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比較して実感! 高い画材と安い画材

絵を始める際、最初から高い画材をそろえるべきか、安い画材で試しながらレベルアップしていくかは、悩みどころです。

高い画材を買うリスクは、「使いこなせないうちに飽きてしまうかもしれない」点。ちょっと使って飾っておくだけになってしまってはもったいない。そして、「せっかく高いものを買ったのだから上手い絵を描かなきゃ」というプレッシャーを自分にかけてしまう点。もったいないから、上手くなるまで使わないようにしよう...と遠慮していたのでは、いつまでも上手くなれません。

一方で、安い画材を買ってしまうと、「実力以下の作品」しかできない可能性があります。満足いく出来にならないのは、自分の力がないからなのか、絵の具が思うように自分のイメージを表現してくれないのか、経験が少ないとそれを見極めるのも難しいので、「自分は思ったより下手なんだな」と絵を描くことに興味を失ってしまうことになりかねません。

このへん、画材も楽器も似ていると思います。楽器については、「下手な人(というか、初心者)ほどいい楽器を使って早く上手くなるべき」とは、よく言われますね。楽器の世界の「いい道具」は数十万、数百万の話ですので、それを考えると、絵を始めるにあたって100均で道具をそろえる代わりに専門の画材屋さんで数万円の道具をそろえるのは、いくらかハードルが低いのではないでしょうか?

そうはいっても、「高い画材が本当にいいのか(或いは、自分にあっているのか)」は、買ってみないと分からない。そこで今回はそのように迷っている人たちに役立つ、私自身の体験を交えたお話です。

結論を言ってしまうと、「良い画材」と「良くない画材」は存在するし、「良い画材」を使えばそれだけ「良い絵」が描けるのは事実ですが、「高い画材」が「良い画材」或いは「自分に合う画材」であるかというと、必ずしもそうではありません。自分が納得する「良い画材」に出会った時点で、それより高い画材にお金をかけるのは必然ではないと思います。初めて画材を買ってから、徐々に異なるレベルの画材をそろえていく上での注意点を、以下にいくつか挙げてみます。

まずは定番を


日本の小中学校に行った人であれば、ほぼ必ず水彩絵の具とクレヨン、色鉛筆は授業で使った経験があると思います。個人的には、あれらは非常にコスパの良い、低価格、高品質の画材と言えます。他にも筆や画用紙なども、まずは文房具店などで、一般の学童向けに売っているものを使ってみることをお勧めします。これらよりもさらに安いものというと、100均やおもちゃ屋などで売っている製品になりますが、これは当たりはずれがあり、よいものを探していろいろ買い求めていると結果的に無駄な買い物になってしまうので、初めての画材としてはお勧めしません。

1レベル上のものを、少量だけ


上の「定番品」である程度練習ができたら、専門の画材店やネット通販などで、これらより1段落上の「アーティスト」や「プロフェッショナル」ブランドというものに挑戦してみましょう。以下は、私の具体例です。

(最初に使用した定番/学童向け画材 → レベルアップした画材)
クレヨン/オイルパステル: ぺんてるクレヨン → カランダッシュネオパステル
色鉛筆: トンボ色鉛筆 → プリズマカラー(現カリスマカラー)
水彩絵の具: ぺんてるエクセレン(現在販売終了) → ホルベイン透明水彩絵の具
アクリル絵の具: ぺんてるアクリルガッシュ → (未トライ。ターナーにあこがれてます)
水彩色鉛筆:ファーバーカステル赤缶 → ファーバーカステルアルブレヒト デューラー(緑)
画用紙:(クレヨン)100均のスケッチブック →(未トライ。ダイソーので問題なし)
     (水彩、アクリル)マルマンの、オレンジと緑の表紙のスケッチブック → ホルベインのWater Ford
筆: ぺんてる学童用筆 → (未トライ。家にあるものを使っています)

* リンクのあるものは、アマゾンで購入できます。色数は、私自身が最初に購入したもののため、上級者用のものはほとんどセットで売っている最低色数のものになります。右と左で、価格を比べてみるのもいいかもしれません。

ここで重要なのは、「お試しのつもりで、少しだけ買ってみる」こと。せっかく高いお金で買っても、自分に合わなかった...ということになると、嫌な思い出になってしまいますよね。色鉛筆や絵の具であれば12色のセットを、或いは、定番品にない珍しい色を数色買ってみるのもよいと思います。最初から大きなセットを買う必要はありません。お財布と相談して、納得いく金額の範囲でそろえてみましょう。

口コミを調査


その際参考になるのは、ネットの口コミ情報です。通販サイトのレビューやブログの製品紹介記事などは、様々な意見があり、自分が求める特徴や性能を持っているのかを見極めるのに役立ちます。さらにYouTubeなどでは、お目当ての製品と別の製品を比較検証する動画や、実際にその画材で作品を作る過程も多く挙げられているのでぜひ見てみて下さいね。自分がどんなものを求めているのか、何となく分かってくると思います。

違いを実感する - 水彩色鉛筆の例


この時点で、皆さんの手元には「定番品」と、「ちょっといい製品」の2つがあることになります。これらを使って、まず2つ絵を描いてみましょう。同じモデルである必要はありませんが、絵の具を比較するなら紙は同じものを、紙を比較するなら絵の具は同じものを、といった具合に、同じ条件で2つを比較できるようにします。そこで実際に、自分自身で画材の違いを実感できるか、よい画材に値段だけの価値があるかを確認して見ましょう。
以下は、私が、以前から持っていたファーバーカステル社の水彩色鉛筆の中で、一番安い製品(赤缶)最高級品(アルブレヒト デューラー)を使って同じ絵を並べて描いたものです。赤缶36色を2000円以下で買って持っていたのですが、色ののりが良くないなあ、水彩色鉛筆ってみんなこんな感じなのかなあ...と、苦手意識を感じ、しばらく使っていませんでした。複数のレビューで、アルブレヒトデューラーの方が絶賛されているのを見て、半信半疑で3000円ほどの12色入りを買ってみて、塗り比べてみると違いは歴然。水彩色鉛筆の評価そのものが変わってしまう体験でした。

左が36色2000円、右が12色3000円。どちらも12色使いました。右のほうが、特に暗い色がはっきり出て、乾いた上に色を塗り重ねても強くのります。

「妥協できる品質とできない品質」を見極めよう。


ここまで述べた内容からも、絵を学んでいく過程で、安いものから始めても最終的には上達につれて画材もレベルアップすべきということが分かると思いますが、何もかもを一気にレベルアップする必要はないと思います。例えば、人によっては、色鉛筆の発色の良さは、自分の絵を表現するうえでどうしても必要だけど、補助的に使う絵の具やマーカーは安物でも特に影響ない、というのなら、色鉛筆にお金をかけて、絵の具は学童用のもの(しつこいようですがかなりの高品質です)でもうしばらく我慢、という選択も出来るでしょう。私は、水彩色鉛筆については、上に紹介した赤缶よりもアルブレヒトデューラーの方が絶対よいと確信できたので、今後少しずつ色を買いそろえていきたいと思っています。一方、クレヨン/オイルパステルについては、他のブランドも興味あるものの、しばらくはぺんてるのクレヨンで表現を磨いていきたいと思っています。

「安い画材」は使えないか?


一度「良い画材」を使った自分の絵のレベルが分かれば、「安い画材」も利用価値が出てきます。ある程度技術が磨かれてくると、「安い画材でいかに上手く描くか」(いわゆる弘法筆を選ばず)という挑戦も、練習方法としてよいかなと自分では思っています。特に100均の画材は、「自分は良い画材ならこれだけの絵が描ける」という基準が分かったうえで、100均画材でどれだけそのレベルに近づけて行けるかを目指しつつ、特定の技術を磨いていくことは十分可能だと思います。なにより、気軽に購入できるので、本格的な作品を描く前の色の配置や構図を試してみる、といった目的で使うには、最適だと思います。

高品質の画材が必須となるケース


以上、自分に合ったよい画材さえ見つかれば、無理に高級な画材を買う必要はない、という結論ですが、例外があります。依頼を受けて作品を描いたり、自分の絵を売ったりする場合には、「自分に合った画材」では不十分、時には不適切ですらある場合があります。中でも、画材の耐光性は、商品として作品を作成する場合、必ず考えなければならない品質要素となります。そのような場合は、耐候性や耐久性が保証されている画材に投資する必要が出てくるので、気を付けましょう。

最後に警告を。いい画材に出会って絵が上達すると、絶対別の画材でも試してみたくなります。いわゆる「沼」というやつですね。そんな沼にハマったら、そこは素直に受け入れ、お財布と相談しながら画材を買い集める、という行為自体を楽しめばよいのでは、と思います。

このブログでも、今後、私自身が試してみて、安いのにこんなにすごいよ!とか、高いけどお金出す価値あるよ!と感じた画材を、作品と一緒に紹介していければと思います。

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