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ドブス顔面キモ人間 第7話

「爆誕!ドブス顔面キモ人間!」

「「偽名を使ってネットに殺人動画をあげた。今の若者はそういうのにすぐ釣られるから、すぐに話題になった」」
今の時代、若者はネットで簡単にスナップフィルム等を初めとした殺人の動画を見れる。だから、俺が話題になるにはそれを超える印象を植えつけなければならない。しかし、俺は高校生だ。高校生による殺人は、テロリストや普通の大人による殺人よりも話題性が高い。俺は、自分の武器を無駄にせず使うことにした。
「高校生殺人者ドブス顔面キモ人間……」
俺の中にはアイデアが沢山浮かぶ。とりあえず、俺が高校生だと言うことを明かしてやれば、すぐに話題になるはずだから、それは確定。1番重要なのは、殺害方法と、対象人物だ。殺すのは別に誰であろうと話題になるだろうが、見知らぬ人を殺すのは気が引ける。だからそこはもう少し探すことにしよう。方法は、撲殺が良いと考えたが俺にそんな力は無い。刺殺は普通だし、絞殺は無理だし、射殺なんて以ての外だ。……そうだ。俺には”友達”がいた。彼に聞けばいいんだ。
「チャカはお前じゃ無理だろうな」
「ていうかオッサン、銃持ってないでしょ」
「……絞殺もお前の力じゃ駄目だろう。……じゃあ、トンカチ貸してやるから、ぶん殴って殺せ」
「インパクトに欠けない?」
「馬鹿が。高校生が人をトンカチで殴り殺すののどこがインパクトに欠けるんだよ」
「……確かに!」
やっぱり佐原は凄い。が、同時に疑問が生まれた。佐原は、”何者”なんだ?職業は?一人暮らしだから何かしらの職に就いている筈だ。
「オッサン、仕事は?」
「ガキは知らなくていいんだよそんなことは」
あ……。俺は察した。佐原の職業。何となく彼が堅気では無いことは察していたが、多分本当に……。俺はそれ以上の詮索をやめた。
「いいかガキ。お前が普段暮らすときと、そのドブス…ドブス顔面男?」
「ドブス顔面キモ人間」
「あぁ、そのドブス顔面キモ人間になる時とは服装を完全に変えろ。バレたくないんだったらな」
そう言うと、佐原は立ち上がった。
「変えるのは、服、ズボンは当然。サングラス掛けて帽子、指紋がバレないように手袋。下着と靴下と靴も変えろ。あとはマスクもだな」
佐原はそう言いながら、ダンボールを持ってきた。
「何、それ。誰の?」
「この中の物は今からお前の物だ。だがいいか、これを着けるのはドブス顔面キモ人間の時だけだ」
中に入っていたのは、謎の血痕と銃痕のあるTシャツ、ズボン、ボロボロの靴、手袋、マスク、帽子、下着だった。全て揃っている。しかも、全て俺とほとんど同じサイズだ。
「あ、ありがとう……?」

俺は早速トンカチを持って、行きつけの”広場”へと、約1時間かけて自転車を漕いだ。広場と言っても、数十年前に廃墟と化した工場の事である。どうやら工場の解体費用が降りず、そのままのようだ。しかもここは街外れなので人一人いない。なんて好都合な場所なんだろう。俺は、散らかっているコンクリートを上に積み上げた。そしてトンカチを大きく振りかぶり、叩き落とした。コンクリートのタワーは、鈍い金属音と共に砕け散った。爽快だ。トンカチを使うのは初めてだったが、意外と行ける。砕けたコンクリートをまた積み上げ、破壊した。肩が痛い。金属を2回も振り下ろしたからだろう。だが、楽しかった。コンクリートを見つけると、積み上げて、破壊。破壊。破壊。30分間はその繰り返しをした。帰宅すると、肩にとてつもない痛みが走った。久しぶりの筋肉痛だ。しかし、これから俺はドブス顔面キモ人間として殺人をする。こんな事でへこたれてられない。俺はすぐに自分の部屋へと駆けると、腕立て伏せをした。5回でダメだった。しかしまだやる事はある。何かキャッチーなフレーズを考えたかった。頭に残る、強烈で、斬新なフレーズだ。俺は、母が出かけたことを察知すると、すぐに考え始めた。
「殺してやる!」
直球すぎる。
「このドブスが!」
あまり良くない。
「ドブスしてやる!」
惜しい。
「ドブスめ!」
ただの悪口だ。
「ドブドブしてやる!」
……これだ!キャッチーで、どこか愛嬌があって、印象に残って、インパクトがある。完璧なフレーズだ。
「ドブドブしてやる!ドブドブしてやる!ドブドブしてやる!」
俺は叫びながらトンカチを振る真似をした。行ける。俺は、有名になれるぞ。そうして、土曜日は終わった。

次に考えるのはターゲットだ。俺が殺したいと思う相手。同じ”ドブス”のモトダとタカモトはどうだ?ヤツらはただ臆病なインキャなだけであって別に危害は加えられてないからナシだ。ヤマモトは?ヤツは”超ヨウキャ”だから俺と関わりは一切ないし、アイツも俺の事を認知していないだろう。ハマダは?”ドブス”の名付け親で、”ヨウキャ”の1人。ドブス諸悪の根源。ヤツさえいなければ、俺はただの”インキャ”だったのに。そうだ。ヤツさえいなければ。ターゲットは、ハマダだ。ハマダを、トンカチでドブドブしてやる。


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