見出し画像

【行間を読む】犬井鉄郎・田辺行人・小野寺嘉孝「応用群論」pp. 89-90 (不変部分群の既約表現の分類)

キーワード

  • 不変部分群

  • 表現の同値

  • 郡作用

該当箇所

ところで、$${k}$$個の表現$${\Delta^{(k)}}$$は全て異値とは限らない。そこでこれらを分類して同値なもの同士をひとまとめにする。その結果、これらの表現を、$${i}$$を決めたとき$${∆^{(ij)}}$$ ($${j=1, 2, \dots, m}$$) は全て$${∆^{(i1)}}$$に同値であるが、$${i}$$の異なる$${\Delta^{(i1)}}$$ ($${i=1, 2, \dots, s}$$)はどれも互いに同値で内容に番号づけて並べることができる。ただし$${k=sm}$$である。これに対応して、$${T_i}$$も

$$
\begin{array}{ll}T_{i1}=P_i&(i=1, 2, \dots, s)\\T_{1j}=R_j&(j=1, 2, \dots, m)\\T_{ij}=P_iR_jS_0&(S_0\in\mathcal{H})\end{array}
$$

のように番号づけができる。このとき、

$$
\begin{array}{l}∆^{(ij)}(S)=U_{ij}^{-1}∆^{(i1)}(S)U_{ij}\\∆^{(i1)}(S)=∆(P_i^{-1}SP_i)\\∆(R_j^{-1}SR_j)=U_j^{-1}∆(S)U_j\\U_{ij}=U_j∆(S_0)\end{array}
$$

ただし、$${U_j}$$はユニタリ行列である。

疑問点

  • $${m}$$は全ての$${i}$$で共通するのか

  • なぜ$${S_0}$$が必要なのか

解説

この後の小群(安定化群)にもつながる話として群作用を定義する。

右作用の定義

群$${\mathcal{G}}$$と集合$${X}$$があるとき、写像$${\phi:X\times\mathcal{G}}$$で

$$
\begin{cases}\phi(x,1_\mathcal{G})=x\\\phi(\phi(x,g),h)=\phi(x,gh)\end{cases}
$$

を満たすものを、$${\mathcal{G}}$$の$${X}$$への右作用という。

既約ユニタリ表現全体の空間を表現の同値関係で割った空間を$${\mathrm{Rep}}$$、代表元を用いてその元を$${[∆(S)]}$$の形で書くものとする。ただし、$${∆^{(i)}\sim∆^{(j)}}$$は$${\exists T\in\mathrm{GL}(\dim∆), T∆^{(i)}T^{-1}=∆^{(j)}}$$で定義している。ここでは右作用として

$$
\phi:\mathrm{Rep}\times\mathcal{G}\to\mathrm{Rep}; \phi([∆(S)], g)=[∆(g^{-1}Sg)]
$$

を使う。

この右作用では

$$
S, S'\in\mathcal{H}\Longrightarrow\phi([∆(S)], S')=[∆(S'^{-1}SS')]=[∆(S')^{-1}∆(S)∆(S')]
$$

が成り立つが、$${∆}$$は$${\mathcal{H}}$$のユニタリ表現なので$${\exists U\in \mathrm{U}(\dim∆), U=∆(S')}$$である。すなわち任意の$${S'\in\mathcal{H}}$$について$${∆_{S'}(S):=∆(S'^{-1}SS')}$$により定義される$${∆_{S'}}$$は$${∆}$$と同値。従って

$$
\phi([∆S], S')=[∆S]\qquad––––(*)
$$

である。

導出

$${∆^{(ij)}\in[∆^{(i1)}]}$$はユニタリ表現なので、ユニタリ行列$${U_{ij}}$$があって

$$
∆^{(ij)}(S)=U_{ij}^{-1}∆^{(i1)}(S)U_{ij}
$$

とできる。また

$$
\exists\: T_{ij}\in\mathcal{G}, ∆^{(ij)}(S)=∆(T_{ij}^{-1}ST_{ij})
$$

である。$${T_{11}=E}$$とする。ここで、

$$
\forall \:S\in\mathcal{H},\;∆(T_{ij}^{-1}ST_{ij})=U_{ij}^{-1}∆(T_{i1}^{-1}ST_{i1})U_{ij}\\\therefore\quad∆(S)=U_{ij}^{-1}∆(T_{i1}^{-1}T_{ij}ST_{ij}^{-1}T_{i1})U_{ij}
$$

なので、

$$
\phi([∆(S)], T_{ij}^{-1}T_{i1})=[∆(S)]
$$

が任意の$${i}$$で成り立つ。特に左辺と$${i=1}$$の場合を比べて、$${S_0\in\mathcal{H}}$$により

$$
\phi([∆(S)], T_{ij}^{-1}T_{i1})=\phi([∆(S)], T_{1j}^{-1}T_{11})=\phi([∆(S)], T_{1j}^{-1})
$$

とできる。ここで(*)を念頭に置いて最左辺と最右辺を比べると$${T_{ij}^{-1}T_{i1}\in T_{1j}^{-1}\mathcal{H}}$$である。今、$${\mathcal{H}}$$は不変部分群であるから、$${S_0\in\mathcal{H}}$$が存在して

$$
T_{ij}^{-1}T_{i1}=S_0^{-1}T_{1j}^{-1}
$$

とできる。ゆえに

$$
T_{ij}=T_{i1}T_{1j}S_0
$$

の形にかける。$${T_{i1}, T_{1j}}$$は独立にとれるので、$${j}$$のとる値は$${i}$$に依存しない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?