見出し画像

ドブス顔面キモ人間 第12話

「崩壊」

「ヨシダさん」
ヨシダは3、4人の女を連れて下校していた。
「何この人」
「もしかして知り合い?w」
この女どもめ!
「タチバナだよ、知らないの?」
ヨシダは擁護した。
「タチバナ、って誰だっけ?」
「女……貴様らに用はない!出ていけ!」
俺はそう叫び、ヨシダの手を掴んだ。
「ヒッ!」
「ヨシダさん、俺を裏切ったな」
「裏切るって、何……!?」
ヨシダの表情に困惑と恐怖が入り交じる。
「ちょっとタチバナ、離しなよ!」
「黙れ!」
もう俺を止められるものはいなかった。
「お前ら俺に刃向かったら殺すぞ!嘘だと思うなよ、嘘じゃねえからな!」
「何、こいつ……」
「タチバナ!離してよ……痛いよ」
「この程度で痛いなんて言うなよ、先が思いやられるだろ」
「タチバ……」
「黙れ!ホントに殺すぞ女が!」
「何なの、さっきから殺す殺すって!そんなに私を殺したい!?」
「そうだ、と言ったらどう思う?逃げるか?お前は俺に掴まれている、俺はお前より強い!即ち逃げらないんだよ!」
「離して……お願い。私が悪かったから」
「何、何が悪かったんだよ!」
「それは……」

「おっさん」
佐原……いないのか?こんな重要な時に。
「う……うぅ」
ヨシダが起きたみたいだ。あまりにもうるさいので、コンクリで頭を思い切り殴ったのだった。ヨシダの綺麗な髪の毛から、深紅の液体が垂れ下がる。
「どこ……ここ?」
「関係ないでしょ」
下半身を動かせないヨシダの髪の毛を掴んでズルズルと目的地へと引き摺った。
「おっさーーーーん!」
「おっさんって誰……?」
「黙ってろよ」
「なんなの……タチバナ……急に変わった……」
「変わったなんて、違うよ。俺は、俺は元からこういう男だよ。お前が引き出しただけだ。お前なら俺に、俺に幸せを教えてくれると思ったんだ。なのに……」
「なのに、何?」
「しらばっくれるなよ、お前、ヤマモトとデキてんのに俺とデートしたな」
「ヤマモトとなんて、デキてないよ!それにタチバナとのあれもデートじゃない!」
「じゃあなんだよ、なんだったんだよあれは。俺を狂わせて、俺は何なんだ!?踊らされてさ、俺は漸く、漸く希望が叶うと思って、叶ったと思ったんだよ。お前が、じゃあお前。あの時なんで無視したんだよ、なあ」
「無視……?」
「だからしらばっく……、ヤマモトと話してる時、俺無視しただろ」
「してないよ、だってタチバナ、私に話しかけてないじゃん!話しかけられてないのに、無視も何も無いでしょ!」
「俺は、話しかけたぞ、俺は……」
話しかけてなかった。俺は、話しかけてすらいなかった。
「クソ、クソが……、なんなんだよもう」
俺は無意識にコンクリを振り上げ、ヨシダにぶち当てていた。
「ガ……っ」
「クソがーーーーーーーーーーーー!!!!!」
振り上げられたコンクリは、何度も鈍い音を立てて血しぶきを撒き散らした。ヨシダの頭は、いや、”頭だったもの”は、ボコボコのジャガイモみたいに地面に叩きつけられた。ヨシダは息をしていない。俺は、”死”という概念の重さを再び知った。しかし、それと同時に、かつて俺の憧憬という概念そのものであったこの女の生死の行方を支配し、そして破壊したという事実に快感を耐えきれなかった。強姦はしない。俺のヨシダへの愛は、そんな低俗なもので終結しない。
「あぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
俺は叫んだ。魂から叫んだ。声が枯れていくのを警告する喉の痛みを他所に、俺は、叫び続けた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?