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もう一度、会いたい人

小学生の時、ピンポンダッシュが
一時期マイブームになったことがある。


ある朝、担任のおばあちゃん先生は悲しげに
「実はね、ご近所の方から、ピンポンを押すイタズラをされて困っていると連絡があったの。もし心当たりあるな。って人がいたら、
今日中に自分から名乗りでて欲しいです」

私はドキドキしながら
その日、知らん顔をして1日を過ごした

帰りの会も無事に終わり
ランドセルを背負ったところで

「○○さん、ちょっとお話いいかな」
先生に呼び止められた。

私は一瞬にして恥ずかしくなった。

なぜなら、今日1日、先生は至って普通に
いつも通り愛情深く接してくれたし、
他に何人かやっている人を知っていたので
自分はバレていないと思っていた。

みんなが帰った放課後の教室で、
先生は、穏やかにそして少し悲し気に

「○さん(私の名)、
本当は帰る前に先生に伝えようと思ってたんだよね。
ドキドキして言えなかったんだよね。」

そう、祈るように語りかけられ、

私は黙って下を向いたまま
頷くのが精一杯だった。

先生ごめんなさい。
裏切って。ごめんなさい。
私、本当は汚い子なの、
先生が思うようなキレイな人間じゃない
信頼に値しない人間
今日だってバレてないから帰ろうと思ってた。

優しくしないで、
そんなに私を見ないで
恥ずかしい人間なの

涙がでできちゃうから
見ないで欲しい
ごめんなさい


先生にとって教師生活最後の子ども達だということも
子どもながらに知っていた。

そんな先生の教師生活に泥を塗ってしまったような
罪悪感と、叱らない先生の優しさが
残酷にすら思えて、

ほろ苦い愛を思い出す。


ここ数年、ずっとあの時の先生に会いたくて仕方ない
そして、聞いてみたい。
どんな気持ちで待っていてくれたのか

私の闇をも包み
見守ってくれて
ありがとうと伝えたい。

あなたはきっと全て知っていたのでしょう。
私が正直に話しても話さなくても
あなたは私をまるごと受け入れてくれただろうと
今はわかる
いつも私を気にかけてくれていたこと
あなたの温かい眼差しにウソがなかったこと
あなたがいなくなった後も
何十年と支えとなってくれたから。








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