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モロカイ島への聖なる旅 3


真の発見の旅とは

新しい風景を求めることではなく

新しい目を持つことである

マルセル プルートス 聖なる旅より




主人公ダンが生死を彷徨いながらもモロカイ島に渡った頃

わたしも無事にモロカイ島の大地に降り立った


モロカイ島の優しい朝日






朝日を浴びながら空港を出ると1匹のトンボがわたしの視界に現れた

トンボは英語でドラゴンフライ

わたしにとっては、ドラゴンのお出迎えのサインだった

その姿を目で追いかける

その先にはちょうどレンタカーの建物が建っていた

予約の時間ぴったりに扉を開けると年のいった夫婦が車の手配をしているところだった

どうやら数日間滞在するらしい

しばしの間、壁に貼られたモロカイ島の地図を眺めながら順番を待った

レンタカーの受付のお姉さんは朝早いというのに、とっても明るく気さくに町のことを教えてくれた

「空港に戻る前に町で何か食べ物を買ってくるといいわ!だってこの空港には何もないんだから」
と笑いながらアドバイスしてくれた

鍵を受け取るとすぐ目の前に停められた車のライトがチカチカっと光った

乗り慣れていない、いつもと違い白い車に向かうとまたトンボが現れて

まるでここで待っていてくれたかのようだった

とりあえず途中のカウナナカイの町でお水を買ってからモオ(ドラゴン)の滝に向かうことにした

町までは10分ほどの道

信号機もない昔のハワイが未だ根深く残るというモロカイの地にようやく足を踏み入れた喜びを感じていた

柔らかい日差しが運転席まで伸びてきて心地が良い

そんな喜びも束の間

いきなり目の前に広がるモロカイの景色がグルグルと周り出した

まただ!

慌てて車をサイドに停める

またあの恐怖が身体中に駆け巡ってきた





今までで一番短い数秒間




目を開けたまま息をお腹の奥深くまで吸い込んだ

手はハンドルを握ったままだった

少し落ち着いた後、残りの5分くらいの道のりを慎重に走らせる

後ろの車が優しくわたしの白い車を追い越す

追い越しをされても少しも嫌な気持ちにはならかった

信号機のないこの島ではよくある光景だった

やっとの思いでカウナナカイの小さな町につき

空いていた駐車スペースに車を停めた

窓からはモロカイの優しい風が入ってくる

それでも、わたしの心は全然落ち着こうとしてくれない

ローカルらしき青年が
わたしの前を通りすぎると笑顔で

「アロハ」と言った

彼にとっては1日のとりとめない
行動だっただろう

でもその嘘偽りない真っ直ぐな笑顔に
涙が溢れてきた

そのアロハはわたしにとって

こんにちはでもさようならでもなくて
愛そのものだった

こんな状況でも世界は愛で溢れていることに
感動した


それでも車からも降りることができず
電話に手を伸ばす

「無事ついた?」

の一言が聞こえてきて

やっと少しだけ安心できた

こちらの心配とは裏腹に「大丈夫!大丈夫!」って言っているし

本当は心配してるのかもしれないけど、、、

態度に出さない人だから

こんなやり取りの間でも時間は待ってはくれない

少なからずあと10分後にはここを出なくてはならなかった

仕方なく電話を切ると車から降りてお店を探しに歩き出した

まだ朝早いのかほとんどのお店のドアには

クローズのサインがぶら下がっている

しばらく歩いて行くと

道の終わりにあった緑色のお店が開いているのが見えた

唯一空いていた緑色のお店



そこでお水とわたしが唯一好んで飲むジンジャーのレモネードのジュースを冷蔵庫から取り出してお会計を済ませた

車に戻ってレモネードの瓶を開けて空っぽの体に流し込んだ

少しだけ元気になった気がした

アイフォンの時間を見るともうあまり時間はなかった

もうこのまま進むしかなかった

ラジオからはハワイアンの陽気な音楽が流れてきてドライブのお供にすることにした

ハラヴァまでの一本道を走らせる

朝の優しい光に照らされるモロカイの一本道とハワイアンの音楽がマッチして

いつもに増して世界が美しく見えた


モロカイ島の景色





続く

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