おっぱいマン9

「おい待てよ龍輝」
圭人は龍輝の手首をグッと強く、握りしめた。
「待てよ、まだ話は終わってねえよ」
「離せ……って!」
龍輝は手を大きく振り回し、圭人から離れた。
「なあ龍輝、お前がどう思ってようがこっちには関係ねーんだよ。人巻き込んで何がしてーんだよ」
「………」
「なあ」
「……俺は、お前なら分かってくれると思ってた」
龍輝は圭人を睨みつけた。
「俺は、兄貴としてお前に言ってやってんだよ。もうあんなのと連むのはやめろよ。風評被害はこっちにまで来てんだよ。昨日の母さんの顔思い出せよ。龍輝、全部お前のせいなんだぞ」
「俺の、せいだと?」
龍輝は大股で圭人に歩み寄り、睨んだ。
「俺じゃない、お前だ。圭人、お前だよ」
「は?」
「お前が、全部悪い」
「俺のどこが悪いんだよ。まじでお前いい加減にし……」
圭人は自分の胸に強烈な痛みが唐突に走り、服が赤く染まったのに気づいた。龍輝の持つ包丁が、圭人の内部にゆっくりと侵入して行った。

「龍輝……」
義雄は、血に染まった龍輝の右手を握った。
「これが、お前のやりたかったことか」
「……親父……」
「きやーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!。
!!!!。。」
修羅場を目の当たりにした陽子が大きく甲高い悲鳴を上げた。
「龍輝お前は、お前は俺の、誇りだったんだ……お前は……」
義雄の首がガクと生気を失った。
「俺が、誇りか……。母さん、アンタはどう思う」
龍輝はそう言うと、立ち竦んでいる陽子に近づいた。
「俺は……アンタの誇りか?」
「こ、来ないで!」
「息子なのに、そんなこと言うのか」
「つうほ、通報するからね通報するから!」
「あーもういいって」
「近寄らないで!」
「わかった、わかったよ」
龍輝は諦めたかのようにそう呟くと、足を止めた。
「……自分が何をしたのか、分かってるの」
「これが、まあ運命なんだと思う。こうすること全てが、仕組まれてたんじゃないかな」
「龍輝、なんで、なんでこんな事をしたの」
「俺が知りたいね。俺は今、本当に混乱している。記憶がごちゃ混ぜなんだ。これが、本当の俺なのか?これが、”佐川龍輝”なのか?」
「一体何を言って……」
龍輝はいきなり陽子に近づくと、肩を掴んだ。
「この俺は、本当の俺なのかと聞いているんだ。畜生俺は、俺は何なんだ」
「龍輝……」
「俺は、母さん、アンタの息子だ……。そうだろ。俺が、佐川龍輝だ」
「龍輝、取り敢えず落ち着い……」
「俺はこの運命を、断ち切るんだ。悪の根源を、根絶やしにしてやるから」
龍輝はそう言うと、陽子の首を力強く締めた。陽子はもがいたが、徐々に抵抗は弱くなり、やがて死んだ。龍輝は、笑った。

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