えたが、秒針が震えるだけで時計は全く動かなかった。
7日には流しに置いてあった小鉢の上に胡椒のボトルが落下して、小鉢にひびが入り使えなくなった。

そして無事12日を迎えることができた。
今回壊れたものはパソコンと時計と小鉢だが、いずれもそろそろ買い替え時だと納得できるものばかりだった。
購入予定が少し早まったと考えることができる物ばかりだった。
こういう機会でもなければ買い換えないだろうと、ポジティブに考えるしかないとS美は割り切っていた。

家柄、学歴、実力


古い時代、家柄が重要視された。
これは人の実力やその他の事柄を推測するのに、家柄ではかるしかなかったのだろう。
だから嫁とりや婿とりなどの時にあの家の親族だとか、あの家の奉公人だとかそういうもので人の能力をはかるしかなかったと思われる。
だからこそ家柄に恥じぬようにと、教育や躾、礼儀作法など厳しい家もあったと聞いている。

また所定の事柄を守ってきた家などもある。
代々家業が○○だから、というお家に多い話もある。
血筋として特殊能力を受け継いだ家系もあると聞く。
そういうものが大切にされた時代、まだ庶民は初等教育だけ学校で学習し、高等教育は一部のお金持ちの家だけの物だった。
また職人などは○○親方の所で修業したというのも1つの指標になっていたようだ。

それが時代が変わり、すべての人が大学へ行くことが可能になる時代が来た。
そこでいい大学に入り、いい会社に就職するのがステータスになった。
親たちは自身が大学へ行くことができず、中卒や高卒が多かったので子供は良い大学へ行かせようと頑張った時代だった。
そして母親の口癖は学歴が低くうだつの上がらない父親に対し、「お父さんのようになってはいけませんよ」と言う親も多かった。
特に男子は良い大学へ行かせようとする親が多かった。

つまり昔はよい家へ奉公することが、良い人生や結婚を手に入れるステータスだったが、それが大学と就職する会社に変わった。
K夫は大学に入るのに一浪し、その後大学中退後に上場会社であるSHA工業に入社している。
定年までSHA工業にいたらしいので、良い大学を卒業しなかったが良い会社に就職をしている。
一方M夫は高専卒業後H自動車に入社するも、数か月で退職していた。
S美が就職する頃の話ではあるが、良い就職先といわれる場所では親が離婚していると入社できないと言われる会社が数多くあった。

そして令和になった現代、能力主義の時代になろうとしている。
もはや家柄で人を判断するのは本当にごく一部の世界の人になっている。
M夫の実家であるN家が、特別な能力のある家とは感じられなかったS美である。
結婚した直後に本家の葬儀に参列したが、S美の印象は昔の庄屋さんなのだと実感したくらいだった。
大量の花輪が並びその数に圧倒されたが、家の中の生花は本当に少なく棺に入れる花がとても少なくて寂しいものを感じたS美だった。
外の花輪に対して生花の少なさに驚いた葬儀だった。

K夫の願いは家の繫栄だが、では具体的にどういう事なのだろうか?
S美の魂を鬼ささげて家の繁栄を願いたいK夫だが、具体的な事が全く見えないS美だった。
労働と実力や結果を見て価値を評価するS美からすれば、まったくN家やK夫とM夫に対して価値を見出すことができないのである。

昔話などに河川の氾濫を鎮める為とか、様々な理由で女性を鬼に捧げる話が伝えられている。
もしそういう話であれば、時代が時代であったらS美は納得したかもしれない。
慣れ親しんだ村のためとか、自己犠牲による称賛とかいわゆる名誉欲で納得したのかもしれない。
また親族が特別な職業で、身の危険があったときに身代わりにと最初から言われていたら納得したのかもしれない。

しかしK夫の話は離婚してから漏れ聞いた話であり、家の繁栄のためになどと言われても到底納得のできる物ではなかった。
そもそもそのようなことを言えるたいそうな家なのですか?とも言いたい。
N家の拝み屋をやっていた男が、ろくに実力もないのに分不相応な学校や会社に入りたいと言われ、禁術を行うしかなかったと言うのにも大いに納得するところだった。

S美の夢


まるで引っ越ししている最中のようなごった返している家の中にS美は居た。
息子がいてなぜか1匹ネズミが走り回っている。
それを捕まえようとして、ようやく捕まえる事ができた。
お尻から子ネズミ出産中という感じで子ネズミがぶら下がっている。
尻尾をぶら下げて息子に「ビニール袋を持ってきて」とS美は言う。
袋にネズミを入れたらネズミに左手の親指を噛まれた。
とりあえずバンドエイド貼って、病院へ行こうかどうしようかと言っているところで目が覚めた。

こういう夢を見たときは、術者がS美に呪いで危害を加えていることが多い。
H氏に夢の内容をメールすると同時に夢の中で噛まれた場所に、所定の対処をしたS美だった。

A美の話


M夫が自分もミニPCが欲しいと言っていたらしい。
そこでA美はM夫に聞いてみた。
「ミニPC買うつもりなら気をつけて選ばないと大変だよ」
「もう別のことに使ってしまったからPCなんか買ってられません。
5万円かき集めて頼んでしまいましたから」
そういう事なのですね。と納得したA美とS美だった。

H氏の話


H氏からS美の所へ電話がくる。
「夢の中でネズミに噛まれたそうですね。
こちらで預かっている物にもネズミにかじられた跡がありましたよ。
しっかり結界をはって入れてあるのに、ネズミが入ることなど出来ないのにかじられた跡だけありましたよ。
趣味で術を使う人たちが最近増えているんですよ。
ゲーム感覚でその時面白ければよいと考えているようです。
だから5万円でも結構侮れないんですよ」
そう言うとH氏は電話を切った。

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注意:この話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。


最後まで読んで頂きありがとうございます。

読んでいただきありがとうございます。 アトリエを無事引っ越すことが出来ましたが、什器等まだまだ必要です。 その為の諸費用にあてさせていただきます。