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映画備忘録 デヴィッド・ロウリー 『セインツ-約束の果て-』

ルーニー・マーラーが白いワンピースで教会からの帰り道を歩く。カメラがそれを追い、ハンドクラップとストリングスが、最高の食材にふる岩塩とペッパーのように優しく包みこむ。

それは確かに僕たちの世界と続いている、かつても今もどこかに存在している、永遠に見つめていたい時間、空間。

「映画とは、切り取られた世界のこと」

35ミリフィルムに刻まれたテキサスの夕焼け、風に揺れる草木。『リオ・ブラボー』も真っ青なフォーク・ソングの響きの連なり。クライマックスとエピローグの間、絶妙な抜け感を生むラミ・マレックの素晴らしい使い方。ラスト・カットの、切迫しながらも観客の解釈に向けて拓かれた余白。

映画を撮る呼吸を知っている人間は限られている。フェリーニ、フォード、ホークス、ゴダール、ミゾグチ、グリフィス、リュミエール…。その系譜に、1980年生まれの青年作家デヴィッド・ロウリーは確かに存在していて、今日も歩みを進めている。

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