渋谷・のんべい横丁への挑み方 ――「呑み屋は女将が9割」第2回
■「流しをやっていた頃のサブちゃん」
渋谷駅から徒歩数分の線路わきに、小さな呑み屋ばかりが集まる「のんべい横丁」がある。
若い頃の北島三郎は、ギターを抱えてこのあたりを「流し」でまわり、酔客に歌声を披露していたのだ。
だが今では、その歴史ゆえに、どこか足を踏み入れにくい雰囲気がある「のんべい横丁」。興味はあるけど勝手がわからないという人のために、ここに簡単な「初めての『のんべい横丁』」マニュアルをまとめておこう。
なお、30数軒の店が並ぶ「のんべい横丁」には、バーのような若者向けの店も数軒あるが、ここでは特に、年齢を重ねた女将さんが1人で店を切り盛りしている古いお店に行くことを目的とする。
■「敷居の高い店」は、(たぶん)もうない
初めてかの地を訪れる者にとって、おそらく最大の関門は「どの店に入ればいいのか」ということだろう。
実際、「のんべい横丁」には数年前まで客を選ぶ店があったようだ。いわゆる「一見さんお断り」の店で、常連客の紹介がないと入れなかった。しかし時代は変わり、そんなお店も女将の代替わりや閉店によって、(自分の知る限りではあるけれど)なくなった。
だから「のんべい横丁」で気になるお店を見つけたら、迷うことなく飛びこんで構わない。店主や常連客から怪訝そうな顔で見られることはないはずだ。
それでも不安だというのであれば、のれんをくぐった時にこう言えばよい。
「初めてなんですが、いいですか?」
これは、すでに席についている他の客への宣言にもなり、その人が常連であれば日本酒の1杯もおごってもらえるかも知れないし、初めての客であれば友だちになれるかも知れない。
万が一、入店を断られるようなことがあっても、まぁそんなものかと別の店に行けばいいだけの話だ。
■酌み交わすのは友だちではなく「女将」
では、気をつけるべきことは何かというと、やはり「1人か2人で行くこと」だろう。
「のんべい横丁」のなかでも古いお店は、たいてい女将さんが1人で切り盛りしている。そこへ友だちを何人も誘って行けば、女将さんに威圧感を与えることになりかねないからだ。
それ以前の問題として、そもそも「のんべい横丁」のお店は、5人も客が入ればいっぱいになるところが多いので、何人も連れだって行くと、「店に入れない」という理由で断られる可能性が高くなる。
ここは、友だち同士で語らうための場ではなく、「客と女将が1対1対で呑んでいる構図」が、客の分だけある場所だと考えるといいだろう。
他の客も、女性を含めほとんどが1人または2人で呑みに来ているので、できれば勇気をだして1人で挑戦したい。
■そして、お金のこと
齢を経た女将さんがいるような古いお店では、きっと料理も酒も高いのでは……と考えてしまう人もいるかも知れない。というか、自分の場合はそうだった。
しかし、これも心配するほどではない。1人で呑むのであれば、3000円~4000円もあれば充分。それに「のんべい横丁」では、横丁として「はしご酒」を推奨しているので、ちょっと高そうだなとか、あまり口に合わないなと思えば、「じゃ!」とお会計を済ませて店を出てしまえばいい。
それが「無粋だ」と言う人など、「のんべい横丁」にはきっといない。
おまけ:トイレについて
「のんべい横丁」には横丁の両端に共同トイレがあるが、カギがかかっていて、そのカギは各お店の大将やマスター、女将が管理している。トイレに行く際には、女将からカギを借りることを忘れずに。
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