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はじめてのTバック

#青ブラ文学部の裏お題

アタシは、辺りを伺って、誰もいないことを確認してその店に入った。
初めてなのよ。ドキドキだわ。
『アフタヌーンパーティ』
ちょっとした人気のお店なのよ。

客はいない。

ん、女2人組の客が入って来た。

ふたりはランジェリーを眺めている。

アタシは迷いながら、あちこちを眺めていた。

自分に合うサイズが分からない。

試着するわけにもいかず

仕方なく店員を呼んだ。

「こういう形のモノが欲しいんだけど、サイズは、どれが良いかしら」

「少しお待ちください」と言うと

店員は、探し始めた。

「こちらなんていかがでしょうか。
お客様に合うサイズかと思われますが」

というと、それは透け透けのピンクだった。

アタシは『大丈夫かしら?』と思いつつ、眺めていた。

「これと色違いは、あるのかしら?」

と聞いてみた。

「こちらとこちらでございます」

と言って、手渡してくれたモノは
レッドとブルーだった。

「ありがと。全部いただくわ」

と言い、店員に渡す。

「包装は一緒でいいわ」

と付け加えて、待っていた。

店内には鏡があちらこちらにあり、
鏡に映る自分の姿を見ていた。

「ふふ、いい感じよねー、アタシ」

少しお腹が出たおじさん、いや女性は、髪をかきあげてみた。

「おっとっと、ヤバいヤバい」

前髪の生え際が見えるところだった。

『化粧はバッチリだし、誰が見ても、いい女よね、アタシ』

「お客様、お待ちしました。こちらでございます」

そしてカードを出して会計を済ませる。

『ふふ、スマート会計よねー』

この女?完全に自分に酔っていた。

「あのーお客様、お買い上げいただいてからの返品は、お受けできないことになっておりますので、よろしくお願い申し上げます」

「はーい、わかってるわよ」

と言って、店を出た。

「お家に帰ったら試してみよーっと」アタシは、♪ルンルン気分

いつのまにか、2人組の女性は、いなくなっていた。

「焦りましたね、エイ子さん」

と、店員の夏。

「ホント、マジックミラーを取り付けててよかったわー」 

と、店員のエイ子。

この店の鏡は、マジックミラーになっていて、裏側から、店内が見える構造になっていた。

「でも、今のお客さんは、足のサイズを見て、そうかなと思いましたけどね。あの髪の生え際、ヒットポイントだったわねー」

と夏、

「それにしても、最近、増えたわよね、男性向けのTバック」

とエイ子、

「ほんとほんと、しかも女装して来る方が殆どだから、どっち?女?男?で悩むのよね」

と夏、

「はい、これから伸びていきますかね、男性向けのTバック」 

とエイ子、

「買った方はSNSにアップするだろうから、伸びると思うわ」

と夏

「いっそ、男性向けコーナーとして陳列したらどうでしょう」

と、また夏、

「そうね、わざわざ女装しなくても堂々と買えれば、いいのよね」

と、エイ子

「試しにやってみませんか」

と夏、

「でも、女装したい人はその姿に酔っちゃってるから、今までの販売になってしまうわね」

とエイ子、

「なかなか面倒ですね」

と夏、

「やはり、このままの販売方法になりそうね」

とエイ子、

「そうでした、この店、SNSでちょっと話題になってました。女装した人が行く店!と、書かれてました」

と夏、

「えっ、そうなの?私たちのことも載ってるのかしら」

とエイ子、

「今度『アフタヌーンパーティ』の店の名前でエゴサしてみましょう」

と夏、

「あら、お客様よ、私、裏に回るわね」

と夏、 

「いらっしゃいませ」

とエイ子、お客様をすかさず見る。

「あのー主人の誕生日プレゼントに男性用Tバックをリクエストされまして、みせていただけますか?」

「はいはい、ね〜夏さん、ちょっといらして」

「はーい」と夏。

「すみません、サイズは、お分かりになりますか?」

「いやぁだ〜サイズだなんて」

真っ赤になるお客様......

「あの、そちらではなく.....」

「夏さん、やはり店頭に陳列しましょう」
エイ子は、夏にヒソヒソと言った。



#青ブラ文学部
#はじめてのTバック

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