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シャニマスのいいとこ×ステキなところ×悪い癖=5thのday1

・シャニマスのいいところ。
 ・「アイドルとは何か」「プロデュースとは何か」みたいな、コンテンツの根幹に関わるテーマをひたすら煮詰めてくるシナリオ。
 ・登場人物をキャラクターである以前に『人格』として尊重しているような世界観の作り込み。
 ・表現したいものを現出させるために創意工夫の凝らされた音楽、シナリオ、イラスト等々のトータルコーディネート。

・シャニマスのステキなところ。
 ・演者さんの、キャラクターへの愛着と深い理解の伺える演技やパフォーマンス。
 ・何かと挑戦的な姿勢。

・シャニマスの悪い癖というか……悪いとはいいたくないんだけど、こう……なところ。
 ・ユーザーに託しすぎというか……信じて投げてくれるのはいいんだけど割と暴投なこともちょいちょいあるよね……プロデューサー参加型で広告コピーとか考えてね広報とか……。
 ・世界観を作り込んでくれるのは俺は大好きなんだけど、こう、例えば『見守りカメラ設置したよ!』つって、延々環境音だけ流したり……いや俺は大好きだし、みんなも大好きだと信じてるけど……。
 ・ほんとにキャッチボールする気ある!!??? みたいな剛速球ぶん投げてくることがさ……いや、受けとめるこっちを信じてくれてるからこその全力投球なのはわかってるんです。エイプリルフール企画を作り込んでくれるのは嬉しいけど一日は24時間しかないんだよねみたいな分量なうえにビターな展開をちょいちょい取り混ぜたうえに解釈の難しいエンドだったりとか……おれは好きだけども……。


・先に個人的な感想を書いておくと。

 シャニマスのいいところもステキなところも悪いところも全部煮出して濃縮した最高のライブでしたね。

 なんなら、配信と現地含めて今まで参加したライブのなかでも最高と数えられるひとつだったんじゃないかしらとか思ってます。
 いい過ぎかもしれない。
 でも記憶には残り続けると思う。
 パフォーマンスは申し分なし。スゲエよかった楽しかった。
 ストレイの和楽器、シーズの男性バックダンサー(かっこええー!!)の肩を肘置きにする振り付け……列記はがまんするけど他にも他にも他にも他にもほんとよかった。
 そのうえに、シャニマスのいいとこ・ステキなとこ・悪いとこを源泉掛け流しでぶっかけられたような体験まで加わって、しかもまだ明日が残ってる。
 え。最高じゃないですか?


・THE IDOLM@STER SHINY COLORS 5thLIVE If I_wings. Day1 とは結局なんだったのか。

「Pが283プロに入社しなかった世界線」とか「Pが過労死した末路」とか「例の商談で失敗した分岐先」とかそのへんの考察にはここでは触れません。
 体験として、いかにもシャニマスであるなというライブだったなと。シャニマスくらいでしか体験できないし、シャニマスじゃないと成立もさせられないんじゃないかなと思った。
 シャニマスは「見立てによる追体験」がやたらと巧みだからである。

 それの好例として、『線たちの12月』が挙げられると思う。
 シャニマスお得意の、「アイドルとはなんだ?」という問い掛けの一つである「他者の幸せを祈るとはどういうことか」の、寓意と見立てによる物語。

 アイドルて職業は誰かを笑顔にするお仕事だと(シャニP当人の口から)語られてるけど、では「他者が幸せであるよう願う」てのはどういうことか。案外、実生活では味わいづらいこの感情を、『線たちの12月』を読んで感動したP諸氏はみな知っているのである。

 だって、そりゃそうだろう。
 斑鳩ルカと風野灯織の、偶然の邂逅が幸福な結末になるよう、祈りながらテキストを追ったはずだ。
 門前に佇むご婦人と、それを気に掛けるアイドル達とが悲しむような結末にならぬよう祈ったはずだ。
 凛世と小糸とか『家族のように』なれるように願ったはずだ。

 おシャニさんのシナリオでほとほと感心させられるのは(そんでぼとぼと落涙させられるのは)こういう、「追体験」の巧みさが故だと思う。
「他者の幸せを祈るとはどういうことか」という問い掛けの答えは用意してくれないけど、「きっとこういうことだ」と追体験をさせられる。
 アルストロメリアの「大事なものを大切にする」という感情や、ノクチルの「言葉に出来ないけどキラキラしたもの」とか。とにかくそういう色々沢山、直接的な言葉にしないからこそ我々の心にまで届く感情の受け渡し。シャニマスはそういう見立てで伝えるパワー的なものがほんとにすごい。

 それを丸ごとライブでもって出力したならこうなるんだなというのが 5th の Day1 ですな。
 そりゃ焼かれるわ。色々。

 あのライブでの見立てがなんなのか。前述の通りそこんとこに触れる気はないけれど。でも、それは確かにアイドル達がずっと表現し続けてきたことなのだと思う。
「特別じゃないライブなんてない」「かけがえのない毎日」「出会えた奇跡」「未来なんて本当はどこにもない」「今日できるか、できないか。それが全て」
 そのステージをみた感情は各Pの心にそれぞれ委ねるとして。

 委ねるけど……。

 ……死ぬほど有り体にいうならアレよね。
 たまに同人誌とかで企画される『プロデューサーの葬式合同』みたいなアレ。
 それを公式でやったらこうなりますみたいな。
 それをエイプリルフールでもなく匂わせ程度で事前告知なくやっちゃうのが……ほんと、シャニマスくんのそういうとこって感じだけど……。

 でもしょうがないじゃない。
 事前にはづきさんに「本日のライブは、プロデューサーさんに死んでもらいます~。あ、といってももちろん、本当に死んでもらうわけではありませんので、安心してくださいね~?」とか予告させるわけにもいかないじゃない。
 シャニマスのシナリオの見立てを体感したならきっとわかるはずだけど、ある種のリアリティがなければそれは成立しない。
 一定以上の本気で、彼女達が幸せであるようにと願わなければ『線たちの 12月』の見立ては壊れてしまう。
 だからこそシャニマスはある種のリアリティを大切にする。
 それと一緒だ。
 5th の Day1 は、皆が不安に感じなければ成立しない演出のうえになりたった舞台だ。
 魔法はみんなが信じなければ叶わない。
 だから……だけども……それだとしても、「ライブの諸注意」をすっ飛ばしたり、「ガチャだのシナリオだのの今後のゲーム予告」を流さなかったり、アンコール曲でのわちゃわちゃをなくして順番に退場させたり……締めの挨拶もしないし……ほんと……ほんと、いちいち細かいところが本気過ぎるねんシャニマス……。

「甘奈ちゃん、こっちからちょっと覗いてみて? 客席がみえるの」「わあ……」でまっピンクに揺れるペンライトが微笑ましかったけど、そこからの甘奈ちゃん及び黒木ほの香さんの迫真の「……アルストロメリア。私たちの、未来」て曇り演技とか……現地にいたアルストPの心臓は大丈夫だったでしょうか……。
 あとにちかの「ステージの上は眩しくて、逃げたくなる。でも、逃げた先は、暗くて、冷たくて、一人で……なみちゃん。美琴さん……プロデューサーさん……私……!」つって独白したあと美琴さんのコメントが入らず直ぐ曲が始まったところで思わず「そういうところォオ!!」て叫んだわよ……。

 まあ……こういう……。
 演出に殉じてくれるからこそみなシャニマスが好きなんだろうけど……。いや、好きですけどね!!
 二度目のアンコールが起きたあたりとかほんと切実でしたね皆様。確かに魔法はあったよ。あのステージには。闇魔法かも知らんけど。

 だいぶ個人的な感性の話になるけど。
 何かしらのコンテンツに触れるときは「そのコンテンツでしか体験できない何か」を体験したいからこそそれに時間を費やすのである。
 何かしらのイベントに参加するときは「その瞬間その場所でしか目撃できない何か」を知りたいからこそコストを支払うのである。
 その意味では、今回のライブはそれの極致といえるのじゃないか。
 やろうと思えば色んなコンテンツが出来ることだろうから、「シャニマスじゃなきゃ味わえない」と、大きく振りかぶるつもりはない。だけれども……シャニマス以外の何がこんなことするんだろ。そう言ったら過言になるだろうか?

 まあ、珍味の一種であることは認めなければならないかも知れない。
 演者さんを応援してニコニコしにきたのに(しかも、そういやシャニ単独でやっと声出し解禁ライブでさ……)「これはこれで!」みたいな味のある珍味を口にねじ込まれて不満が出るのもまあ仕方のないところとは思う。……事前演出であんだけ不穏っぷりを醸してたけど、ここまでガチだと想像できるひとはそうそうおらんだろうし。
 Day1 しか参加できないひとのことだとか、逆に、Day2 しか参加できないんでネタバレ全封印してるひとどうなるんとか、Day1 まるごと Day2 のための演出でしかないん? みたいな意見も(Day2 がどうなるんかわからんけども)ある程度頷けるところである。
 演者が制作サイドの独善的な演出に付き合わされてるみたいな意見は「いや……それは、そういうもんでしょ?」としか言えないけど。
 最も同情するのは、合間合間に挟まる不穏演出を(愛着があるが故に)真に受けまくってパフォーマンスを楽しむどころじゃなかったんだけどて感想である。けども、これはこれで体験としてはちょっと羨ましいところもある。
 私なんぞは結局、メタ気味に「ええ……なんなん……ここまでやる理由はなんなの……え? 新アプリとか? 新アプリのリリース予告にこのまま繋げるとかなん?」みたいな視点で観ちゃったりで、そこまでは入り込めなかったし。物語に没入するのもそれはそれで能力といえるものであり才能や努力の求められることだと思う。

 それで。結論はもうすでに「シャニマスでしか体験できないようなライブだったのだから最高のライブだったってことでいいんじゃない?」と述べた通りなのだけど。改めて思うのは。
 誰かが言ってたけど、ひとが思う以上にひとはバッドエンドに耐性がないそうだ。
 シナリオや演出でもって生計を立てている人々がそれを知らないはずはない。上記の諸々のリスクも勘案はされただろう。それらのリスクを全て承知のうえで、きっと受けとめてくれるという覚悟で乾坤一擲されたのが今回のライブだったと思う。
 正直なところ、キミ達がどう思ったかはわからんし、反発をしてしまった個々人には個々人なりの理由があるだろうし、それらを含めて、明日次第でまた評価は変わるかもしれない。
 だけど、個人的には、最高のライブだった。そう思った。

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