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安心してぼけられる町

タイトルは、とある出来事をきっかけに思い出した言葉。それは30年来の友人のお母さまが自分の住む町内のキャッチフレーズに掲げていた言葉だ。

安心してぼけられる町に

友人のお母さまは、私の住んでいる区内の古い町内会で長らく婦人部代表として精力的に活動され、先だって後進に席を譲って勇退された。
彼女は、界隈ではちょっとした有名人で歴代区長や連合町内会のえらい人なども彼女の名前を言えば「ああ、あのひと!」と言うような…(^^;)
でも、彼女のすごいのは、肩書じゃなく町内会のみんなと一緒に等身大の住みよいまちづくりを一歩一歩やってきたこと。町内災害対策として、ひとりでは移動が難しい高齢者と若い世帯をペアリングして避難を助けるバディシステムを作った。
高校生のご近所雪かき隊を結成し高齢者宅の雪かきしてあげたり、たくさんの功績を残した。
「安心してぼけられる町」の標語には斬新とかおしゃれとかはないけど、言いたいことは誰でもイメージしやすい。

まちづくりって、立派な箱を作るとか、ビッグネームが住んでいるとか、おかみのお金で道路をピカピカにするとか、そういうことももちろんあって良い。それでも、私は彼女のやり方が好きだ。その土地に住んでいる名もない一市民どうしが、有限のリソースを知恵と工夫とユーモアと少しずつの労力を持ち寄って、やりくりしながらつくっていく。そういうまちづくりが良い。

こんなことを書くきっかけになった出来事っていうのは、去年の冬に犬散歩途中で立ち往生していたおばあちゃんをヘルプしたことがあったからだ。

おばあちゃん、買い物しようと出かけた。財布は忘れてなかったようでサザエさんよりはしっかりしてる(≧▽≦)。
が、車通りの多い通りを横断できず、辻の電信柱にもたれかかったまま1時間半立ち尽くしていたのだ。声をかけておうちまで送り届けようと腕を組んで歩き出してみたものの、歩幅10㎝しかないおばあちゃんと私と犬。冬の北海道の午後4時半は、とっぷり日も暮れて真っ暗で冷える。少々途方に暮れていたところを、ちょうど通りかかった近所の犬友パパさんが車を出してくれて、無事におうちまで送り届けることができた。パパさんありがとう。
実は、このおばあちゃんをヘルプするのはこれが2度目なのだ。

夜になって、オットにこのエピソードを聞かせていたら「安心してぼけられる町」と、旧友のお母さまの顔がぽわーんと浮かんで、しみじみと、この標語の味わい深さをかみしめた。

旧友のお母さまがやってきたのは、町内会活動なんだけど、私もちょっとだけやったことがある。強大な強制力の働いた究極のボランティア活動。やりたい人は思いきりずっとずっとやり続けるけど、やりたくない人は徹底的にやりたくない、嘘ついてでも逃げ回りたい…それが町内会活動。逃げ回れないように、輪番制にしているところも多くて、私もその当番が回って来たのでやりましたと。高齢化した町内に、ぽんとあとから引っ越してきた若い(と言っても十分に中年だったけどあそこでは一番若かった)世帯。「次はお宅よ。お願いね。」と古参の奥さまに言われたら、もう逃げようもない。おとなしくやりましたとも。

そして、これによく似た構図なのが、PTA活動。こっちは、ちょろっとではなくけっこうがっつりやらしてもらった。やりたかったわけではないけれど、当時役員さんだったママ友さんが、なり手がいなくて一軒一軒電話をかけまくって四苦八苦しているのを見て、気の毒に思ってつい請け合ってしまったのだ。

町内会活動もPTA活動も、究極のボランティアながらもバッキバキに強制力で固められた、それはそれはおそろしいものだ。なにも知らない人にとってはね。

その双璧を偶然のなりゆきで、やることになったんだけど、やってみて思うのは、めっちゃ大変だったけど、今となってはやってて良かったと心から言える2大活動だった。

PTAの役員をやり始めて間もなく、ママ友さんが貸してくれて読んだレモンさんの本。

当時は、『レモンさん?なにもの?』だったけど、内容はふんふんと納得できて読んでよかったなと思ったのを覚えている。レモンさんは、今じゃあEテレのバリバラのMCだし、いろいろに有名です。

友人のお母さまみたいな、地に足着いた地域活動っていうのは一朝一夕にできるもんじゃない。だけど、去年の冬みたいに、立ち往生のおばあちゃんを立たせっぱなしにしないで、必ず見かけた誰かが声をかけてくれる。そういう町は、間違いなく「安心してぼけられる町」だよね。

できるものなら、そういう町に住んでいたい。ここはどうなんだろう?ここに越して3年だけどまだ知らないことだらけだ。

それでも、気がついたことはちっさいことでも行動したい。きっとそれが「安心してぼけられる町」につながる道なんじゃないかと信じてるから。

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