見出し画像

茶経を読む(お茶を作って淹れて飲む 2)


farmtory Advent Calendar 2019 12月18日の記事です。

茶経は、茶に関する最古の書だ。
著者は陸羽、8世紀頃の中国(唐)の茶について、茶の起源にはじまって製茶器具、製茶法から心得まで、10章にわたって詳細に述べている。
なんとこの本には注釈付きの翻訳があり、しかもKindle版も販売されていたので、新しい茶葉を待つ冬の季節の座学にしようと思って読むことにした。

画像1

今年の8月に初めて製茶に取り組んでみたのだが、結果、あまりおいしいとは言えないものができあがってしまった(飲んでいるけど)。(具体的な記録はFARMTORY JOURNAL Vol.2 「お茶を作って淹れて飲む」)

画像2

自作のお茶、一摘みを500ccくらいの湯で抽出すると、まあまあ飲めなくはない。が、人に供するのはちょっと無理がある感じで、次回はもうちょっとましな製茶を行ないたいと思っている。

その時の反省として「製茶法について深掘りしないまま進めてしまった」というものがあった。インターネットに公開されていて、すぐ見つかるドキュメントでは、詳細なところまで書いておらず、例えば「茶葉を揉む」とあってもどの程度どうすればよいのかさっぱりわからない。しかもわたしは中国語が読めない。そこで、茶の原点に触れるような文献であれば、原始的な製茶法を知ることができるかもしれない、という期待があって、茶経を選んだ。

茶経の目次はこのようになっている。

一、茶の起源
二、製茶器具
三、製茶法
四、茶器
五、茶の煮たて方
六、茶の飲み方
七、茶の史料集
八、茶の産地
九、略式の茶
十の図

ひととおり読んでみて、歴史的な価値はありそうだったけど、実践の書としては使用技術がちょっと古い、ような気がする。なにしろ1300年くらい前のものだし。

そして一つ大きな点として、茶経には萎凋(いちょう)に関する記述がなかったのだ。
わたしの茶への興味は、いまのところ萎凋香(茶葉に含まれる酸化酵素による発酵の結果、生じるさわやかな香り)が中心なのだが、茶経にある製茶法は、不発酵の蒸圧製で、ちょうど日本の緑茶に近い。いつごろ製茶法に萎凋が取り入れられたのか、あらたに調べるべき課題ができた。

本文はともかく、読んでいて、訳注のうちの1文が目を引いた。
「しかし私が『茶経』に見える餅茶の製法を実験した時(その記録は「『茶経』の茶──製茶法の復元」参照」
なんと訳者は茶経の茶を実際に作ってみているのだ。

ここで、茶経そのものよりも、翻訳者の布目潮渢(ぬのめ ちょうふう)博士に興味がわいてきた。

本書には博士のテキストが解説としてついている。
このテキストの方が、本編よりもむしろ興味深かった。(テキストのほか、図版や写真も多く収録されていて、わかりやすい)
陸羽の茶道について、茶経を丁寧にひもときながら、解説している。この解説をもってはじめて、本編のおもしろさに気付くことができたように思う。

具体的な製茶方法についてあらたな知識を得ることはできなかったが、茶についてまた深めることができた。

画像3


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?