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本という名の大樹

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愛すべき物語の枝先に実る果実(作家、物語の背景など)について素直に綴ります。
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#本

【思い出ぼろぼろ】大人を信頼できる存在として認識させてくれた出版社の御仁

 齢五十を越えてなお、「 大人 」という言葉の意味するところについて考えることがあります。  そうした時に、必ず思い起こす人物(男性)がいます。その御仁とは会った事もないので、顔は勿論のこと、声色すら分かりません。  ただ、凡そ40年前に、彼の聡明で温かい人柄に触れたという事実だけが、僕の記憶の中に深く刻まれているのです。  振り返れば、小学生の時分から、冒険記や探検記といったドキュメンタリー性の強い物語に心酔していたように思います。  例えば、インディージョーンズのモデル

【本】仏像と日本人

はじめに  題名からして地味に過ぎる本だと思います。  もし、本書『仏像と日本人』が、島国日本における仏像の歴史的変遷を辿るだけの本であったなら、長らく仏像彫刻を嗜んできた僕ですら、所有する気持ちにはならなかったはずです。  しかし、僕は本書を手に取り、そして買い求めました。  この顛末に至るきっかけは、題名『仏像と日本人』に対して、ある種の不自然さを反射的に感じてしまったことにあります。この不自然さとは、”日本” ではなく ”日本人” になっていたことを指します。  こ