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ある時にしか現れない果物屋さんの話/水晶体に映る記憶vol.48

住んで間もない、
私の街の話をしようと思う。

大阪の中心からしばらく電車に揺られると、私の住む街がある。



朝と夕方の最寄り駅は、
沢山のサラリーマンや学生が降り立つから、
人が沢山住む街なのだと思う。


家に帰るまで通る大通りには、両サイドに沢山のお店があって
パン屋さん、お菓子屋さん、居酒屋…
生活するのには全然困らない、にぎやかな街だ。


その中でも、私にとって特別なお店がある。
家の近くにある、果物屋さんだ。

この果物やさんは2つの特徴がある。

1つは、とってもシンプルに安い&鮮度がいい。みかんは30円、バナナは68円、りんごは全て128円。

我が家の冷蔵庫には、名月という
艶々した美味しそうなりんごを2つも並んでいる。

こんなに素敵なお店があるのは、
この街にしてよかったとおもう理由の一つだ。


2つ目の特徴は、「お店が気まぐれに、目の前に現れること」だ。

何言ってんだこの人、って閉じないでください涙。
何故だかわからないけど、果物屋さんが見つかる時と、見つからない時があるのです。

例えば、ちょっと果物を買おうかなぁと歩いていても、お店がどこにあるのか忘れてしまい、買えずじまいだったりするのだ。

果物やさんは実店舗なのだけど、あまり目立たない外装なのか、私の瞳に映らないことが、まあまあの確率である。



そんな今日は、
何故か、運良くお店を見つけられた。

別に必死に探していたわけではないし、むしろ見つかったらいいなぁ、くらいの感覚なのだけど。

まるで、おいでよ、と言ってくれたかのように
簡単に見つけられたのだ。

吸い込まれるようにお店に入り、
果物を見つけている時
「自分が中心に戻って行く感覚」があった。

りんご一つを選ぶ。
みかん一つを選ぶ。


どれが美味しいかなぁ、と味を想像しながら
カゴに入れていく動作はとても豊かで。


このところ、体の不調が目立っていた。
謎に何度も同じ病気にかかったり、
いつもは飼い慣らしているはずの気持ちが暴れたり、
おかしいなぁ、、続いた。


そんな日々を客観視した時
焦るように、少しずつ体を労り
ちょっと散歩をしてみようと思った今日
果物屋さんを見つけることができたのだ。


果物たちを見ながら、
私の幸せの一片はこういうことだったな、と思い出した。


最後に、私の大好きな漫画があるのでぜひご紹介したい。
この漫画は、今日話した果物屋さんのような場所に、近いなと感じている。

自分が疲れた時に現れるもの。見えるもの。
自分が立ち上がれそうな時に現れるもの。見えるもの。

そういうものって、あると思うから。

↑あきばさんは、いろんな「あんこうの胃袋」シリーズを書かれているので、ぜひ読んでみてください。

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