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「筋力・柔軟性」と、剣道の身体の操作に関して、もう一つ考えなければならない盲点「エネルギーの通り道(神経回路・空間・関節)」

天才と凡人の違いはエネルギーの通り方に問題がある。そこに気が付かないといつまでも「稽古量」「筋肉量」「柔軟性」「根性」などと、「エネルギー効率」という問題点にたどり着くことができない。この記事では「エネルギー」について、説明し、凡人と天才の違いのヒントを提供する

仕事

人体の身体運動は、動的筋収縮の連続として発現する。動的収縮をする時は、筋は必ずある筋力を発揮しながら動き、その結果力学の法則に従って(動いた距離)×(筋力)という仕事をする。この仕事が、物体を投射する時は物体の重心の、自分が移動する場合は自分自身の重心を持つエネルギーとなる。このエネルギーは、筋におけるATP分解によって放出される科学的エネルギーの内から、熱となって放散する者と重心の移動に関係しない体肢の運動に要するものを除いたものを示す。この重心の外部に対するエネルギーを外的仕事、重心の移動に関係しないものを内的仕事と呼ぶ。また短縮性収縮による仕事をポジティブワーク、身長性収縮による仕事をネガティブワークとよぶ。前者は、筋が外力に抗して仕事をする場合であり、後者では筋が外力によって仕事をされる。仕事量の絶対値が等しければ、生体の消費するエネルギーは、ネガティブワークの方がはるかに少なくて済む。坂を上るより下る方が疲れないのはそのためとなる。

パワー

種々のスポーツの場合では、なるべく短時間に必要なエネルギーを発揮しなければならないことがしばしばである。そこで、仕事量をその仕事をするのに要した時間で割って、単位時間当たりのエネルギー発生量の指標とする。これを仕事率またはパワーという。力ー速度関係から、力×速度=パワーとなる。男女とも、最大パワーは筋力及び短縮速度が、最大値の35%付近で発揮されている。パワーは本来、力学用語であるが、俗に「瞬発力」ともいわれるように、人体の能力として扱われることが多く、スピードの要因が重視されている。金子は「最大努力の下で(筋活動により)爆発的に発揮される機械的パワーないし短時間内に多くの機械的エネルギーを発揮する能力」として「筋パワー」という言葉を用いている。これらに対し、人体の発揮する全エネルギーを酸素消費量によって測定して、運動の持続能力を表すことが広く行われている。運動が長くなれば、1分当たりの酸素消費量はそのまま1分当たりのエネルギー発生量を表す。これを有酸素的パワーとよぶ。これは、有機的過程によって生み出されるエネルギーである。短い運動では、無機的過程が主たるエネルギー源であり、これを無酸素パワーと呼ぶ、上述の筋パワーは後者に属する。

天才と凡人の違いはエネルギーの通り方に問題がある

エネルギーという力の伝達、いわば、エネルギーの通り道というのに目を向けないため、うまくいかないことの理由を「筋力が足りない」「柔軟性が低い」と考えがちである。たしかに、ある程度はその部分を補うことで解決はできるが、その考え方だけだと、無理なトレーニングを重ねたり、結果、怪我や故障を生んでしまう可能性があります。ところで、全身には約200の骨があり、骨は関節を支点に動くようになっています。関節の数は約365個。そして、骨を動かすのは筋肉で、約600あり、その一つ一つも単に一つの塊ではなく、細い筋線維が束になっています。その1本1本の筋線維にそれぞれ神経が通っていて、各々働いたり休んだりしているわけです。ただ、これだけだと実用的ではないので、視点を変えていきます。それは「筋肉が骨を動かすのではなく、筋肉は骨の動きを邪魔しないようにする」ということです。骨が筋肉に邪魔されずに動けるようになると、自然と、エネルギーの通り道である流れが途中で途切れたり、余計な所に流れることなくスムーズに目的地までたどり着けます。また、流せるエネルギーの量も増えるわけです。すると、力まなくなる、発揮できる力が強くなることになります。では、骨が筋肉に邪魔されずに動けるようにするにはどうしたらいいかそれは、身体の中の「すきま」を潰さないようにすることになります。すきまとは、関節(縫合部も含めて)です。骨と骨の間、つなぎ目という隙間です。隣り合った筋肉同士の間、靭帯同士、靭帯と骨の間、筋線維同士、内臓、気道、など色々あります。このように、「すきま」とは、身体を構成する組織と組織がそれぞれ独立して動くのに必要なスペースだと考えてください。隣接する筋肉がくっついてしまうとお互いの動きを邪魔します。すると、本来使わなくてよい筋肉が連動して収縮させてしまうこともあるわけです。「すきま」を潰す行為が、力み・緊張に繋がります。

動かす筋収縮によっては、骨を動き=人体操作を邪魔している

エネルギーの通り道を変えるために

動画で一流剣士の試合動画やコツの動画をみて真似して実践すると、たしかに短期的にうまくなったり、ある程度上達はするのですが、一流のレベルまでには中々到達しません。このことから見て盗むことは不可能と考えて頂きたい。そこにはいい動きを見た目ではなく、動作原理と骨格構造との関係や体感型ワークなどで、見た目の印象と照らし合わせ・検証作業をしていくことが重要で、それが本来目指すべき稽古なのです。そのために、身体の構造に沿い、構造を生かして動くことを学ぶ必要がありますし、更に、第一歩として、歩き方はもちろん、立つという行為、手を握ったり開いたりするという行為など、こんな当たり前のことをあらためて学習する必要があるわけです。根本的な身体の使い方を変えるといった一見遠回りのようでいて、誰もやってない最短で上達する方法なわけです。

根本的な身体の使い方が最短の上達となる

考えて動く動作と無意識動作では動かす神経回路が違う

エネルギーの通路構築とは、身体の情報量、神経回路の精度・密度上げる練習を行うとどうしても静かでゆっくりな動きになり勝ちで、パワーやスピードを上げた時に、ついこれまでの身体の使い方・神経回路に戻ってしまうことでしょう。稽古を行う際、打突そのものの稽古を行う際は上手だとしても、試合になると使えなくなることもざらです。静かでゆっくりな動作では頭、脳を働かせられる、つまり、考えながら行う動作というのは「大脳」の領域となります。この「大脳」を使うことでこれまでの神経回路を使わないようにして、新しい神経回路を作ろうとしているわけです。これで動きを修正したとしてもそれはあくまでゆっくりな動作の時の回路なわけです。パワーやスピードのある動作ではそれと異なる「小脳」の領域からの神経回路になります。「小脳」は、癖や習慣といった領域であり、考えずに身体を動かすための脳からの指令なのです。

考えて行う動作「大脳」からの神経回路と無意識での動作「小脳」からの神経回路が違うため、パワーやスピードを上げると考えて行う動作ができなくなるパターンが常考である。

そこで、動作修正の際のトレーニング方法として「脳を騙す」という方法が今回提唱するトレーニング方法となります。従来の稽古にこの「脳を騙す」アクションを取り入れてみましょう。

精度の高い動きを激しい動きに反映させる一人稽古の剣道トレーニング

静かでゆっくりな動作の練習時に、「これは実はスピードがあって力強い動きをしているんだ」という意識付けを行うのです。これは、ある意味「スピードがあって力強い動きを、スローモーションで練習する」ともいえます。これは太極拳に近い練習方法ですね。

そして、この意識の持ち方での練習が、ただのイメージ・妄想になってしまわないように、先ほどのスローモーションとは逆に、実際に早く、スピードを上げて動き、そのときに、どれだけゆっくりな動きとして感じられるか?を大事にしていきます。動きが速いからと言って、意識や感覚が雑になってはいけないということです。むしろ、より繊細にシビアにという気持ちが必要になります。

もう一つランクアップした方法もあります。それは、その動作の最後の瞬間だけ力を発揮すべくスピードを上げる練習です。動作によっては、最後の瞬間というよりも、スピードがマックスになる瞬間である必要があります。このとき重要なことは、そのスピードを上げる際に、あくまで動きの流れの中で行うということです。どうしても欲が出て、急に違うパワーでやってしまいがちですが、流れの中ではうまくできないと感じるならば、変な癖がついてしまうので、無理にやるよりも、やらないほうがいいです。コツとしては、弓がパンパンに張られているような状態にします。そして、パっと矢が放たれたようにするのです。更に動けるようになってきたら、最初だけ瞬間的に力とスピードを上げ、すぐさま途切れることなく流れの中でゆっくりと下動きにすることが有効なこともあります。

ゾーンが構築される

このような練習を積み重ねると、当人の中では非常に繊細な動作だという感覚になり、また、はたからは速いスピードに見える動作も、当人の中ではひじょうにゆっくりとした時間が流れている感覚になります。ゾーンとかフローは日常的な意識の在り方ではなく、瞑想状態でありながら活発に活動している状態です。今回紹介した練習はゾーンやフローに入りやすくなるための練習でもあります。この練習によって、自分が頑張るのではなく、自分を通してエネルギーが流れている状態を作っていくわけです。

神経回路の精度・密度を高めるトレーニング「セルフ整体運動」

セルフ整体運動とは、自分自身で整体していくように身体を動かすことであり、自分で自分の身体のどこかに触れながら、あるいは、圧をかけながらその箇所に関わる部位を動かすものです。人は、刺激を加えるだけで神経回路の精度・密度が上がるわけです。やることは簡単なんですけど、面倒なわけです。なので、出来れば、「解剖学」の勉強も必要になります。例えば、大転子に触りながら腰を回す、といったものがあげられるように、筋肉と筋肉の先目や関節のくぼみ、骨自体といったところに触れながら身体を動かすものです。

触れられることでその箇所が目覚める。温まる。触れ方・圧のかけ方がわかる。触れている箇所より先をイメージする力、触れて感じるという力を高められる。より暖まるようにと触れられている側が探りながら動くことで微細な動きへの感度が高まる

そして、触れて、動くと、思わぬところで筋肉に力を入れていることや、左右の違いなどもはっきりと判るため、動きを修正しやすく、どう意識すると動体が反応するのか、何が起きるのかを感じ取りながら動くことになるので結果的に全身の神経を総動員させることになる。

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