4号規定の違憲判決に便乗して考えてることをまとめる

書き散らすよ~

トランスジェンダーについての議論()について思うところ

埋没しているトランスジェンダーも想定に上げたい

トランスジェンダーという言葉を聞いたときに想像される平均的人物像が、「男性/女性っぽい服装はしてるけど見るからに女性/男性」に偏っていることは、トランスジェンダーについての議論をする上で実態にそぐわない。移行先の性別で生活してる人だっていっぱいいて、彼らは必ずしもトランスであることを広く宣言しない。埋没ってやつ。そりゃ、トランスジェンダーは移行の過程では強制的に周囲にカミングアウトする形になる一方で、移行が一区切りついてからは「実は生まれたときの性別は今と違って~」って名乗る機会は少ないから、イメージとしてはそういうのが先行するんだろうけれども。

補足として、移行していない、医療的介入を受けていない、あるいは移行中のトランスジェンダーが"本当の"トランスジェンダーでない、ということではない。

法律が人に外性器&不妊手術と埋没不可の二者択一を迫っていることを議論の出発点にしたい

トランスジェンダーの中には、4号・5号要件(他の要件もそうだが)を満たしていないけれども、服を着たときの見た目と戸籍上の性別が一致しないために様々な場面で著しい不利益を被っている人がいて、彼らは既に社会で生活している。ここを議論の出発点にしたい。

トランスジェンダーの中には、移行先の性別として社会生活を送っているが、

  • ホルモン治療のみで満足できる結果が得られたなどの理由で手術を望まない人

  • 外性器の手術は希望するが内性器は希望しない人(特にトランス男性の卵巣/子宮摘出)

  • 体調の問題や金銭面(保険適用は条件が超複雑)で手術ができない人

などが存在する。下の名前の変更は戸籍上の性別変更よりも緩めなので名前も変えていたりする。
が、彼らは戸籍上の性別を変更することができず、主に身分証明を必要とされる場面で自分がトランスジェンダーであることを強制的にカミングアウトさせられる。就職、各種契約など…

個人的もやもや

わたしは女性的性表現をしているし狭義トランスではないけどシスでもないので、周囲の人に対する、女性的性表現をしてるせいで自分が女性だと騙しちゃってごめん…という気持ちはある。罪悪感を感じなければいけない理由なんてどこにもないんだけど、でも感覚としては存在する。たぶん男性/女性として生活してるトランス女性/男性にも同じように感じている人はいると思う。でもあんまり言及されてることがない。

今回の判決

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/446/092446_hanrei.pdf

内容

特例法が戸籍上の性別変更の要件としていた4号規定は違憲という話。

特例法3条1項4号「生殖腺がない こと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。」…は、憲法13条、14条1項に違反し、無効

(以下、劣化版要約)

まず特例法を取り巻く社会的環境の変化への言及がある。そもそも特例法には諸々の環境の変化を検討して必要な措置をとるという規定が置かれているので。

  • 医療面では

    • 治療ガイドラインが段階式→身体的治療に関しては選択式に

    • ICDにおいて性同一性障害→性別不合と扱いが変わった

  • 社会面では

    • 国の各種通知や取組

    • 経団連の提言

    • 国際的に生殖能力の喪失が性別変更の要件から外されてきた

次に4号規定の合憲性(13条)検討。

  • 生殖腺除去手術の強制は身体への侵襲を受けない自由に対する重大な制約に当たる。

  • 特例法は必ずしも同手術を強制しないが、性別変更審判を受けるために(GIDの治療としては手術を要しなくても)原則として手術を要求する。

  • 他方で、性同一性障害者がその性自認に従った法令上の性別の取扱いを受けることは、重要な法的利益

  • →手術は強制ではないにしても、4号規定は当該自由に照らして必要かつ合理的なものということができない限り許されない

自由の重要性と4号規定の必要性&合理性を較量パート。
まずは必要性&合理性から

  • そもそもの目的は親子関係の問題や急激な変化による混乱を避けようとしたもの。

  • トランスが子を設けて親子関係に問題が生じるのはレアケだし、立法で対応できる範囲

  • 3号(「子無し要件」)緩和で「女である父」「男である母」は肯認されたが、混乱は生じていない

  • 施行から19年の間に理解や取組が広がった

  • →4号規定を廃止することによる変化は予期せぬ急激な変化とまではいえない

次、4号規定の現状

  • 現在では必要な身体的治療は患者ごとに異なるとされるため、4号規定の要求は医学的合理性を欠く

  • 4号規定は、治療としては生殖腺除去手術を要しないGID者に対し、強度な身体的侵襲/重要な法的利益の放棄という過酷な二者択一を迫るものになった

  • 国際的に見ても制約として過剰

補足意見
なんかこっちのほうが重要まである。あとで書くか

意見

「外性器&不妊手術と埋没不可の二者択一を迫る法律、そこまでして社会のシス性を守る必要を感じない」って感じで、今回の判決も実情に照らし合わせて妥当だという感覚。

4号規定を消すと、男性/女性として生殖能力のある戸籍女性/男性が存在することになるので、同性婚が真面目に議論されることになりそう。結婚がどこまで男女or子を為せるカップルを排他的に守る制度であり続けるか、あるいは結婚から子の養育が分離していくのか…
現状でも戸籍男性社会的男性と戸籍女性社会的男性のゲイカップルが法律婚していたりするので、すでに排他的になりきれていない部分はある。

ところでここまで男性/女性というバイナリな話しかしてないですが、わたしは(自分の性自認とは独立した話として)社会が人間を男女のどちらか/進歩的であっても男女を両端としたスペクトラムのどこかとして認識することへの巨大お気持ちと違和感を持て余している。この考え、バイナリな人間がいる限り衝突しちゃうのはどうしようもないのだけれど…

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