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【翻訳】GTO Wizard Blog「Understanding which mistakes cost you the most money」

元記事

追記:
「プリフロップのミス」のセクションにおけるUTG vs COのSRPのAJoとAToの文面記載のEVの数値と画像のEVの数値が違う部分がありました。
が、元記事の本文に準拠した翻訳にしているので予めご了承ください。

以下訳

どのようなミスが大きなロスを生むのかを理解する

幸運なことに、私は『The Mental Game of Poker』を共同執筆したメンタルゲームコーチのジャレッド・テンドラーと長年一緒に仕事をしてきた。彼が私にくれたアドバイスの中で、最も印象に残っているのは、どう勉強すればいいのかわからなかった時代のことだ。ソルバーが普及するずっと前のことだから、今のようにリークを掘り下げるツールはなかった。彼のアドバイスはこうだった:

何を勉強していいかわからないなら、酷かったハンドから勉強しよう

彼が言いたかったのは、自分の1番大きなのミスを特定し、それを減らすことに熱心に取り組むということだ。1番大きなのミスは、最も多くのロスを生み出し、それを犯したときに最もティルトさせ、そして最も簡単に特定することができます。このアプローチで、より多くの利益を得ることができる。

ソルバーが普及した頃、私のもう一人の執筆パートナーであるダラ・オカーニーは、本質的にEVの観点から同じようにアプローチする勉強法を教えてくれた。ある種のミスは他のミスよりもロスが大きいものであり、ソルバーがそれを示してくれる。あるミスにどれだけロスが大きいものかを知ることができるのだから、最も大きなミスを掘り下げない理由はない。

ありがたいことに、GTO Wizardはハンドレンジ表に全てのアクションのEVをBB単位で表示するため、どのようなタイプのミスもどれだけロスがあったかを示してくれる。今日は、この機能をさらに掘り下げ、研究の指針にする方法を紹介しよう。

プリフロップのミス

簡単な例から始めよう。これはエフェクティブスタック40bb MTTのチップEVにおけるUTGからのオープンレンジである。

この表では、オープンにおける、すべてのハンドの全体的なEVを見ることができる。ご覧の通り、AAは平均10.05BBと非常にチップ期待値が高いのに対し、44はわずか0.01BBとほぼ収支トントンである。私たちがプレイしないハンド、例えばQ8sは明らかに期待値0である。

ハンドの上にカーソルを置くと、あらゆるアクションの具体的なEVが表示される。

ご覧のように、AAでshoveするのは利益的で、平均8.01bbプラスだが、AAでオープンする方がはるかに利益的である。

Q9sのように、あるアクションでは利益的だが、別のアクションでは利益的でないハンドもある:

ここでオープンは平均0.07bbプラスだが、shoveするのは0.87bbマイナスとなる。この2つのアクションの差は0.94bbである。これはQ9sのようなハンドがポストフロップでプレイするには良いが、リレイズされたらおそらくフォールドするハンドだからである。Q9sでshoveした場合、勝っているハンドからしかコールされないので、-EVのアクションとなる。

これは明らかだろう。レンジの端のマージナルなハンドの差は、とてもおもしろい。それは、レンジの下限で間違うことがいかにロスが激しいかを示している。

この例で、Axoの下限はAToである:

AToも期待値がマイナスとなるshoveだが、オープンとして平均0.06bbプラスとなる。A9oというレンジから1つだけ外れたハンドと比較してみよう:

もしあなたがこの場面でA9oをプレイし、後で調べてそれがミスであったことを知ったとしたら、あなたは「惜しかった」のだから大したことではないと考えるかもしれない。

が、これは大きな問題である。

A9oでオープンすると0.08bbマイナスとなる。AToとの差は0.14bbである。従って、レンジの下限を1ランクでも間違えると、かなりのロスとなる。あなたがMTTプレイヤーなら、0.14bbのロスは大したことないと思うかもしれないが、キャッシュゲームプレイヤーなら、このロスがハンド数増えるにつれ大きくなることを理解できるだろう。いつもこのポジションで同じミスを犯していた場合、長期的には14bb/100のロスとなる。

小さなミスでもハンド数が積み重なると、思っている以上に大きなロスになる。

UTGが正しいレンジをオープンし、BBまでフォールドでアクションが回ってきた時、これがディフェンスレンジである:

ご覧のように、BBはオッズが良く、アクションがクローズするのでレンジの半分以上をコールする。MDFという概念をよく知らないなら、これが良いきっかけになるだろう。J6sのような一見弱いハンドでは:

コールとフォールドの差はかなり大きい。その差は0.26であり、UTGが間違ったハンドでオープンした前の例で見た差よりも大きい。フォールドは「安全な」選択肢のように見えるかもしれないが、そうすることでチップを稼ぐ機会を損失させており、これは26bb/100のロスである。

少し戻って、アクションしたプレイヤーがブラインドを出していない例を見てみよう。UTGがオープンだが、今度はCOのアクションを考えてみよう:

COがコールできる最も弱いAxoはAJoで、0.07bbとなる。

興味深いことに、レンジ外の最初のハンドは時々フォールドされない。AToがコールされることはないが、レイズされることはある。

なぜなら、AToはUTGオープンに対してはうまくプレイできないが、レンジの大部分を占める強いAxをブロックするため、ブラフとして機能するからである。これは期待値五分のブラフであるが、コールすると0.11bbをロスする。AJoとAToのコールの差は0.18bbである。このように、レンジの下限では、正しいコールと間違ったコールの差が大きくなっている。ここでたった1つレンジ外ハンドでコールをすると、18bb/100のロスとなる。これはまた、ハンドの扱いの間違いが大きな意味を持つことが強調される。

ベットでは利益が出るがコールでは利益が出ないハンドもあり、オープンでは利益が出るがshoveでは利益が出ないハンドもある。GTO WizardのEV出力は、アクションの期待値を示すだけでなく、これらのアクションの根底にある理論的根拠も明らかにしてくれる。

GTO WizardのEV出力は、アクションの期待値を示すだけでなく、これらのアクションの根底にある理論的根拠も明らかにしてくれる。

コールに戻って、ハンドの差をもう少し広くしてみよう。例えば、A9oでコールした場合、これはプリフロップで、必ずフォールドすべきである:

AJoでコールすると0.07bbプラス、A9oでコールすると0.42bbマイナスとなり、両者の差は0.49bbとなる。これは重大な数字で、ハンド数が増え、このミスを犯し続ければ49bb/100のロスになる。コールをレンジの1つ分間違えることはミスであり、それ以上に間違えることはとても大きなロスとなる。

ポストフロップのミス

この例では、UTGがエフェクティブスタック40bbでオープンし、SBが3ベットしてUTGがコールした状況である。フロップはJ♥J♦4♠である。このフロップでSBはほぼ全レンジをベットし、25%のベットサイズを示した。

これは典型的なレンジベットで、SBがレンジで大きなアドバンテージを持っているため、小さなベットサイズで全レンジをベットするのが最も利益的な戦略だ。これは、ランダムなハンドサンプルの各アクションのEVを見ればわかる。

ハンドがナッツであろうと、マージナルハンドであろうと、完全なトラッシュハンドであろうと、最も利益的なアクションは25%のベットである。このようなボードで、非常に強いKJsや完全なミスであるT8sの場合、トリップスでより多くの価値を引き出し、ミスでフォールドの可能性を高くするために、より大きくベットしたくなるかもしれないが、これは間違いであることを示している。KJsで50%のポットをベットするのと25%をベットするのとでは、0.31bb、つまり31bb/100のロスが生じる。小さなミスに見えるかもしれないが、実は大きなミスなのである。

仮に25%のポットベットをしたとすると、UTGのアクションはこうなる:

ほとんどのハンドはベットサイズが小さいのでコールされ、このようなのボードではどちらのプレイヤーもあまりハンドの強さが発展しないので、プリフロップのハンドの強さが大きくものをいう。コールする最も弱いハンドのひとつはKQsだが、0.07bbもプラスである。

数少ないフォールドの一つはKQoで、これは0.71bbものロスになる。

KQsがコールであることを見れば、KQoもコールとして悪くないと思えるが、その期待値の差は大きい。その差は0.77bb、つまり77bb/100にもなる。表面的には同じ手のように感じられるが、バックドアフラッシュの可能性がKQsの価値を劇的に高めている。

このハンドを進めて、UTGが正しいレンジでコールし、ターンがK♠だったとき、SBのアクションはこうなる:

これはSBにとって良いカードであり、依然として大きなレンジアドバンテージを持っているので、戦略はほとんど同じである。25%ポットが望ましいベットサイズであることに変わりはない。このボードでの強さの異なるランダムなハンドを見てみよう。

レンジの優位性という点では何も変わらないので、今回もハンド自体に関係なく、ベットサイズは常に25%ポットが望ましい。今残っているKJsはナッツに非常に近いが、それでもこの小さいサイズが有利である。50%ポットと25%ポットのベット額の差は0.87bbであり、これは87bb/100のロスである。

フロップの時、50%ベットと25%ベットの差は31bb/100の誤差であったことを思い出してほしい。これは本質的には同じ戦略上のミスだが、ロスは3倍近く違う。これは、フロップの時よりもターンの時の方がポットが大きいという、かなり明白な理由によるものだが、それでも重要な性質なので覚えておく価値はあるだろう。

これはエフェクティブスタック50bbのUTGのレイズに対するBBのレンジである。

ストリートが後半になればなるほど、ミスに対するロスは大きくなる傾向がある。

ゲーム終盤でのミス

では、ICMが重要な要素である場合のミスに対するロスを見てみよう。

GTO WizardでICMスポットを見るとき、EVはbbではなく、パーセンテージとしてのトーナメントエクイティで測られる。この方法は、テーブルのICM(フィールド全体ではない)の合計し、それに対するパーセンテージとしてEVを表す。つまり、例えばテーブルのICMの合計値が$1,000で、あるハンドのEVがシミュレーションで1であった場合、そのハンドは平均$1,000の1%、つまりリアルマネーで$10を稼ぐことになる。

この例では、私たちはバブルに近づいており、これがテーブルのセットアップとバブルファクターである。

ご覧のように、非常にスタックの浅いプレイヤーがUTG1に入っており、BBもリスクを負っている。

これがUTGがフォールドしたときのUTG1のレンジである:

KTsはKxグループの下限のshoveハンドで、これがそのハンドである:

先ほどは、shoveは不利だがオープンは有利になる場面があったが、これはその逆である。KTsではshoveは利益を生み、テーブルエクイティの0.07%プラスになる。オープンは0.03%マイナスで、両者の差は0.1%である。この理由は、shoveがよく機能すること、この特殊なハンドは多くのコールをブロックすること、コールされたときのエクイティがそこそこあることである。

レイズしてくるハンドレンジはKTsをドミネートしており、コールされてフロップだミスすると厳しい状況に陥ることが多いため、オープンは不利である。これはICMが働いている場合、特にショートスタックとして非常に重要な考慮点である。一番良くないのは、スタックがかなりの割合でポットに入り、全スタックを賭けなければならない厳しい決断を迫られ、フォールドせざるを得なくなることである。自分のスタック全体のレバレッジを利用して、相手プレイヤーに厳しい決断を迫る方がずっと良い。

KTsは有効なshoveであるが、K9sではこのようなロスとなる:

K9sはshoveすると0.03%マイナスにので、KTsとの差は0.1%である。

UTG1が適切なレンジでshoveしたと仮定すると、これがBBのコールレンジである。BBもショートスタックであり、負ければバブルになることはほぼ確実である。

AJsはペアでないハンドのコールレンジの下限であり、コールした場合は、テーブルのエクイティの0.38%プラスになる。

これがATsのロスである:

2つの近いアクションの間にかなり大きな差があり、その差は0.41%である。もしランクが2つ間違ってしまったら、つまりA9sでコールしたら、こうなる:

AJsとA9sの差は0.77%である。

ここには非常に重要なポイントがある。先ほどの例では、レンジを1つ間違ったshoveのロスは0.1%であり、ATsでコールした場合、同じチップ量で1ランク間違ったコールのコストは0.41%である。間違ったコールのコストは、間違ったshoveのコストの4倍である。

これはポーカーの古い格言を証明している:「レイズにコールするには、レイズをするよりも強いハンドが必要である」悪いshoveは、相手にフォールドさせるという望ましい効果があるので、それほどロスが大きくはならない。プリフロップでポットを取り切るか、コールされた時に勝つかの2通りの勝ち方がある。フォールドがあるため、平均的なポットサイズが小さくなり、ミスは少なくなる。

悪いコールは、悪いベットよりもコストがかかる。なぜなら、ポットが大きくなることが確定しており、ショーダウンでベストハンドを持っている必要があるからだ。

同じテーブルでのミスは、トーナメントが深くなればなるほど大きくなるからこそICMを学ぶことが重要なのだ。ミスを「たかが」xbbの負けとして合理化すると、ミスに対するロスが本当の損失よりもはるかに大きくなる。

bb数ではなくテーブルエクイティで測ることに戻ろう。例えば、$11 Sunday Stormのバブル前に3%のミスをしたとしよう。これは$0.60のミスであり、$11のバイインから見れば大したミスではない。賞金総額$50,000近いSunday Stormのファイナルテーブルで同じミスを犯すと、そのミスによっておよそ14バイイン分、$150のエクイティが失われる。非常に小さなミス、おそらく正しい範囲からたった「1つ」外れただけで、大金を失う可能性があるのだ。

ポーカーの勉強のトリアージ

今回は、期待値がプラスとなるレンジの下限にあるハンドと、レンジ表でその隣にある期待値がマイナスとなるレンジの端のハンドとのEVの差はどれくらいかを見てきた。これは、もしあなたが定期的にミスを犯すなら、そのミスに対するロスを示すものである。

▶︎これはまた、ある種のミスは他のミスよりもロスが大きいことも示している。

▶︎フォールドのミスに実質的なロスはないが、それは機会のロスである。すでにチップをベットしている場合は、特に大きな機会のロスとなる。

▶︎ベットのミスはそれほど問題ではない。フォールドさせることができるからだ。shoveのミスもまたそれほど問題ではない。スタック全体のレバレッジを使うことで、多くのフォールドを得ることができるからだ。

▶︎コールのミスはより大きなロスとなる。フォールドさせることはできないし、ショーダウンでベストハンドを持っていなければならないし、ポットはより大きくなる。

▶︎ICMが働く場合のコールのミスは、ミスの実質的な金銭的価値が倍増するため、より大きなロスとなる。年の最大のファイナルテーブルでコールレンジを間違えれば、数十から数百バイイン分のエクイティを失うことになるかもしれない。

▶︎ベットとコールのミスは、ストリートが進めば進むほど大きくなる。リバーでのコールミスは、ポットが前のストリートよりも大きくなることが多いため、より大きなロスとなる。

ポストフロップを研究する場合、これはリバーのミスはターンのミスよりも修正することが重要であり、ターンのミスはフロップのミスよりも修正することが重要である。GTO Wizardドリル機能が真価を発揮するのはここからだ。ここでは、あなたが犯すミスの種類とそのロスを素早く特定し、あなたのバンクロールを少しも危険にさらすことなく、最もロスの大きいスポットを具体的に練習することができる。

つまり、ポーカーを勉強する上で、簡単にできる上達法があるということだ。プリフロップでは、オープンとshoveのレンジを練習する前に、コールのレンジを練習することが重要である。ICMを勉強している場合は特にそうだ。自分のコールレンジを理解することは、ファイナルテーブルやバブルでは不可欠である。これらは、その年最大の勝負の決断の助けになるだろう。

要点

▶︎何に取り組めばいいのかわからない場合は、1番大きなのロスから取り組む。

▶︎利益が出るハンドと、レンジから1つ外れたハンドの差は大きい。

▶︎ベットのミスはコールのミスほど高くはない。

▶︎ベットで利益を得られてもコールで利益を得られないハンドもあるし、shoveで利益を得られてもオープンで利益を得られないハンドもある。

▶︎ストリートが後になればなるほど、ミスに対するロスは大きくなる。

▶︎トーナメントの後半になればなるほど、ミスは大きくなる。

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