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地元に近づくほど、重くなる/水晶体に映る記憶

胃の中の食べ物が消化しきれてないのか、乗り物に酔ってしまったのか、自分の周りだけ淀んだ空気に付き纏われているように、気怠い。それは我慢できるほどの不調、ただ、続く理由がなぜなのかわからない。いつもと違うことといえば、私の地元である山形に来たこと。

「腰がさ、痛くないんだよね」


と彼が言ったのは、私が何年も過ごした地元の駅にもう何駅で到着する時だった。大阪出発の数日前から、度々腰が痛いと訴えていた彼が、山形に着くや、嘘のように痛みが消えたという。

「大阪から物理的に離れて、安心したんじゃない。だから痛みとれたんじゃないの」

と冗談で言ったけど、「案外そうかもね」と彼も頷いていた。




そんな会話をした後、逆に、私は地元に近づくにつれて不調になっていることに気づく。

そういえば、空港についてから、山形駅に来てから、実家に向かっている今も…。胃の奥の方にある違和感が、どんどん形を帯びている気がする。そう気づいてから、妙に納得する自分がいた。だって今回はただの帰省ではない、彼を、私の地元に、私の家族に会わせる日なのだから。


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