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一月一酒 第20回

初出:月刊ハンガリージャーナル 2006年2月

Tokaji Furmint Dorgó dűlő, 2004
醸造所:Disznókő Pincészet
産地名:Tokaji borvidék

 トカイ・ヘジャイア・ワイン地区は、ブダペストから250Km離れたハンガリー東北の端に位置します。ブダペストからトカイ地方を目指して行くと、まずミシュコルツ、次にセレンチを通り過ぎたあとで、トカイの南西の玄関口にあたる3つの集落、マード、タルツァル、メズーゾンボルの境界付近にて、ディスノークー・ワイナリーと出会います。
 ゼンプレーニ山地の裾野がハンガリー平原と出会う場所に、静かに広がるブドウの庭。その古い段地を抱えた丘の下に、黄色いクラシック様式の古い建物”SÁRGA BORHÁZ”があります。その古い醸造所の後ろに広がるブドウ畑の丘の頂に、かつて領主の素晴しい見晴台であった白い展望台があり、そしてそのそばにはイノシシに似ていることから名付けられた大岩”DISZNÓKŐ”(豚岩)があります。ディスノークー・ワイナリーはそれを社名としました。
 1992年以来、同社によってトカイ・ワインの栄光の時代が復活したと言えるでしょう。新時代を拓いた新しいオーナー、フランスのAXA Millésimes社は、ボルドー(フランス)のPichon-Longueville、Cantenac-Brown、 Suduiraut、ポルト(ポルトガル)のQuinta do Noval等の著名なシャトーを所有し、素晴しいワインを生産するという社の目標に基き、ここハンガリーにおいても最も価値のある場所の一つとして、ここトカイ・ヘジャイア地区に投資をしました。
 Ybl賞建築家・エクレル・デジュー氏の設計により1995年に建てられたブドウ処理および圧搾施設Présházは世界最高水準の設備を誇り、ブドウ畑は数年をかけてゆっくりと大部分の植え直しがなされ、Présházのそばには岩地を削掘して作られたオーク樽の並ぶ貯蔵庫があります。
 DORGÓ畑のフルミント種ブドウによるトカイ・フルミント2004は、ディスノークー社にとって初めて発売された、木製樽の醸造によるフルミント・ワインです。オーク材の中で醸造された同社の辛口路線は、素晴しいスタートを切ったといえるでしょう。
 清らかにキラキラと輝く淡黄色のワインは、フルーティーで豊な味わいとクールでエレガントな酸味をもち、ちょっとしたアクセントになる木の香りは、大部分がうまく溶け込み理想的です。
 その香りは味わいに劣らずフルーティーで花の香りも含み、洋梨、バナナ、グレープフルーツ、水仙、スミレなどの香りが感じられます。酸の構成は程よくバランスがとれたものを示しています。
 このように多層的で様々な表情をもつ優雅なワインは、その個性によりほとんど全ての料理とあわせることができます。魚料理はもちろんのこと、焼いた豚や鶏などの肉類に合うだけではなく、ゲーム料理(野生動物の肉料理)のお供にも良いでしょう。
 選ばれた畑のブドウから、ボトル数1000本のみ生産されたこのトカイ・フルミント2004は、Présházワイン専門店にて限定販売されています。

原文:Kindl Róbert
画像・訳文:高久圭二郎

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