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本という名の大樹

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愛すべき物語の枝先に実る果実(作家、物語の背景など)について素直に綴ります。
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#思い出ぼろぼろ

【思い出ぼろぼろ】藤沢周平 と 広縁の親父

 今日は、いつもと趣が違いますが、お時間のある方はお付き合い下さい。  僕の親父(昭和8年生)は、2019年6月に鬼籍入りした。  更に、親父の他界と前後して、僕の大切な恩師夫妻が示し合わせたかの如く天に召されたこともあり、それまでの人生で味わったことがない様な喪失感を覚えた一年となった。  さわさりながら、彼らが天寿を全したと思わせてくれるような最期を遂げてくれたお陰で、深い悲しみに捕らわれずに暮らせたのは幸いであった。勿論、暫くの間は空虚な心持ちで過ごしたけれど … 。

【思い出ぼろぼろ】大人を信頼できる存在として認識させてくれた出版社の御仁

 齢五十を越えてなお、「 大人 」という言葉の意味するところについて考えることがあります。  そうした時に、必ず思い起こす人物(男性)がいます。その御仁とは会った事もないので、顔は勿論のこと、声色すら分かりません。  ただ、凡そ40年前に、彼の聡明で温かい人柄に触れたという事実だけが、僕の記憶の中に深く刻まれているのです。  振り返れば、小学生の時分から、冒険記や探検記といったドキュメンタリー性の強い物語に心酔していたように思います。  例えば、インディージョーンズのモデル

【思い出ぼろぼろ】腑に落ちた一文

 『本』は、新しい知識・知見をもたらすだけではなく、それらを知恵へと変換するために必要となる行動をも誘発させてくれる稀有な存在です。  特に、”本と読み手の化学反応” が起きた時に発生する熱量は尋常ならざるものがあり、それは正にタイミングの成せる技だと言えるでしょう。  此度は、 ”11歳の僕” が朧げに描いていた将来像の解像度を、一気に引き上げてくれた『一文』について綴っていこうと思います。  1:現実と非現実の狭間に生まれた夢  市井の人を自認するこの僕が、建築設計