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後悔を減らせるのは確か、ならやるしかない。 『どうしても生きてる』 - 朝井リョウ

歩き続けるのは前に進みたいからではない。
ただ止まれないから。それだけなのに。

1.『健やかな論理』

自殺のニュース、その人の何気ない投稿、の繰り返しを一覧にする。健やかな論理から見事に外れる瞬間の連なり。

自殺した人、攻撃する人は、満たされてないわけじゃないんだよ。自分にも見えないものが積もっているんだよ。最後の一滴が何かは誰にもわからない。

「AならばB」
「満たされていなから他人を攻撃する」
「満たされている自分は他人を攻撃しない」
「離婚をされたから可哀想」
「新しい恋人ができたから大丈夫」

健やかな論理で、他人と壁を作るな。

健やかな論理に沿って、安心したいし、納得したい。だけど、そうやって人を判断、ジャンルわけすることは、他人と自分を大きい壁を作っている。そんな方程式に安住してはならない。自分と他者に、幸と不幸に、生と死に、明確な境目などない。

「この世界から消えてしまいそうな自分」
「もう少し生きていきたい、誰かを大切に想いたい自分」

隣り合わせでいる、表裏一体。

2. 『流転』

多くの人達は口を揃えて言う。

「負けても、辛くても、泣いても、打ちひしがれても、絶望しても自分に嘘だけはつくな、自分だけは裏切るな」
「大切なのって、嘘がないってことなのかも」
「もう自分に嘘をつきたくない、だから今度はちゃんと言葉にしよう。」

「リアル。熱。切実さ。本音。嘘のなさ」

ラップバトルを見て感化される。心臓のみの存在として全て剥き出し。

自分が本当に好きなことをできる場所は死守する。

「本当はやりたくないことでも描く。誰よりも絵を描けるようになりたい。お前が面白い物語を持ってきたら絶対スケジュール開ける。そうして、その先の自分が本当に好きなことをできる場所は死守する。ってことが自分に嘘をつかないってことだと思ったんだ。」

「お前は、自分に嘘をつかずに生きる(本当にやりたいことしかやらない)そう腹を括っているふうな自分を好きなだけじゃないのか?」

「漫画をやめた理由も、ほかのことに対する理由も、自分に嘘をついて、勝手に他人に託さないで、勝手に後悔しないで。」

後悔を減らせるのは確か、ならやるしかない。

結局のところ、どう生きたとしても後ろめたさの残る歴史を歩み続ける以外に人生の選択肢はないのかもしれない。けど、その後悔を減らせるのは確かじゃないか?なら、やるしかない。

5. 『そんなの痛いに決まってる』

言葉を飲み込む技術だけ磨かれてないか??

尊敬する上司のSM動画が流出した。本当の痛みの在り処が映されているような気がした。

旅行の良さ。思ったことがそのまま声に出るから。景色見てキレー。ご飯食ってうめー温泉入ってああー反射的にそのまま口に出せることが気持ちいんだろう。言葉が外に出る網目が粗くなる感覚。

「誰にとっても、誰でもない存在として、思ったことをそのまま言える時間が、必要なんだろうね。」

「痛い!ああ!限界です!もう無理!ああああ!」

押し殺すと、ブスになる

「理不尽な目にあった時、他人に傷つけられた時、そんなの痛いに決まってるじゃん。そういう時無理矢理口を閉じて押し殺すと、どんどんブスになってく気がするんだよね。」

「痛い時に痛いって、限界な時に限界だって、もう無理だって大きな声で言っても驚かない相手が一人でもいる空間に、いたかったんだよ。」

6. 『籤』

性別、容姿、家庭環境。生まれたときに引かされる籤は、どんな枝にも結べない。

「醜いをさらす=強さ・誠実さ」だと変換して良い気になるな

なんでも洗いざらい吐露すること、「俺、最低なんだ、人間失格なんだ。」人間の醜さをえぐり出すこと、ごまかしのなさ、嘘のなさを「正直でいいね!」と褒められるのは、暗転のある世界だけだ。現実はたとえ、吐露して醜さ出して惨めだと泣いて本音を荒げても、明転したまんまだ。なんの区切りも付かない。そんな簡単に現実は変わらない。舞台ならば大抵、暗転する。

「は?潔さの念押しですか?バカみたい。絶対に暗転させてやらない。醜い部分をさらけ出せたという点を、自分の強さ・誠実さだと変換して勘違いできるはなぜ?さもその1秒後に新たな自分が始まるとでも思っている。」


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