一月一酒 第15回
初出:月刊ハンガリージャーナル 2005年9月号
Villányi Portugieser Válogatás 2004 - Ördögárok dűlő
醸造所:Gere Attila Pincészete
産地名:Villányi borvidék
ヴィッラニ5人組の1人に数えられるゲレ・アッティラ氏は、ドイツ系(ザクセン・ドイツ)を祖先にし、その家系はもともとワイン醸造家でありながら17年間林業に携わったのち、夫人の実家を通じてワイン醸造家の道に入りました。以来、国際的名声を得るに至った800本のバリク樽を所有するワイナリーにおいて、常に非凡な魅力をもつワインを次々に生み出しています。
最高級のメドックに匹敵する高品質ワインの秘密は、間引きにより1株あたり6~7房のブドウを収穫することにあります。彼のワインが高い評価を受ける理由の一つが、こうした堅実な仕事に対する信頼であると同時に、いわゆる“ヴィッラニ風ワイン”に対する期待を良い意味で裏切り、新しいワインを市場に送り出すことにあると言えるでしょう。
例年より1ヶ月以上ブドウの収穫時期が遅れた2004年において、その年の新酒を期限までに製造するために醸造家に求められた技能レベルは並大抵のものではありませんでした。
そのブドウ栽培とワイン醸造双方への豊富な知識と高い技術を証明するものは、素晴らしいディナーや歓談に供される彼の PORTUGIESER VÁLOGATÁS 2004 をおいて他にありません。
若株1本につき小振りな1房に間引きをして収穫、醸造されたワインは、2回目の使用になるバリク樽で9ヶ月間の熟成を経て完成しました。濃い紫色の、稀にみるほどの果実の香りと豊かな味わいとビロードのように滑らかな舌触りをもつ赤ワインです。
ヴィッラニ地区のみならずハンガリー中で栽培されるブドウ品種としてのPORTUGIESERは、ワイン造りの素材として成長を果たしたと言えるでしょう。この品種には発酵時においてリンゴ酸が分解するという素晴らしい特徴があります。この長所が上述の要素をたたえた若くして飲み頃を迎え、短い熟成期間を経て直ぐにボトリングできるワインを作り出します。もし味と香りのバランスのとれた新酒を飲みたいのであれば、これほど相応しいワインは他にありません。
同時期に醸造された、よりボディーの強い世界的品種カベルネ種のワインにおいてタンニンがまだ棘々しい頃でも、PORTUGIESER種のワインにおいては、味と香りにタンニンが調和します。
PORTUGIESER種のワインで見逃せない点は熟成の早さだけではなく、ガチョウ肉に素晴らしく合うところにありますがそれだけではなく、香辛料の効いた料理や果物のソースを使った料理のお供として、あるいは単純にチーズや果物の盛り合わせを摘みながら味わうのも良いでしょう。
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2004年に可決されたEUの新しい法令により、かつてのキークオポルトーKÉKOPORTÓも現在ではポルトゥギーゼルPORTUGIESERと呼ばています。
原文:Kindl Róbert
訳文・画像:高久圭二郎
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