おっぱいマン14

「観察者……タチバナ?」
呆然と立ち尽くす龍輝は、山本に訊いた。
「そうだ。邪魔者は極力減らしたい。だからお前が精神病院にいる間、私は大人しく手を出さなかった」
「……なんかの冗談?」
「私はお前の全てを知っている。”未来”でさえも。それが、私の正体を裏付ける証拠に他ならない」
「お前の、正体……」
「私は、”山本崇”」
「知ってる」
「そして私は、”高次元生命体”。時空への干渉が出来る、お前ら人間より圧倒的に高度な生命体だ」
龍輝は悟った。これは、完全な”冗談”だと。山本の目を見る。先程から瞬きをしていないのが違和感を加速させるが、ただそれだけだ。高次元生命体?馬鹿げてる。
「わかったわかったwお前は高次元生命体で、俺は下等な人間だぜ。疲れてるから、ちょっと寝るからな……」
その瞬間、轟音と共に、龍輝は叫んだ。何が起きたか分からない。あるのは、”痛み”だけだった。そして痛みの根源は……
「うあああああああああああ!!!!!」
龍輝の右手に鉄の槍のような物が刺さり、壁まで貫かれていた。その時龍輝は再び悟った。”冗談”なんかじゃあない。完全に”イカれて”る。
「人間の戯言に付き合う暇はない。”出せ”、もう1つの人格を」
頭からだらだらと汗が垂れてくる。右手からも血が止まらない。龍輝の思考は痛みに支配され、言葉を発する事さえ出来なかった。これは、”人間を超えている”、即ち人間の価値観を知らないからこそ起きてしまった、山本崇のミスだった。
「……クソ、やらかした」
「あぁ、うう……」
「計画が台無しだ」
「たす……け……」
「お前があの人格さえ出しゃ終わりだったのに」
「……誰……か……」
「簡単な事だろ。なのに、何で事態が悪化する」
「……」
「クソ」
龍輝の意識は無くなった。痛みとの攻防戦に敗北を喫していた。山本崇は龍輝の前をうろつきながら、打開策を考えていた。しかし、龍輝が意識を失っている以上、もう1つの人格は発現しない。完全に手詰まりだった。
「クソ、が……」
”強さ”が敗北に繋がった。山本崇にとって、これ以上の屈辱は無かった。
「……”来る”、な」
山本崇は、”存在”を感じ取った。近くまで来ている。まるで、タイミングを見計らっていたかのように。まるで、全てを知っているかのように。
「来い……来いよ……来るなら来い!来いよ”ドブス”がああああ!!!!!!!」

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