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基礎動作②踏み込み足:究極の初動を手に入れる「右膝の抜き」と「左股関節の外旋」

踏み込み足についての記事です。

・足幅の広さにおいての飛距離の相違

・身体を前にさばくための推進力の動力源である「左股関節の外旋力」

・究極の右足の入りを習得する「右膝の抜き」

初心者はこちらの動画でOK

踏み込んだ時に、手と足があっていない方

まず、踏み込み足のやり方がさっぱり分からない人はこちらの動画でOKです。今回は、更に極意のレベルまで踏み込み足レベルをアップしていきたいと思います

打突前の足幅によって打突の距離が変わる

「科学的剣道上達法」から引用

踏み込みの足幅が広ければ広いほど、実はより早い打突を打つ事ができます。ただし、その分、遠くに飛べないので、遠間から足幅を広くとった打突をするとかなり遅くなるという結果が出ています。

近間・一足一刀の間からの打突に関しては通常の足幅の方が広い足幅よりも遅くなる。

実は、足幅を広くとった方が、近い間合いでは早く打てる

打突の際は、右足はすり足と同じくらいでよい

初心者によくあるのは、遠間から打つ打突の際に、大きく足幅をとることである。しかし、打突と同時に踏み込み足が床につくと考えると、足幅を広くとると打突が遅くなることは当然であるし、踏み込み足が自分の胴体より前に出てしまうと、右足が胴体ごと引っ張らないといけないという打突後も遅い最悪な結果となる。左股関節の推進力を原則として使用したいので、右足は胴体よりも前に出ない程度に前に出したい。そうなると、すり足程度の足幅になる。これにより、胴体が左足を引っ張るのみですむので、そのまま、胴体を中心に身体を前に裁けるようになる。

すり足程度の足幅で打突すること

初心者がこれを読むと「それは無理です」との返答があるであろう。しかし、手の内を身につければ、自然とそんなに近間に入らなくても打突が届くことが確認できる。打突の際、左足は右足よりも前に出ても構わない。

そもそも、すり足は、相手の間合いを測るために使う足である。打突の瞬間はその理由がなくなるし、ヒトは右足を前に出したら左足を前に出すという歩行の原則があるため、打突後の素早いすり足よりもぶっちゃけ小さい足幅で歩み足を使った方が早い。ドウに関しては基本的に踏み込まないため、むしろ歩み足を推奨されている。

あと、重要なポイントとして、熟練者のメンは、体重を打突に伝えるため若干前傾になる。届かない分は身体の上体を前傾にして打突する。そして、すぐに左足を引き付けて前方に倒れる身体をカバーすることになる。

飛び込みメンの打突は、上体が若干前傾になる

左股関節の外旋が身体を前にさばく

続いて、上記の「左重心」の記事を読んでください。剣道でよくいわれる『左腰』、つまり、「左股関節は前方への動きを生み出し、右股関節は後方への動きを生み出す」という股関節の働き。この原則から、右足は軽く浮かせて前足を裁くことになる。左重心にするには、股関節の外旋力がかかっている方に身体は自然と重心が寄る話をしました。それと一致するように、このマガジンでの構えは、左足の足先と膝は15~30度ほど外旋させます。さらに股関節を外旋させるために肛門を締めていきます。

左足の足先と膝は15~30度外旋させた構えと肛門の締めは、左股関節の外旋と左重心の構えを作るため

逆に打突した時に両脚を内側に絞って打突すると、毎日それで稽古している人は身体が慣れてるから気づかないかもしれませんが、太ももに余計な力が加わり、身体にブレーキがかかっているところを強引に前に押した体さばきになります。よって、足の疲労も大きくなります。

また、「左股関節は前方への動きを生み出し、右股関節は後方への動きを生み出す」の原則から、踏み込んだ足の方向で身体が前に行くか止まるかわかる。

つまり、メン打ちにしても、右にゆずるようなメンを打った場合、右足が外旋する可能性があるので、身体が止まってしまう。メンを打って抜けたい場合は相手に向かっていく必要がある。

コテ打ちにしても踏み込む際に、右方向に踏み込めば、右股関節の外旋力が働くので身体が止まる。左方向に踏み込んでも、右股関節の内旋と同時に右股関節の外旋の力も働く(股関節には内旋の力を働かせるとそれを元の状態に戻そうとして外旋の力も働く)。そのほか、コテの打突は、メンよりも手前にあるため、その場での打突もあるため、身体を前に出す力を出しにくい

というわけで、左足と左重心の構えによる左股関節の外旋力を使って身体を前に裁くというのを紹介しました。続いて、もう一つ、右足の入る時にワンランクアップした技術を紹介します。

腰が何故打突につながるのか?

身体は基本的に「柔構造」となっており、ある動作が動けばそれに連動して動くようになります、「力」とは物質と物質の接触に発生し、「エネルギー」は、消失するのではなく変換されます(エネルギー保存の法則)
剣道では、左足の踏み込み→下肢による腰の回転(左腰が前に出る)→体幹の回転(左肩が前に出る)→上肢の振り(左拳が前に出る)というフローチャーを経て剣道では「腰で打て」と言われるようになります。
野球の投球で言うと、左投手の投動作と剣道の動作が類似しています。
よく手だけで打つと指摘されている方は上肢の振り→体幹の回転→骨盤の回転と連鎖の順番が逆になっているのです。打突した時にやや遅れて軸足の左足を引きずるような格好の打突になります。

強く踏み込むと打突がよくなる理由(右足の内股の締め)

左足を外に捻りながら(左骨盤の外旋)をしながら蹴りだされた骨盤は右回転しながら前方に押し出されます。続いて右足を踏み込みます。この踏み込みによって骨盤の右端にブレーキがかかるので、さらに骨盤に右回転が掛かります。前方に並進運動する骨盤の右端にブレーキがかかることで右回りの回転力が生じるからです。最終的に踏み込んだ右足の踏ん張りによって骨盤の回転運動にブレーキをかけます。これを一般的に「壁」といいます。
以上によって骨盤を強く速く回してきます。「体重を左足から左足に乗せ換えて、骨盤を瞬間的に強く回転させる」と言い換えられます。
この踏み込みにより一瞬、ブレーキを掛けることで唐竿効果を発生させます。これは唐竿という農具の使い方と同じ仕組みでおこることから呼ばれています。手に持っている棒を回して止めることで先端側の棒を縦回転させていきます。腰の回転によってその上の体感も続いて回転運動が起こり、これによって体幹の先の上腕は前方へと引っ張られます。そして、右足で踏ん張った「壁」で腰の回転にブレーキを掛けると、続いてその上の体幹の回転にもブレーキがかかります。これによって体幹の先の上腕に「唐竿効果」が働き、前方に振り出される回転力が与えられます。
感覚的には、強く回した腰を踏み込み足で踏ん張って「瞬間的に」止めることで「腕が前に飛び出しそうになる」動きが打突の流れとなります。剣道の打突は基本「押し斬り」なので、打突の瞬間に右手で押し切ることになりますので、結果的に踏み込むことで強い打突も行うことができます。
ただし、剣道の場合は、意識的には終始左重心になりますので、打突後は左重心に戻る形にはなります。左股関節の外旋によって骨盤が回転する勢いに対して踏み込む瞬間だけ右足でブレーキを締めることになりますので、しっかりと左重心の構えを意識しないと身体にブレーキがかかったままで今度は身体が前に裁かれないので注意が必要です。意識的には左重心のまま右足は強く踏み込む意識程度でよいのではないかとおもいます。

トップ剣道の人たちが無意識でやってる技術「右膝を抜く」を習得せよ

さて、続いて「右膝を抜く」という技術です。前回の「すり足」でも紹介しましたが、ちょっと難しすぎました。しかし、今回の足を前に出すほうの力を抜く、つまり、「右膝を抜く」という技術は、比較的難しくないですし、右足というのは基本的に膝を曲げている状態で剣道は構えていると思いますので、左重心のかかっている左足よりは、習得しやすく、効果もわかりやすいかなと思います。右の力を急激に抜くことで、急激な上体の落下を受け止めることで、発生する「地面反力」を推進力として加える技術。

まずは、剣道の打突でも左足より、右膝を抜いてみましょう。こちらは、左膝を抜くよりも難易度が低く、万人にも効果のある抜きだと思います。右足で踏み込むときに「右膝を抜く」技術を身につけていきましょう

ポイント1:階段を下りる感覚を思い出す

階段を降りる時は、必ず、片足の力が抜けます。これを体感してもらって、この「抜く」という感覚を習得してください。

ポイント2:足関節の背屈

打突の際、右足を前に出すときに、足先を床の方向に向けないこと。足先を床に向けると実は後方の左足に重心がシフトされてしまう感覚があると思います。これは、剣道の踏み込み足の指示通りでOKです。床に対して低く浮遊したままトンと足を踏み込む。ただし、足首を強く背屈させようとして外反すると、前脛骨筋は背屈状態が正しい使い方となります。

ポイント3:足の指を底屈させる

足をちゃんと背屈できるように足の指を底屈させます。足指で床をつまむ感覚です。逆に足趾球の部分を伸ばす、つまり、足指をぱーっと広げますと、伸展することになるのですが、足趾を伸展させると、足首が外反します。内反、背屈、外反と足首の曲げ方があります

ポイント4:右股関節も抜く・右足を内側に絞らない

膝だけに意識がいってしまうとかえって力が抜けにくいので、いっそのこと右股関節の力もふっと抜いてあげると、右膝の力も一緒に抜ける感覚になります。あと、逆に右足を内側に絞ってしまうと、逆に膝の力(膝窩筋)も全く力が抜けませんので、右足は真っすぐもいいんですけど、内側には絞らないようにしてみてください

いかがでしょうか。いままでの稽古ですと、右足を強く踏み込むために右足に力を入れて前に出していたかもしれませんが、逆に力を抜いて足を踏み込むと思いの外、身体の重心がふっと右足の方が落ちていく感じで足がスムーズにいくと思います。

これでもうまくいかない場合の処方箋

右膝を抜く技術は「地面反力」を使って前に出る技術なので、姿勢が正しくないと正しい方向に前に出られません。そこで、身体が水平にあるかをチェックしましょう

・正対位・半対位の構えでも、基本的に両肩は水平

・体幹部を先に動かさないためにも、肩関節と股関節の位置をしっかり把握する