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簡単?手ごわい?アクリル絵の具に挑戦

透明水彩の淡い感じ、文字通り透けるような色の美しさ、微妙な色の混ざり合いは、鑑賞する立場では大好きですが、実際に描いてみると、非常に難しい。どうも私にとっては「苦手」な画材の1つと言えます。

苦手意識を感じる要因の1つが、一発勝負の危うさで、間違った色を置いてしまうと上から塗りなおしても決して元通りになりません。修正のテクニックはありますが、基本、間違ったところから元に戻るのではなく、前へ前へと進みながら、当初の計画とは違う完成の方向を目指していくような部分があります。

その点、色鉛筆は(頑張れば)消しゴムで消せるし、クレヨンは塗りつぶしたり削ったりして、すでに塗った色を「なかったこと」にできるため、あらかじめ緻密な計画を立てなくても、とりあえずいろいろな色を乗せて、修正を繰り返しながら気に入った最終的な色に持っていくことができるので、透明水彩に比べて恐怖心は少ないです(個人の意見です)。

そこで、アクリル絵の具です。

水彩絵の具とアクリル絵の具の詳しい違いについては、原料の違いなどから説明すべきなのですが、正直ちょっと調べただけでは難しいので、ここでは「乾いた後に再度水で溶かすことができるかできないか」という違いのみを強調しておきます。できるのが水彩絵の具、できないのがアクリル絵の具ですね。
(水彩絵の具の中でも、透明と不透明がありますが、不透明水彩でも一度塗った上に水や違う色を置くと下の色が溶け出すので、アクリル絵の具と同義ではないということになります。)

ということは、アクリル絵の具であれば、間違って塗ったところは、いったん乾かした後で上から別の色を塗って修正できる、「なかったことにできる!」ということ。
更に具体的に言うと、やり直しのきかない水彩画では「薄い色から濃い色を塗り重ねる」ことが必須ですが、アクリル画ではいったん濃い色で塗った上に、薄い色を塗り重ねても下の色が混ざることなくきれいに上の色が出ます。例を挙げると、顔などを描くとき、水彩画(特に透明水彩)では、一番明るい部分は塗らずに紙の白を残し、淡い肌の色を全体に塗って、乾いたらわずかに暗い色で影を付ける...という作業を、一番暗い部分の色を塗るまで繰り返します。一方アクリル画では、明るい部分と影の部分、と大まかに2つの色に分けて肌を塗り、そこからより暗い色を重ねたり、光の部分を入れていって、最後に白絵具で眼の光や唇の艶を付ける、という塗り方ができます。
この際、アクリル画であっても単純に塗りつぶすのではなく、水の混ぜ具合によって下の色を透かすように表す(絵具同士が混ざるのではなく、半透明な層が重なっている、というイメージです)ことができるので、下の色を生かして微妙な色合いを出すことが可能です。この辺は、油絵の特徴とも似ているでしょうか。

私個人としては、アクリル画は「リアルな絵を描くとき」に、使ってみたいと思わせる画材です。納得のいくまで形や色を直せるので、現実により近い色を、いろいろと試行錯誤しながら作っていくのに向いていると思います。人物画も、微妙な肌の色や、光の加減を、色を塗り重ねることで表現でき、より重圧な存在感を出すことができるように思えます。(人物に関しては、幻想的な雰囲気を出せる水彩画で描くのも好きです。やはり、リアルっぽい絵に寄せたいときはアクリル画にすると思います。)

下の絵は、ピンクや青で下塗りをした後、上から様々な色を重ねてパイナップルや皿の質感を出すように工夫しました。水彩画だとここまで大胆にできなかったかも。

こちらは人物画。白をあとから足せるのは非常にありがたい。

更には風景画も、光と影がはっきりするのでかっこよく見えます(雲とか)。

ぺんてる社が、アクリル絵の具の12色セットを販売しており、近所の文房具屋でも入手できたので驚きでした。偉そうなことを言って、私が試したのはこのセット(と、100円ショップのもの)のみです。基本、水彩画同様、色は混色することで無限に作ることができるので、12色あれば十分という気もしますが、今後、もっと挑戦するのであれば、本格的な絵具セットや筆も揃えてみようと思います。

注意事項を一点。「乾いたら落ちない」はマジです。使用後に絵具を乗せたままのパレットを放置すると落とせなくなります。筆もガチガチになります。水では落ちないのでこまめに洗浄しましょう。


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