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ドブス顔面キモ人間 第8話

「始動」

「生命は、奪われるからこそ美しい。儚きモノは、美しいんだよ」
「そうかな」
「ガキにはわかんないだろうが、何れ分かる。お前も生命の強奪に、”何か”を見いだせ」
「快感、とか?」
「ああ、恐怖以外の何かを感じれば……」
「感じれば、何だよ」
「……いいか、ガキ。お前のことは信用しているからな。”ドブス顔面キモ人間”として胸張ってやれよ」
「わかってるから、大丈夫だって。これで俺も有名もんだしさ」
佐原義和は、まるで俺に何かを託したかのように、俺を見つめた。俺を見つめる佐原義和の目には、何か大きなものが宿っているように見えた。

「おい、ドブス……」
違う、これは。
「……」
誰もいない。俺の周りには。ササモトの後、トリムラも消えた。不登校になったが、噂では自殺したらしい。俺がコバヤシを消したせいでドブスは更に関係が面倒臭いことになった。明らかに、俺のせいで均衡が崩れ始めている。嬉しくて堪らない。しかし今は歓喜を感じる場合ではない。次のターゲット ードブス顔面キモ人間としての最初のターゲットー であるハマダに集中しなければならない。では、ここで計画を説明する。
1.ハマダを外に連れ出す
2.殺す
シンプルだが、難しいものだ。
「何、見てんの」
「え?」
「俺の事見てんだろ、何」
ハマダにバレた。予定では放課後連れ出す予定なので、まだ話す必要は無いのだが。しかし、ここで交流を持っておいた方が少しは連れ出し易くなるだろうか。
「や、いつも楽しそうだなって思って」
「楽しいよ、ドブスと違って友達いるからな」
辛辣すぎる。
「放課後、ちょっと会えない?」
「は?何で」
「話したいことあるし、それに……」
「俺の事、恨んでんのか?w殺すのか?俺を。そうだろ」
「……は?」
「は?じゃねぇんだよ」
「そんな……恨んでなんか、ない」
「じゃあなんだよ、用って」
俺は吃ってしまった。話したことのない人と話すのは難しすぎる。
「あ、ああ……っ、そ、や……」
「……お前と話しても埒明かねぇんだよ。話しかけんな、”ドブス”が」
「ドブス……」
「そうだよ、ドブス」
「…………ハハハ……」

今思えば、別に、呼び出す必要なんて無かった。ササモトと同じように、後をつけて殺せば良いだけだ。ただ、俺は、少し希望を持とうとしていただけかもしれない。もしかしたら、こいつも、話してみれば良い奴なのかもしれないという希望を。
「やめろ………!ドブスコラ、やめろ!」
俺はカメラをセットした。ハマダをここ、即ち佐原義和の家までお持ち帰りするのに殆どの体力を費やしてしまった為、俺は横になって休憩をした。ハマダは手足を縄で縛ってあるので安心だ
「……いつ始める」
「オッサン」
「もう疲れたのか?」
「当たり前だろ、人間運んできたんだぞ」
「情けない」
「おい、おいなん、なんなんだよこれどういうこと、どういうことなんだよ!助けてくれよタチバナ!」
ハマダはじたばたしながら叫んだ。ここは地下室なので、声が漏れる心配はない。
「誰が助けるか、お前は今から死ぬんだよバーーーーーーーーーーーー力」
「なんでだよ……なんでなんだよ、頼むよ、俺が何したんだよ」
「なんだとー?お前は、インキャになるはずの俺を殺し、ドブスにしたんだよ」
「は?」
「もういいや、兎に角、お前の命はあと数分だ!今更悔いても、遅いからな」
「おい、ちゃんと着替えたのか」
佐原義和が上の階から降りてきた。
「着替えてあるよ、大丈夫だから」
「下着もか?靴下も変えて、マスク付けて……」
「大丈夫だって、まるで親みたいだな」
「おいタチバナ、こいつ誰なんだよ!」
ハマダが乱入した。
「この人は、俺の友達。楽しそうだろ?楽しいさ、友達がいるからね」
「そ、そん……助けて……」
「無理だよ、もう」
「ク……、なんなんだよ、なんなんだよお前は!」
ハマダは泣き叫んだ。
「俺か?俺はドブス顔面キモ人間、だよ」

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