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早合点の朝

電車の扉が閉まるとき、その音はいつもと同じで、でも今日の私の気持ちは少し違った。草野球の試合のために早起きして、普段より一本早い電車に飛び乗ったのだ。自宅から最寄り駅までの1時間30分の距離は、いつもの通勤とはまた異なる種類の期待で胸が躍る。

多摩川河川敷の球場へ向かう途中、私は予定よりも1時間も早く到着してしまった。あたりはまだ静かで、開店準備を始める店のシャッターが少しずつ上がる音が聞こえる。球場への道は静かで、時間を潰すための場所を探すのは一苦労だ。オフィス街ということもあり、寄り道できる場所がほとんどない。仕方なく近くのコンビニでおにぎりとポカリスエットを購入し、近くの公園のベンチで朝食をとることにした。

ベンチに座り、ぼんやりと公園を眺めながら、私はふと試合のことを思い浮かべる。どんなプレイができるだろうかと想像するとわくわくしてくる。しかし、現実はいつも想像とは少し異なるものだ。草野球の試合に早く来過ぎたことによる空白の時間は、静かで少し寂しいものだった。

時間を確認すると、試合開始まであと30分。球場へ向かう。ここはもう熟知している場所で、訪れるたびにいろいろな記憶が蘇る。しかし、球場にはまだ誰も来ていない。周りを見渡すと、その静けさがいつになく重くのしかかってくる。暑さも相まって、待つ時間が長く感じられた。

もう15分、ただひたすらに待つことにした。しかし、15分が経過しても誰一人として現れない。不安に駆られてスマートフォンでメールを確認すると、そこには予想外の事実が。来るべきだった草野球の日は、実は来週だったのだ。

この誤解は、ただの単なる早合点だった。誰も来ない球場で、私は苦笑いを浮かべるしかなかった。しかし、これもまた良い思い出になるだろうと自分を慰める。今日は予期せぬ休日となったわけだが、何をするべきか、今の私には無限の可能性が広がっているようにも感じられた。時には間違いも、新たな一日をもたらすことがあるのだから。

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