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身体物理基礎①「物理学」から剣道の理論を構築していく記事

前回、どのように身体が「重力」や「抗力」に対して作用するのかを理解しなければ、身体の操作自体そのものを語ることができないと述べましたが、今回はいよいよ「受動的な力:運動遂行者の意志によっては、ほとんど調整不可能な重力、風の抗力、浮力といった力」で特に運動に関わってくる「重力」を利用した動きを習得するための骨組みを1から造っていく記事となる。

人間でも、物体でも、運動そのものに着目すれば、それは「力学」の対象となる。日常の経験を注意してみれば、力学の法則がいろんな形で意識される。法則は経験から生まれ、経験によって発展していく。法則を利用することも、やはり一種の法則の発展であるから、法則そのものを学ぶばかりではなく、現実の運動、特に剣道の動きの中から法則を形成し発展させるための「直感」と「方法」を学ばないとならないのだ。

力学の中でも力の平衡を論じるものを「静力学」、これに対して運動を考える場合を「動力学」に分類されるが、勿論、剣道でも構え、すり足などの応用するための手段として学んでいく。

「力(ちから)」とは??

力とは、

・物体を変形させるはたらき

・物体(自分の身体、人体)の運動の状態を変えるはたらき

運動の状態が変わるというのは、物体(人体)の速さが変わるときや、方向が変わるときをいいます。なんで、ここで「力」の話をするかというと、スポーツ全般、まして「剣道」の場合、身体のどの部分に「力」を入れるか?どの身体の部分が効率よく「力」が入るのか?これを研究していくのですが、「力」そのものを理解していないと何が合理的な動きなのか?それ自体がわからなくなります。

力が物体に働くときは面ではなく点で、方向は直線

力とは、①大きさ②作用点③方向の3つの量の力の要素のことを掛け合わせたものといっていい。①力の大きさの単位としては、工学ではキログラムを用いる。②物体に働く力の作用点とは、ベクトルの始点、つまり力のはたらく点を「作用点」であり、そこに力が集中していると仮定できるような物体内の点である。実際の物体では、力を一点に集中することは不可能で、あらゆる力は、ある定まった面積か体積に分布して作用することとなるが、釣り合いの条件を変化させない限り1つの作用点に集中して考えた方が便利であるので、基本的には作用点は1つとして考えた方が良い③力の方向とは、作用点を通って、力が物体を動かそうとする方向で、力の作用線と呼ぶ、重力は水面に垂直下方に向かっている。糸によって、物体に力を加えた場合、糸が力の作用線となる。力のように大きさと方向を持つ量は、ベクトル量といわれ、矢印で現す場合が多い。この時矢印の長さでベクトルの大きさを示し、矢印の方向でベクトル方向を指す。矢印の元のところをベクトルの始点と呼び、矢印の先端をベクトルの終点と呼ぶ。ベクトルは数学の数Bで学ぶ、あのベクトルである。

力の作用点(そこに力が集中していると仮定できるような物体内の点)を探す

力は身体にかかっている方向で示すようにする

剣道の打突の際にも、あらゆる身体のパーツや竹刀の方向に矢印がみえることができれば「最強」となる。この力の方向と身体のパーツの理解を解剖学というまた別の学問と統合することで身体運動学が完成するので道のりは非常に長いことが分かる

最重要の法則:エネルギー保存の法則

エネルギーには、熱エネルギー・電気エネルギー・運動エネルギーなど様々な種類があります。100年前ぐらい前からの実験結果によると、どのエネルギーもほかのエネルギーの種類のエネルギーに「変換」が可能で、どのエネルギー種類でも、物理の世界では損失されずに、どのほかの種類のエネルギーにも変換できることは、長い時間とたくさんの実験結果より、明らかにされている事実で「エネルギー」という概念が確立するまで、100年以上もかかりました。熱、電気、運動と、それぞれまるで違ったエネルギーでも、エネルギーはある種類から他の種類に変換することができ、エネルギー自体はなくならず、無からは生じません。

これをエネルギー保存の法則といいます。エネルギーの種類は変換できますが、想像も、破壊も、できません。

運動での考え方は、運動エネルギーが、静止エネルギーに変換されるということになります。人体の中では熱エネルギーが運動エネルギーに変換されたりしています。また、質量はエネルギーの一つの種類ですし、エネルギー自体が質量を持っています。

私たちが剣道の打突を考える時、人体にどういうエネルギーがどの方向に働いて、どこで変換されるのかという考え方をする必要があるわけです。

重力とは??

自然界をまとめているのは、1強い力(核力。原子核をまとめる力)2電磁力(磁石や電荷の間に働く力)3弱い力(中性子を陽子に変化させる原因となる力)4引力(万有引力)と呼ばれる4つの力の働きであると言われています。万有引力は強さにおいて、一番小さな力になります。1~3は割愛し、これらの力が自然界に存在するので一概に「気」だったりを無視することはできませんが今回は「4引力」について説明します。

モノは、何でも自分の方に引き寄せようとする「性質」を、小さなモノは小さいなりにも持っていますし、大なり小なり持っています。モノは自分の「存在」の「領域」を、宇宙の端までの無限遠にまで主張し続けますが、空間の広がりの性質によって、自分からの距離が離れれば離れるほど、その距離の二乗に反比例して、その主張の強さは、急激に衰えていってしまいます。どんなモノでも、モノが存在するば、そのモノの周りに、ある種の緊張状態がうまれるわけです。これは、ヒトとモノ、ヒトとヒトの関係性にも何かしら働いていますが、重力の話に進みます。

重力というのは、万有引力の例外ではなく、地球上で働く特殊な力ではありません。それは「地球というモノの質量と落ちていくモノの質量が、相互作用をするものを特徴づける量であり、この2つの量がお互いに及ぼしあう力は、この2つの量の関に比例し、その相互の関係は、その2つの距離の平方に反比例する」という漫遊引力の公式になります。要するに、万有引力とは「特殊ではなく、相対的に、全てのモノに存する相互作用と、その相互の関係を示す自然の傾向」であります。重力とは、地球とモノが互いに引き合う引力といえます。

惑星の質量が大きいものほど、引力が大きいということです。太陽と地球との距離、地球と月との距離はお互いが引き合う状況により釣り合っているということです。

身体と重力

カラダは、発生の過程において、地球の重力の影響を織り込み、それに十分適応して進化してきました。その重力の影響を織り込んだ条件と、子となった状態が、身体の部位に生ずると、その部位に関連した部位の機能が低下するようになっています。身体の部位と地球の間に、お互いに引き合おうとする傾向・場が存在します。その場を重力の場と呼び、その場の中で、オトガイに引き合おうとする方向は、身体の部分中心と地球の中心を結ぶ方向、すなわち鉛直方向となります。したがって、このブログでは、重力に逆らわない姿勢・構えというのが剣道において重要な事項ということして考えています。

垂直:二つの直線が互いに90度で交わる時、これらのに直線は直交する、あるいは、互いに垂直であるという

鉛直:重力の方向、つまり、物体を吊り下げたいとの示す方向の直線で水平面を垂直となす

身体の部分は、鉛直に適応とする傾向を有している。

3つの運動法則は絶対の法則

運動の第一法則:すべての物体は、それに力が作用しない限り、静止または直線上の一様な運動を続ける。

私たちの日常生活の体験では、モノを一定の速度でまっすぐに動かすには、一定の力で押すか引くかしなければならないし、力を入れなければ運動は止まってしまう。しかし、滑らかな床では引きずる力が小さくて済むし、氷の上では止まろうと思っても中々止まらない。また、水中では空気中よりもずっと大きい力がいる。剣道場の床の滑らかさによって、左足に加える力もかわってくるだろう。このようなことから「物を一定の速度で真っすぐに動かすのに力が必要なのは、抵抗があるからである。すなわち、抵抗に等しいだけの力がいる」ということになる。これは裏を返せば「物体を一定の速度でまっすぐに動かすのには、抵抗がなければ力を作用させる必要はない」ということになる。これはさらに「力が作用しない時、(抵抗のない)物体は等速直線運動をする」ということになる。これが慣性の法則である。物を真っすぐに一定の速さで動かし続けるには、抵抗に等しい力を前向きに与えなければならない。抵抗より大きい力を与えると、速度はマシ、それより小さな力を与えると速度は減る。前向きの力(推進力)と後向きの力(抵抗)との差が速度の増減に関係する。これを剣道に、運動に応用するには、例えば、踏み込んだり、すり足をした時の前足の入り方によって抵抗の大きさが変わるし、後ろ足の力の押し出し方や、姿勢の状態が前傾か後傾かなどで変わってくることとなる。

物体に外部から力がはたらかないとき、または、はたらいていてもその合力が 0 であるとき、静止している物体は静止し続け、運動している物体はそのまま等速度運動(等速直線運動)を続ける。

運動の第2法則:運動の変化は作用する力に比例し力の向きに起こる

等速直線運動をしている、つまり、何も力が作用していない物体に対してニュートンは、

「力が作用しなければ物体の速度はそのままで変化しない。しかし、力が作用するとその速度が変化する。とすれば、ある物体に加えられた力、もしくは作用する力の大きさは物体の『速度の変化』に比例するのではないだろうか」

この速度の変化を加速度と呼ぶ。加速度というと速度が増加する場合だけを想像し勝ちだが、速度が減少する場合も加速度という。ニュートンの結論によれば、力は加速度に比例する。つまり、力は加速度とお互いに双子であることを見抜いた。

物体に力を加えると、速度を変化させる加速度を発生する。ある加速度(速度の変化の度合い)を生じるための力の大きさは物体によって代償がある。1つの物体については加速力は加速度に比例するのだから、その比例の計数に大小があるわけである。加速力Fの加速度aに対する比(比例係数)mを「慣性の尺度」と考え、mを質量とよぶ、これを一般にはF=amと表し、ニュートンの運動方程式と四生んでいる。質量は重量(体重)とは違う。真空中で物体を離すと下に落ちる。その時の加速度を重力加速度といい、gという文字であらわすことができる。日本ではg=9.8m/s2としてよい。重力の大きさを重さweightといい、質量mの物体の重さをWとすれば、W=mg成立する。これは私たちの身体に常に起こっているといっていい。m=W/gなので、ニュートンの運動方程式に当てはめてみるとa(加速度)=F(加速力)/m(質量=W/g)となる。これはどういうことかというと、体重が大きい方が、より大きな加速力を身体の中で生み出さなければ、初速(速度を変化させる)力を発生させることができないということでもある。まあ、質量が大きければ、より大きな加速力を生むこともこの運動方程式に当てはめるとイメージがつくようになっている。

ヒトの重さのパーツを例に挙げ観ましょう。

下肢の質量は上肢の質量の大雑把に3倍以上の力があるため、人体で最大限の力を発揮するには基本的に下半身の力を上半身に伝えて掌を作用点に力を発揮するイメージとなります。また、上肢は力を発揮できない分、加速度が増します

剣道において、ヒトの上肢(腕)というのは、基本的に力を素早く伝達するものと考えるため、竹刀の握り(力の方向)というのが非常に重要になっていきます。竹刀を強く握らない理由がなんとなく想像できたかと思います。

もう一つ例を挙げてみます。それは竹刀の質量問題です。

質量=竹刀の重さなので、男子ならば

37(440g)→38(480g)→39(510g)

となります。ちなみに重さの上限はありませんので日本刀約1kgに重さを調整するのもありですが、基本的にはみなさん最低限の重さで竹刀を使っているのではないでしょうか。質量が軽いと、加速度が上がり、加速度が上がると、打突も強力にもなります。中学生の440gの竹刀だと、510gの竹刀より簡単に「力」を発揮できるようになります。中学で相手が反応できないスピードを追求している剣道をしていた人は高校・大学と上がるにつれて、質量も重くなるし、加速も落ちるので、更に、力も加わらなくなり有効打突にも届かなくなっていくわけです。中学で結果がでた人が、高校で結果が出ない。逆もあるように、中学・高校・一般の剣道と言うのは性質が変わってくるわけですね。

運動方程式:F(加速力)=a(加速度)×m(質量)を色んな場面であてはめてみる

注意:「速度」の変化は、「方向」の変化でも発生する

力が横から速度を速さはあまり変化せずに方向が変化します。

ここで物理では「速さ」と「速度」を別物と捉えます。「速度」はという言葉はその速さだけではなく、方向を含めたものと考える。なので、奉公のみが変化した場合でも、速度が変化し、加速度が大きくなるといえる。

これは、力が作用すればその方向が動いている方向であろうが、横からであろうが、「速度」が変化するといえるので、方向の変化でも「力は加速度に比例する」という法則が成り立ちます。

この考えを剣道に当てはめると「冴え」の重要性がみえてきます。

竹刀を打突部位に打突した瞬間に、すぐに竹刀を打突部位から離すことにより速度の「方向」をすぐに変化させ加速度を生じさせます。瞬間的なインパクトというものを作っていくわけです。

運動の第3法則:すべての作用に対して反作用が伴い、2つの物体が互いにおよぼしあう作用は常に大きさが等しく逆向きである

ローラースケートを履いた2人Aさん、Bさんがいて、AさんがBさんを押すとAさんが押した向きにBさんが動き出すと同時、AさんはBさんの逆向きに動き出すであろう。また、対になって働くから、ローラースケートを履いたAsannga建物の壁を押すとAさんの手は壁から押し返され逆向きに動き出す。壁を押す力を大きくすると、壁から押し返される力も大きくなって勢いよく動き出す。この時、壁も力を受けるが、建物は地球に固定されているから全体の質量は非常に大きいので、加速度はほとんどゼロである。更に、物理では、物理量が変わらないことを「保存する」というが、衝突前の2つの物体がもっていた運動量の総和と衝突後の2つの物体がもっていた運動量の総和はかわらないことを運動量保存の法則という。

ところで、この「作用・反作用の法則」が剣道において使われるのは「体当たり引き技」だけじゃないのか?と思われるかもしれないが、全くそうではない。まずは、竹刀を打突部位を捉えた時、竹刀が打突部位を捉えたり、または竹刀で受け止められた時でもいいでしょう。打突の力を効率よく作用させるためには、打撃面を固くする必要がある。もし、竹刀が柔らかければ、接触時に竹刀が凹んでしまうので、その分だけ打突部位の打突に対する衝撃力(衝突してから打突部位のスピードがゼロになるまでのスピードvが遅くなり結果として衝突時の運動量mvが小さくなる)が弱まる。このことから、打突する場合、打突部位と竹刀の接触面を硬直させること、剣道でいえば、竹刀が打突部位に当たる瞬間には竹刀のグリップをしっかり握っていなければならない

そして最も重要であり、剣道人のほとんどが全く意識していない力が、「重力」による「地面反力」です

私たちの生活の中で、「重力」に対して同時に「抗力」が常に働いている。私たちの身体に対してもこの重力に対しての抗力(地面反力)が常に働いているのであるが、身体の重心(物体の質量中心)は(だいたい第2仙骨前方に位置する)と、地面と接地している両脚の裏側の接地面の中心点をそれぞれ結ぶことができる。この足裏に重心を置く部分が踵で接地するかつま先で設置するかで地面反力を貰える方向の角度が変わってくる。

重力

この万物の法則である「作用・反作用の法則」をみると、前に進む際に、踵で床を踏む方が、つま先で踏むよりも、地面反力の力のサポートを受けることができるので、歩行や走りにおいても踵をしっかり接地した状態で始動した方が良いことがうかがえる。剣道も例外ではなく、構えた時に左の踵は接地した方が「作用・反作用の法則」の観点からみても、前に出やすいということになる。このように、作用・反作用の法則は、すり足動作、踏み込み動作においても身体が前に推進する働きや経験を照らし合わせる際に、重心と接地した足の接地点を考えることができる。

衝突時の運動量を大きくするため、打突時は竹刀のグリップを固める必要がある

作用・反作用の法則で地面反力を貰える構え・足さばきを目指す

スポーツ動作で頻繁に使われる相対動作


身体のある部分が動作すると、その「反作用」で身体の残りの部分にはその反対の力(運動量)が加わります。例えば、腕を振り上げる動作を行うと、その反作用で腕以外の身体の部分には下向きの力が加わります。ですから、立っている状態から素早くしゃがみ込む動作を行う場合、そのまましゃがみこむよりも腕を素早く振り上げた方が速くしゃがむことができます。
目的とする部分の動きと反対方向の動きを身体の他の部分で行うことで、その反作用によって目的の動きを強くすることが可能なわけです。
他にも「腕を引く」動作によって回し蹴りで強く「蹴り脚を出す」ことができますし、倒れそうになった時に「腕のクルクル」するのも原理は同じです。前に倒れそうになった時、腕を前向きに大きく速く回すと身体を戻すことができます。これは、腕を前向きに回す動作を行うと、その反作用で腕以外の身体の部分に後ろ向きに回転する力が加わるからです。後ろに倒れそうになった場合には反対に腕を後ろに回します。
キックボクシングの場合は、グローブの重さを利用して腕を振ることで、この相対動作をより強く聞かせることができます。回し蹴りの際、蹴った側の腕を強く引くことで強い蹴りを行うことが可能になります。下から蹴り上げる場合は、腕の振りは上から縦に振り下ろす相愛動作が、膝当てで前方に押し込むように蹴る場合は、上半身を後方にひくことで相対の動作が有効になっていきます。
中段の膝蹴りや前下痢のように前方に突き刺す蹴りの場合は、腕を引いて上体を後方に引く相対動作が有効になります。上体を倒して後方に引くほどその反作用で膝が前方に伸びて強く突き刺さります。
上から下に膝を突き上げる上段の膝蹴りの場合は上を振り下ろす相対の動作が有効になっていきます。
またおじぎりをするようにして頭を下げる動きも相対動作として有効です。
右のみドルキックを蹴って相手のガードを下げさせた次の瞬間に右のパンチをたたきこむというテクニックがあります。三ドルキックを蹴った「足を後方に引く」動作の反作用を「前方に打つパンチ」の前向き運動に利用しているのです。このコンビネーションを使う時は右ミドルキックからガードの下がった顔面にすぐに右のパンチを出すというだけではなく、蹴った右足を強く引きながらその反動を使って右パンチを出すようにするとよいでしょう。
注意したいのは、相対の動きは身体の一部が目的とする動きと逆方向に動作して、その反作用で目的の動作を強くするテクニックです。身体全体を目的の動きと逆向きに動かすわけではありませんので間違えないように注意しましょう。身体全体の動きは目的の部分の動きと「同方向」に動かします。
たとえば、中段の膝蹴りの場合、腕と上半身を後ろ向きに引きますが、後ろに下がりながら膝を蹴るわけではありません。身体全体の動きは地面を蹴って前向きに運動しています。
剣道でも応用するなら、竹刀を振り上げる時、下半身が下に潜り込むイメージで打突した方が、竹刀の振り上げが速くなりますし、身体がスムーズになりますし、起こりが見えにくい打突になります。
このように相対動作は自然に行っているものですが、この動きを意識して積極的に強く行うことで剣道の向上のヒントにつながることでしょう。

てこの原理

「てこの原理」とは、ある動かない視点から離れたところに小さな力を作用させると、支点に近い所で大きな力が作用するというものです。力は支点からの距離に反比例します。日常でもよく使われるこの原理ですが、剣道の竹刀の持つ手も関係します。動かさない手を左手にし、右手を力点にすると、竹刀を引っ張ったような打突になりますが、このような打突だと「てこの原理」的には、「左手ー竹刀の物打ち」の距離感となるため、視点からの距離が大きくなり力が小さくなります。対して、右手を支点にし、左手を力点にした打突を行うと、「右手ー竹刀の物打ち」の距離感は「左手ー竹刀の物打ち」の距離感よりも小さくなるので、力を大きく出すことができます。つまり、右手を支点にするということとは「右手を動かさない」ということが剣道では重要になるわけです。

打突時の打撃力は竹刀の質量(重さ)が大きく、なおかつ回転軸からの距離が大きいほど、その力が増します。短い小刀で打つよりも、長い大刀で打つ方が打撃力は大きくなります。そうすると、出来るだけ大きな打撃力を打突の瞬間には出来るだけ速い回転力に変えてゆくのが、威力のある打突を生み出す方法であるということが分かると思います。

まとめ

このように運動方程式は万物の法則であり、例外はない。剣道の動作より以前の「モノの理」を学ぶことによって、剣道の時に、どのような場面でどのように動けば合理的なのかを理解することができる。運動方程式はその一歩となる。また物理学がスポーツ科学→剣道と繋がっているという意味で、勉学をすることの強さも実感できたかと思います。また、物理学は数学(関数)にも繋がりますので、学問は1つ1つ繋がって使えるんだなぁという実感にもなると思います。

http://www.iwakura.ed.jp/nihongo/rika%20s6-1.pdf