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目隠し用フェンス狂騒曲 - 日本の商習慣に頭を抱える外国人夫

我が家は川に面して建っており、ちょうど歩行者用の橋の袂に位置する。橋をこちら側に渡ってくる人々から我が家、特に庭、は丸見えになる状態だ。あちらから丸見えならこちらから向こうも丸見えなので人間観察ができて楽しいとも言える。庭仕事をしていると通りかがりの人が外国人の夫を珍しがって声をかけてくることが多い。そんなプラス面もあるのだが、引っ越してきた当初からいずれ目隠し用のフェンスを建てたいねとは言い続けてきた。

夫が仲良くしている近所の世話好き爺さんに相談したところ、「僕の知り合いがそういう事やってるから任せなさい。とりあえずは見積もりを出させるから。」と言われた。それが4ヶ月前の話。


その後その話は全く進まず。そろそろ本当に目隠し用フェンスが欲しいと思うようになった夫は今までも色々と家の周りの作業をお願いしたことある便利屋さんにフェンスに使う素材や希望の寸法などについて数日前から相談し始めた。

そこに突然昨日の朝ピンポーンと世話好き爺さんから紹介された者ですと建設業者の男性二人組が現れた。
「まずはフェンスのお見積もりをお出ししますので寸法を測らせてください。」
喋っているのは世話好き爺さんの直接の知り合いの業者さんで、もう一人はその業者さんの下請けらしかった。
夫に事情を説明すると、とりあえず見積もりを出してもらおうという事になった。

「じゃあ、見積もりができたらAさん(世話好き爺さん)にお渡ししますね。」
という業者さんの言葉に夫は反応し
「見積もりは直接僕に出して欲しい。」
と言い出した。
フェンスを設置する場所の寸法などを確認している下請けの業者さんに向かって夫は
"I like you.  I want to do business directly with you.(君のことが気に入った。君と直接取引がしたい)"
なんて言い出す始末。
「いや、一応Aさんにご紹介いただいたのでAさんを通さないわけにはいかないんです。」
と業者さんは困っていた。

私は私で忘れた頃に業者さんを送り込んできたAさんがこの件で自分の利益を上乗せするつもりなのだと知り(我々を助けることをビジネスと捉えていた事に)ビックリはしたが、業者さんがAさんを通さないわけにはいかないという立場は理解できた。一つの取引に幾つも仲介者が入って利益を分け合う(?)ビジネスのやり方は日本のあらゆる業界に蔓延る商習慣だ。人に仕事を頼む時には出来るだけ作業をする本人に直接代金を支払いたい夫には理解できない、というより、理解したくないシステムなのだ。

Aさんの取り分が上乗せされようがされまいが、昨日の業者さんから夫が納得する価格の見積もりはあがってこないと思う。そもそもフェンスに使う素材を生産しているメーカーの数は限られていてほとんど独占状態なのだ。そのせいでちょっとしたパーツがかなり高額だ。実は2ヶ月ほど前に建築中の家の現場で作業中の職人さんを捕まえて我が家のフェンスもお願いできないかと頼んでみた事もあるのだ。結局見積もりを出してもらったら驚くほど高額で話は流れたのだ。高いのは工賃ではなくフェンスの材料費だった。

片や便利屋さんは業界内の縦横の繋がりがないので自由に仕事ができる。材料費と時間給でフェンスを建ててくれると言う。材料もホームセンターで調達できるような安価なもので製作してもらえるので安上がりになる。しかも、一部の簡単な作業は自分たちでやれば便利屋さんの作業時間が少なくなってコストを抑えることができると提案してもくれた。

とりあえず両者から上がってきた見積もりを見比べて最終的な決断を下すことになるのだが、どちらに転ぶかはほぼほぼ確定している。

目的は目隠しでも、夫はそのための仕事と代金の流れはできるだけクリアでシンプルにしたいのだ。

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