「昨日の手術」の話

昨日の朝9:15、私は手術台の上にいた。
大学病院の広くて立派なオペ室の中央に鎮座するわたし。初めての体験である。

ことの発端は5月、突如、腕に1.5センチ強のでっぱりができたので皮膚科に行った。その日は特になんの診断結果も出ず、大学病院の紹介状を手渡されて終わった。病理検査ができるところに行きなはれと告げられて。
痛くも痒くもないそれは小さな山形に盛り上がり出っ張りは目立つものの、そんなに悪いものの気がしなくって、のんびり1ヶ月くらいしてから大学病院に行った。
初回:目視と記録撮影。
2回目:エコー検査。悪性ではなさそう。相談の上、経過を見て取るかどうか判断しようとなる。取るか取らないかそれによる影響は自己責任とのこと。
3回目:どうするか相談。見た目にはかなり小さくなっているけど、明らかに異物が中にいるのがわかる感じ。宇宙人にチップでも埋め込まれたかといった趣。
摘出した場合の傷跡のサイズが2.5センチくらいというので、思い切って切除してみることに。だって興味あるじゃないですか。自分の体にできた異物なんて!!
この日は同意書等の手術に関する契約的なものと、感染症がないか血液検査を済ませる。

というわけで(すぐには)予約が取れない大学病院での皮膚の遺物摘出手術は、異物発見から4ヶ月を経て厳かに執り行われることに。

当日の朝、予定より早く病院に着いた私はしばし待った後、8:30に受付を済ませる。簡易的に検温。血圧測定。問題なし。
診察室付近の誰もいない廊下に導かれ、その付近の長椅子で看護師さんから体調の確認とバーコード付きの名札を手首に巻かれる。念の為お手洗いに行っておく。
不織布のキャップを被り、手術着に着替える。といっても着てきた服の上にはおるだけ。ほんまにええんか、と思ったけど仰せのままに。
準備が終わったら、すたすた歩いてオペ室へ。
映画とかで見たことある手を消毒する機材や、足で空くドアなど、初めてみるものに軽く興奮する。
オペ室はめっちゃ広い。しらないJpopらしきものが流れている。
すでに先生やその他4名くらいのスタッフが。診察してくれた先生である。よろしくお願いします。
名前確認、バーコードスキャン。間違いなし。
さあ手術台へ、と思ったら「半袖着てる?」「はい」と先生と看護師さんのやりとり消毒液で汚れるかもしれないからと、手術室でTシャツを脱ぐことに。看護師さん平謝りからの生着替えである。些細なトラブルに一人でウケる私。
からの手術台へ。
見たことある設備がいっぱいである!
横になった私に、手際よく計器などをいくつかつけるスタッフ(お医者さんなのか看護師さんなのかは不明)。心拍数はかる何か、血圧計、人差し指に何か、電気メス使用のためのアース的なものをお腹に。
そこから私の心拍に合わせて部屋全体に聞こえる音が鳴るようになる。たまにわざと景気のついている指先を動かすと音が乱れるので、音の出元は指の計器によるものらしい気がする。
ドラマで見たことあるモニターが私の心拍数を表示している。59がアベレージか。(この後、手術が始まったら時々66まで上がっていた)

スタッフの一人に、私が興味深くこの状況にいることを話すと、「あの人はドラマとかでメスと言われたら渡す人です」とか教えてくれた。へー。「大学病院だけに学生が見学したりするんですか?」「はい、でもドラマみたいな別室から覗くタイプではないです。」とのこと。
そこから青い不織布を盛大にかけられながら、患部を念入りに消毒。滴るくらいの消毒液を感じる。十分な消毒が終わると患部だけ丸く切り取られた不織布を腕にかけられ、私の顔の周りには青い壁がたちはだかった。残念。うっすら期待していた手術中の部位を見ることは叶いそうにない。結構見たかったんだけど。
見れるものが少ないので、心拍数が表示されるモニターをガン見していたら、急にバイタルにエラー音。心拍数が激減している。焦る周りの人、なんともない私。心拍数を計るための器具の接触が悪かっただけだった。そんなこともあるんだな。

準備が完了し、切除部分にマーカーで印をつける。なんか書かれている感触がある。
そして麻酔に入る。「この手術で痛いのは麻酔だけです」と言われた通り、麻酔はちょっと痛い。3回くらい注射された気配。めちゃくちゃ局所麻酔なので、指先は動くし、手の感触はずっとあった。
ほんの数分で麻酔は効いたのだが、全然痛くないのに触れている感触はあるのがすごく不思議な感じである。

青い壁は堆く、完全に聞き取れたわけではないが、私を診察してくれたベテラン先生は指示をしていて、実際切っているのは若い女性の先生っぽい。うーん、ややスリリングである。「皮膚ごと切除するか、残すか、」「感触を確かめながら削ぐ、、」みたいなことを言っている。ドキドキ。もっと聞き取りたかったが青い壁がまあまあ阻む。
先生がホルマリンと言っている。私の一部はホルマリン漬けにされるようだ。ちなみに、切除部分を研究に使われる場合は意義なしの書類にサインずみだ。
切除が終わったら、縫合に入る。おそらく何度も血を拭われている感触がある。止血なのかなんなのかもされた気がする。知らんけど。
そして縫合。うっすら引っ張られている感触はあるので縫われているんだなとわかる。
「終わりました」と先生。
「切除部見ますか?」、私「はい!!!」即答である。
小さな試験管のようなものに入っているホルマリンに付けられた私の一部は白い丸い7ミリくらいの塊で、先生は「石です」「白いのが切除したできもので黄色いのは脂肪」「悪性ではなさそうだからギリギリのところで切除している」と言った。
本当に白いので、なんで皮膚の下にこんなに白い塊ができたのかが謎。
切除パーツを見おわると、不織布類の片付け計器の回収などが行われ、私は普通に起き上がって、手術台からおり立ち上がった。
先生は学生らしき人たちにホルマリン漬けの私の一部についてなんか説明している。
当初の予定は1時間と聞いていたのでかなり順調に済んだんだろうか、29分47秒でタイマーは止まっていた。
最後に先生やスタッフの皆さんに、ありがとうございましたとお礼を言い、オペ室をすたすた歩いて後にした。
このあと着替えて病院を後にしたの10時半くらい。二の腕に大きな絆創膏があるくらいで体に違和感全くなし。

今日になって、圧迫していた絆創膏を外したら縫われた部分はちょっとガタガタでまだ赤いフレッシュな血が滲んでいた。糸は髪の毛のように細く黒いので、ちょっときもちわるい。マーカーの紫色も結構残ったままだ。
手術中はもちろんだけど、術後もほとんど痛みはないのはなぜか?傷があるのになんか不思議だ。来週の抜糸は結構痛そうだけれどもね。

以上は、全ては個人の感想です。手術をエンタメ的に楽しんで申し訳ありませんでした。



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