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少女たちへ

花火の音は殴られた音がする。壊れていたものをさらに破壊することも、修復することもできない僕は、きっと幼い頃の父や母でもあった。
母の姉は、30年も前に亡くなっている。スナックで町のお母さんをやっていた母に愛されることもできず、当時の彼氏に優しくされることだけで思春期をやり過ごしてきた母が、僕のことを、ちゃんと愛することができないのは仕方がないことだと思う。
父は、そんな母の苦しみを最後までわからないまま、離婚していなくなってしまった。そんな父も、思春期は不良に憧れて家に帰らない日々が続き、両親との交流がなかったらしい。離婚した父を彼の両親が喜んで受け入れているのは、そういった時期があったからだ、と、僕の母は悲しむでもなく言っていた。
父が精神科に通院している人でなければ、僕は父からの愛を諦めないでいられたのかは、わからない。仕方のないことだと思う。
遡れば、どこまでも埋まっている惨劇の連なりに、目を背けることでしか続けることができなかったのだろう。

僕は、お父さんから生まれたんだと思いたかった。思わせてもくれなかった。2人の子供を、2人の大人がいても愛することもできず、この体が気持ち悪いというたびに母は笑ってこの気持ちを誤魔化した。

そんなことは彼氏に話しなさい、と言われて、僕はお母さんにわかってほしかったんだ、とも言えなかった毎日のことを思い出す。

わたしは、笑うことができると思っていた
実際には、笑うことしかできなかっただけ で、
わたしは、
怒り泣いてあなたがわたしに与えた不愉快を喉の奥から引っ張ってきて事細かに説明をし、謝罪を受け折り合いをつけることから逃げている

たすけてとおおきなこえで
うらぶれて泣いている

黙っていた空間には終わりなんてなくって、
生まれて気づいたら自分だっただけなのだ
まったく嘘を突き通すこともできないくせに、
信じていたいとおもう
愛していたいとおもう 君の目が掴んだ海の反射

わたし、の間からすり抜ける悔しさの埋没した浜が
これから創られていくように風が
忘れたまま下級生に盗まれた教科書が
奪われた未明が

恋人は笑うぼくをみつけて/輝輔