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「野外で授業」実践事例報告会        ③愛知県守山幼稚園


はじめに

 2018年にスウェーデンの野外教育教材「野外で算数」を翻訳・出版して以来、子どもたちの学びを野外のフィールドで育んでいく取り組みが、少しずつ日本各地で広まってきました。各地でのワークショップやオンラインセミナーを実施する中で、現地の先生や指導者の方々がアクティビティやその考え方を学び、実際の現場で子どもたちを相手に実践されています。  
 今回は、オンラインでの報告会として、「野外で授業」の取り組みを実践している方々をゲストに3つの事例を紹介していただきました。スウェーデンのアイデアをヒントに、それぞれのフィールドに合わせて自分たちで内容やスタイルを工夫しながら、熱意を持って実践されています。


③愛知県守山幼稚園での活動

発表:山口太志さん(放課後等デイサービス職員)

山口さん:山口太志と言います。これまで、中学校の先生を1年間、小学校の先生を低学年を中心に3年間やっていました。

 現在は、発達障害の子どもたちを対象にした放課後等デイサービスの職員として働いていて、今年で2年目になります。それと同時に、月に1回~2回くらい、名古屋市の守山幼稚園で「野外で算数」の外部講師という形で活動しています。今回は、守山幼稚園での「野外で算数」の位置付けと活動の内容を発表しながら、「長さ」と「数」についての実践について紹介しようと思います。

 守山幼稚園は名古屋市にある私立の幼稚園です。「野外で算数」以外にも、さまざまな外部講師によるICT教育や自然遊びなどの活動を行なっている園です。あと、園としてSNSでいろいろな情報を発信しています。

 守山幼稚園での「野外で算数」の活動についてですが、僕は年長さんを対象に月2回程度の活動を行なっています。小学校に上がる前の園児たちにとって、「算数って楽しいな」「やりたいな」という前向きな気持ちを育むことを狙いとして活動しています。お兄ちゃん、お姉ちゃんがいる子は宿題で計算ドリルをやっているのを見ているようで、算数に対してあまりポジティブな印象を持っていない子もいます。なので、教え込むのではなく楽しんでもらうことをコンセプトにしています。保護者の方にも、「算数って楽しいね」という感覚を知ってもらうために、元小学校の先生が野外で算数の活動をしているということをお知らせしています。

 実際の活動は、野外で算数のテキストを参考にしながら、1コマ40分程度で行なっています。今回は、「1メートルってどれくらい?」という活動と、「数を数えよう」という活動について紹介します。
 
 「1メートル」の活動では、幼稚園の年長さんを対象にしています。最初の導入として「1メートルってどれくらいの長さかな?」と子どもたちに聞いていきます。そうすると、実際よりも短く答える子が多い印象です。そんなふうに初めに自分で予想を立ててから、次に実際に1メートルの長さのタコ糸を見せながら、子どもたちに一人ずつ配っていきます。そして、「自分の予想と比べてどうだった?」と言って確認をします。

 次に、守山幼稚園の園庭にはちょっとした森があるので、そこまで行って1メートルのものをみんなで探します。
 1メートルのものを集めたら、今度は「1メートルより短いもの、1メートルよりも長いものはどんなものがあるかな?」と声かけをして探しに行きます。自然の素材だけでなく、園庭にあるものを対象にしています。子どもたちが園舎の長さに興味を持ったら、「長さを調べてみよう」と言って測ったこともあります。そして、みんなで見つけてきたものを互いに紹介します。
 最後に、1メートルと自分の身体と比べてみて、「1メートルには自分の足、手、頭がいくつ入るかな?」ということもやっています。

 これをやってみて思ったことは、一緒に活動する中でついつい遊具で遊びたい子もいるんですが、そういう子にも「この遊具って1メートルかな?」と声をかけると、ヒモを持って測ったり確かめたりしてくれるので、他のことで遊んでいても活動に結びつけられるのが良いと思いました。僕は元々小学校で先生をやっていましたが、こういった活動は学校でもできるのではないか と思います。2年生で長さについて習うので、習った後に校庭で探してみるというようなことは、学校でも取り入れやすいと思いました。

 次に、「数を数えよう」の活動について紹介します。これも40分の活動です。まず初めに、導入として『ファイブじゃんけん』をします。「0と5」や「1と4」というように、足し算で5を作るじゃんけんです。

 その後は、赤白帽をみんな被っていたので、二人一組で「5」を作る活動をしました。「赤い帽子を被っている子は好きなカードを持ってこよう」と言って、数字が書かれたカードを取ってきてもらいます。その後に、「白い帽子の子は、初めの数字に足して5になるようにカードを取ってこよう」という活動をしました。次に「10」を作る活動もしました。

 最後は、数字カードを1から順に一直線に置いて、数直線の活動をしました。例えば、「初めに3歩進み、次に5歩進むと、全部で何歩進んだことになるか?」ということを、数を数えながらやってみました。「足し算」とは直接言わなくても、遊びながらできたかと思います。

 感想としては、ファイブじゃんけんの導入の後に数字カードの活動をしたことで、スムーズに進めることができたと思いました。あとは、「3」の数字カードであればシールを3つ貼って工夫をしました。計算が難しい子でも「シールが全部で5になるにはあと何個シールがあるといいんだろう」というように声をかけると、視覚的にも理解できてやりやすかったと思います。
 小学校1年生でも「さくらんぼの計算」や「10のかたまりを作る」といった活動につまずく子もいるので、野外で数字を使う活動は小学校の授業でも使えるのかなと思いました。

僕は「野外で算数」のワークブックの内容をそのままやってみることが多いです。
 今は「野外で算数」の活動を初めて2年目なんですが、やりながら見えてくることもあります。1メートルの活動も、数の活動も、実際に活動してみることで、いろいろな失敗や改善点、気づくことがわかってきます。なので、実際にやってみることが大事だと思っています。
 ありがとうございました。


 ここで紹介されている野外で算数の活動は2018年に翻訳出版されたスウェーデンの自然学校協会が発行している『遊びながら野外で学ぼう 野外で算数』に紹介されています。詳しくは以下のホームページからご覧いただけます。

主催:北海道 / 企画・運営:NPO法人 当別エコロジカルコミュニティー

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