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異次元の異型中空断面糸 Octa®とは

昨今、アウトドア業界で「タコ足」が話題になっているのはご存知でしょうか?もちろん海の生物のタコのことではありません。それは、私たち帝人フロンティアが開発したOcta®という、軽くて様々な機能を備える生地のことなのです。
今回はこのOcta®をご紹介いたします。

◆開発の始まり

スポーツシーンでも街中でも、常にウェアに求められるのは“快適性“。寒い日には高い保温性を発揮しつつ、激しい運動や電車内の暖房で、汗をかいた時に素早く汗を吸い取ってくれてサラッとした着心地が続く。そんなウェアがあったら良いですよね。そこで私たちは、この夢のような素材を作り出してみようと開発を始めました。
重要なポイントは温度をコントロールすること。Octa®は、穴の開いた中空糸に8本の突起を放射線状に配列した、タコ足を思わせる断面を持つポリエステル糸です。この特殊な形状によって、たくさんの隙間を作ることで空気層を形成し、保温性を発揮します。さらに、水分が通りやすいため、素早く汗を吸い取りサラッとした着心地が持続します。また、嵩高性が非常に高いため、同じ直径のポリエステル糸に比べて2分の1程度という軽量性を実現しました。

Octa®糸断面

そして、Octa®の機能をフル活用するための“ある秘策”によって、ヒット商品が誕生しました!!
この“ある秘策“とは、Octa®を特殊な構造体に活用することでした。具体的にその生地を2つ紹介させていただきます。

◆Octa®CPCP®

1つ目は、Octa® CPCP®です。基材となる編地にOcta®をフワフワの中わたのようにして編み込んだトリコット生地で、基材と中わたが一体構造になっていることが特徴です。Octa®でできた中わた部分にたくさんの空気を含むことで、軽量かつ高い保温性を発揮し、激しい運動で汗をかいてもOcta®が汗を吸い上げ、素早く乾燥してくれます。また、基材と中わたが一体となっているため、洗濯しても中わた部分がずれることがありません。使い方は色々。気候や気温の変化の激しい登山やトレッキング向けのインナーシャツや防寒ジャケットなどで、たくさんのブランドに採用いただいています!

Octa®CPCP®

◆Thermo Fly®

2つ目は、Thermo Fly®です。アウトドアスポーツに必要なウェアは、アウター、ミドラー、インナーの3つと言われています。アウターは防風・防寒用のしっかりした作りのもの。インナーは運動によってかいた汗を素早く吸収し分散することで、汗のべとつきや汗冷えを防ぐもの。そして、ミドラーはアウターとインナーの中間に着用するもので、主に起毛加工を施すなどして保温機能が高いウェアです。一方で、アウトドアウェアが街着としても人気となるにつれ、もっと軽量&コンパクトで、機能を保ったまま重ね着を減らしたいというユーザーの声が大きくなってきました。しかし、保温機能のために起毛加工をすることが多いミドラーの表面はふぞろいのため、汗を素早く吸収する機能が低下するなど、インナーとミドラーの機能を兼ね備えることは結構難しいことだったのです。

Thermo Fly®

そこで私たちは、Octa®の機能をうまく活かした新しい生地を開発しました。特殊なニット生地を使った、起毛しない嵩高立毛構造体であり、肌に当たる面の毛先が均一なので高い汗処理機能を持つとともに、特殊な加工でOcta®を捲縮(繊維がちぢれていること)させることでデッドエアによる高い保温性も両立しました。こうして開発されたThermo Fly®は、ミドラーとインナーの機能を一枚で果たしてくれるウェアに広く採用されています。

このThermo Fly®ですが、実はさらに素晴らしい機能があるのです。従来の起毛素材は、保温性を高めるために生地の表面を引っかくことで起毛されているのですが、その際、繊維が切断されるため、家庭洗濯時に微細な繊維くずが多く排出され、海洋マイクロプラスチック問題の一因となっているとも考えられています。一方で、Thermo Fly®は糸の抜け落ちが少ない長繊維で作られており、非起毛素材で高い保温効果を持つため、従来の起毛素材と比較して、家庭洗濯による繊維くずの発生が軽減されるのです。環境に配慮したもの作りにこだわるアウトドアブランドが多い中、地球環境との親和性の高いこの生地は、たくさんの方から評価を頂いています。

◆たくさんの可能性を持つOcta®

Octa®の特性が十二分に発揮された構造体の開発に成功しましたが、Octa®はもっとたくさんの可能性を持っているはずです。原料にリサイクルポリエステルや植物由来原料を使ったり、繊維長を変えたりすることで、Octa®のポテンシャルを無限に広げ、もっと快適で、もっと便利で、もっと地球にやさしい生地の開発を続けていきたいと思います。


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