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zine「山羊のミルク、胃の中の銀河」について

 このzineは、山羊が新芽を食べて栄養に変える過程から影響を受けています。

 山羊は、若葉や新芽を口に運んで噛んで、飲み込み、四つの胃を行き来させて消化します。一つめの胃では微生物が消化を助けます。若葉や新芽は微生物の力によって栄養に変わり、山羊の血となり肉となっているのです。

 "browse(*1)"という言葉に出会ってから、山羊がとても近い存在となっていました。柔らかい季節に、山羊がたくさんの低木の中から若葉や新芽を選りすぐって食べる姿が、時々頭の中に浮かんでくるようになっていたのです。私が1月生まれの山羊座であることも、山羊との距離をさらに近くしました。

 日々、たくさんの書棚の中から選りすぐった本を読む私の姿は、山羊そのものでした。物分かりがよくない私は、「食べたもの」を誰かに話したり、こうしてzineを作ることで血や肉としていっているのだと、納得したのです。同じ時間を過ごす「あなた」の相槌や他愛のない受け答えが、私を生かしてくれているのでした。

 そのうちに、「銀河」を意味する"galaxy"の語源が、ギリシャ語でミルクを意味する言葉であるとわかったことも、このzineを作る手助けになりました。
 
 zineの「ひとつめの胃∩銀河#1」から「よっつめの胃∩銀河#4」までのページは、自分の中にある記憶の断片です。はじめは、この記憶にどのような意味があるのか、それともそんなものはじめからないのか、それすらわかりませんでした。わかっているようでも、それはこちらが自分勝手に名付けた意味でした。ちょうど、名もない星の並びに名前をつけて、星座を作り出すことに似ていました。

 最後の「ミルク」のページは、そんな星座のような記憶の断片が、しかるべき時間と「あなた」のおかげで栄養になった姿です。

 このzineは、私の血や肉です。「空腹」が衝き動かした結果です。誰かの若葉や新芽になれたら幸いです。


(*1)browse = 「若葉(新芽)を食べる」、「(書棚を)あさる」、「(本などを)拾い読む」

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