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手紙社リストVOL.14“本”編「花田菜々子が選ぶ『オノマトペとことばの音を楽しむための本』10冊」
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手紙社リストVOL.14“本”編「花田菜々子が選ぶ『オノマトペとことばの音を楽しむための本』10冊」

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あなたの人生をきっと豊かにする手紙社リスト。今月の本部門のテーマは、「オノマトペとことばの音を楽しむための本」。その“読むべき10冊”を選ぶのは、ブックコンシェルジュや書店の店長として読書愛を注ぎつつ、私小説も人気を博している花田菜々子さん。「雰囲気こそ大事なのでは?」という花田さんが雰囲気で(いい意味で!)選ぶ、ジャンルに縛られない10冊をお届けします。

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1.『オノマトペ 擬音語・擬態語の世界』角川ソフィア文庫
著・文/小野正弘,発行/KADOKAWA

まずはタイトルもそのものズバリですが、「ことば」についてじっくり考えたい、味わいたいという人におすすめしたいド定番的な1冊。ふだん考えてもみなかったようなことが本格的かつ楽しく書かれていて知的好奇心が満たされます。読んだ後は世界の見え方がちょっと変わって、まわりの人たちの会話さえ研究視点で耳をすませてしまいそう。

2.『ふわとろ SIZZLE WORD「おいしい」言葉の使い方』
編/B・M・FTことばラボ ,発行/B・M・FT出版部

擬音語や擬態語は特に「食べもの」と相性がいいのか、食欲をそそるワードが日々開発されているような気がします。タイトルにもなっている「ふわとろ」はオムライスなんかに多様されていますし、「もちもち」「ぷるぷる」とか、街でもたくさん採取できそう。そんな「おいしい」言葉を集めて分析・研究した1冊です。

3.『ジュージュー』文春文庫
著・文/よしもとばなな,発行/文藝春秋

オノマトペがそのままタイトルになっているめずらしい小説。ジュージューという名のステーキ屋さんを舞台に、少し特別な家族の形とゆっくり進む恋愛を描いたやさしい物語です。死や喪失をやさしく包むようなばななさんの小説は少し疲れた日々にもすっと溶け込んでくるから不思議。読み終えて元気が出たらステーキを食べたくなるかも!

4.『ごはんぐるり』文春文庫
著・文/西 加奈子,発行/文藝春秋

食べものまわりの本が続きますが、こちらも決して「ごはんのこと」ではなく「ごはんぐるり」というタイトルが効いた1冊。西加奈子さんが食についてあれこれと思いをめぐらせて綴ったエッセイ集で、ゲラゲラ笑えるものからグッとくるものまで多種多様、縦横無尽。読んだ後は幸せな気持ちになれること間違いなしです。

5.『たんぽるぽる』短歌研究文庫
著/雪舟えま,発行/短歌研究社

たんぽるぽる、と書かれていてもそれは絶対たんぽぽのことだとわかるし、一度聞いたら忘れられないタイトル。一部で熱狂的に愛される(というか、私も大好き)歌人、雪舟えまさんのデビュー歌集です。オノマトペに限らず、全般にわたってことばが天才的な雪舟さんのワンダーランドを堪能してほしい。

6.「やまなし」(収録・『新編風の又三郎』新潮文庫)
著/宮沢賢治,発行/新潮社

オノマトペで思い出した昔の物語をふたつほど。まずは教科書でやったという人も多いこちら。「クラムボンはかぷかぷわらったよ」という一文、私も小学校の教科書で初めて知り、「クラムボンってなんだよ!笑」的な感想で終わってしまっていたのですが、大人になって読んだら全然わかる。わかるし、いいなあ、こんなふうに水面をずっと眺める生活がしたい……と都会に疲れた大人そのままの感想しか出てきませんでした。もっと生活にかぷかぷが必要です。

7.「トカトントン」(収録・『ヴィヨンの妻』新潮文庫)
著/太宰 治,発行/新潮社

これもオノマトペを語るときには欠かせない名作でしょう。やる気に満ちているときにきまってどこからか「トカトントン」という音が聞こえ、それを聞くとやる気が奪われてしまう……。これをたとえば【無気力の声】などと名付けていたらこの小説はまったくつまらない、記憶に残らないものになっていたはず。こんなふうに、たまには少し昔の作家の短編小説を読んでみるのも新鮮で面白いです。

8.『パン ふわふわ』講談社の幼児えほん
著・文/彦坂有紀、もりといずみ,発行/講談社

オノマトペを扱った絵本は多く、安西水丸さんの「がたんごとんがたんごとん」やまついのりこさんの「じゃあじゃあびりびり」などは今も多くの乳幼児の読者から愛されています。その中でも半分自分のエゴで(汗)出産祝いなどで多々プレゼントしてきたのがこの本。彦坂木版工房の二人によるパン版画の絵本です。あまりにも繊細なパンの描写にうっとり。赤ちゃんがいなくても手元に置いておきたい1冊なんです。

9.『オノマトペでピンとくる! ひらめき配色図鑑
編/FLAMINGO STUDIO INC.,発行/東京書籍

本屋さんで見かけて思わず夢中で立ち読みしてしまった1冊。「ワクワク」「ほっこり」など本の装丁や映画のフライヤーなどをサンプルにしながら、そのオノマトペをいかにデザインに落とし込んでいるかがていねいに解説されていて「うわー……言われてみればたしかに……これはすごい!!」の連続! デザインの仕事に関わる人にはもちろん、ただの本好きや装丁好きの人もぜひ見てみてほしいデザイン書です。

10.『水中の哲学者たち
著・文/永井玲衣,発行/晶文社

最近要注目の若き哲学者、永井玲衣さんの哲学エッセイ。内容もとても面白くてぐいぐい引き込まれるのだけど、内容だけじゃなくてオノマトペが最高な言葉づかいにも注目して読んでみてほしい。問いがしゅわしゅわして、ゴポゴポと思考の海に潜る。あるいはサルトルの哲学書を開くとそこには「存在とはばばばばばびぶぶべぼ(中略)わかちこわかちこ」と書かれていて著者は本を閉じてしまう。遥か彼方にありそうな哲学を一気に身体に近づけてしまうオノマトペの使い方がすごい! と脳内がドンドコドンドコしてしまう1冊です。

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選者:花田菜々子
流浪の書店員。あちこちの書店を渡り歩き、2018年から2022年2月まで「HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE」で店長をつとめる。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』など。



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