アレンジケーキ/ボケ学会
お題『スイーツ』
「はぁ、また減らされたわ。
いったいどこまで減らされるのかしら」
と、嘆いているのは
いちごがのったショートケーキ
「ボクだって、どんどんチョコレートが減って地肌が見えるんだよね」
と言ってるのはチョコレートケーキ。
「あなたたち、私なんてスカスカよ。この皮見てよ。外、歩けないわ。歩かないけど」
とぼやいているのはシュークリーム。
「我慢してくれよ。こんなことしたくないんだけど、原材料費が上がる一方で、こうでもしないと、やっていけないんだ」
と言ってるのは、店の主。
「前は良かったわー。スポンジの間にもいちごが並べられて、ホールケーキには、盛りだくさんのいちごたち。
あれこそケーキの王様って感じだったのに今は、スポンジの間なんかジャムよ、いちごジャム。しかも、ショートケーキのいちごだって半分なのよ。せめて1個、のせて欲しかったわ」
シュークリームは、頷きながら、
「私のクリームの重さ、知ってる?甘さ控えめなんて言われちゃって、ほとんどメレンゲですもの。客を馬鹿にしてるわよね」
チョコレートケーキは
「俺もたっぷりの生チョコで地肌を隠して欲しかった。でも、今となっては後の祭りだけどね」
「みんな、分かったから文句ばかり言わないでくれよ。今度、新しいサービスを始めるんだ。いいかい。店だけじゃなく、車で販売してみようかと思っているんだ」
「わぁ!」
3個のケーキたちは歓声を上げた。
「それは良い考えね。店に来られないお客様のもとに出向くんですもの。きっと売れるわね」
いちごのショートケーキは、弾んで声を出した。
「でも、ご主人、大丈夫なの?
そんなに働いて?体持つの?」
ケーキたちに心配されてしまい、主は、涙をこぼした。
「ありがとう、みんな。おれ、頑張るから」
そう言ってケーキたちは車に乗せられ販売先に向かった。
そこは丘の上にある団地だった。
上り坂で道路がガタガタしているため、ケーキたちは悲鳴を上げた。
「キャー、どうなってるの?私たちとんでもないことになってるわよ」
団地に着いて主は、ケーキを並べようとケースを開けると、なんと
シュークリームの皮がチョコレートケーキにくっつき、いちごのショートケーキは、一つの塊になっていた。
「ありゃりゃ、こりゃあ量り売りしないとダメだな」
と言い、車に来てくれたお客さんに
グラム単位で測り売りをすることになった。
客は、いちごの集まったところを欲しがり、あっという間にいちごの部分は売り切れてしまい、ただのクリームケーキのようなものが残った。
シュークリームの皮が載ったチョコレートケーキは、まずまずの売れ行きだったが、上の皮が無いシュークリームらしきものを買う人は誰もいなかった。
「もう、やめよう。量り売りは、性に合わない」
主は言った。
その言葉に怒ったケーキたちは
「バカ主!ちゃんとケースをどうするか、道路の整備は、いいのか考えなさい!」と、主を責め立てた。
「わかったよ、悪かったよ、もう帰るよ」
と、またガタガタの道路を下っていくのだった。
「あーまたー!!!」
店に戻りケースを開けるとシュークリームとチョコレートケーキとクリームケーキが一つになっていた。
「おお!コレは売れるかも!」と思った主、ショートケーキ型に入れ
アレンジケーキと名付け売り出したところ、大当たり」
見た目のエモさとクリームの程よいバランスが客の目を引き、売り上げを伸ばしていった。
どこに売れるものが転がっているかわからないモノですな。
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