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#技術の学びリンク に込める思い

 かつて「アイディアの連鎖」という言葉を使って中学生ロボコンでの生徒の学びを解説しました。この記事に添付した図は2007年当時の茨城県南地区ロボコン大会で,学校を越えてアイディアを共有し発展させた疑似特許実践です。当時阿見町立朝日中学校におられた山口治先生が,疑似特許出願時に書かせた「何を参考にしたのか」を1つの事例について抜き出して手作業でまとめてくださったものです(詳しくはこちら)。そして当然この疑似特許実践は,長野の村松 浩幸先生らが長野ロボコン(N-robo)で実践した疑似特許(詳しくはこちら)を追実践しつつアレンジしたものでした。
 たしかに,生徒同士が参考にしあって技術開発してしまうなんてすごく面白い,でもロボコンならできるかもしれないけど,授業では無理と,当時は私も信じて疑っていませんでした。

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 ところが・・・
 今回のコロナ感染拡大に伴う休校で,著作権に四苦八苦している先生方を見ていると,著作権があるから使えないとか気にしてばかり,自分から何をそこに加えようなんてことは考えることすらできていません。
 概して言えば,今の学校の先生方の多くには自分の授業は誰かの真似をさせてもらってはじめて実現しているという感覚がありません。著作権を気にするあまり誰かの著作物を問題なく使うことしか考えられていないのです。自分たちが生み出した学びの成果を生かす筋道が,多くの先生方には見えていません。
 このままいくと,YouTubeで限定公開にして教科書の問題をコピーして解説して配信すれば,学ばせたことになってしまいます。おそらく問題の根源は,教科書を使ってその内容を伝達するというこれまでの学校での授業というスタイルにあると思うのです。「授業」という言葉には,その学習スタイルが当たり前のように埋め込まれてしまっています。だからロボコンは「それは授業ではない」と当時多方面から批判されたのです。

「誰かの学びに『いいね!』をする。」
「誰かの学びに,他の誰かの学びをつなげる。」
「誰かの学びに共感して,共に学ぶ。」
「誰かの学びを追体験してみる。」
「誰かの学びの成果を使う。」
「誰かの学びの成果をアレンジする。」
「誰かの学びの成果を検証し,課題を明らかにする。」
「誰かの学びの成果を生かして,次の課題を解決する。」
「誰かの学びを他に発展させる。」
「誰かの学びを生かし学び,その成果を他の誰かに継承する。」

 文化的交流がめったになかった大昔なら,誰かの学びに学ぶことから独立した学びがたくさん存在していたのかもしれません。しかし,これだけネットが普及してデジタル化が浸透した今,この人間社会で,何からも刺激を受けずに,何も参考にせずに生まれるものはありえないと思いませんか。
 インターネット上ではこれをURLによるリンクとして実現しています。そして,よく考えてみれば教科書もその参考にすべき誰かの学びを集めた学びの参考書に過ぎません。逆にいえば教科書以外に参考にすべきものが,ネット上で電子的に共有されているのが今の社会です。

 しかし,ネット上の情報はあまりにもバラバラに存在していて,いったいどうやって学べばよいのかわからず,独力で見つけ出して学び続けることのできる人は滅多にいません。
 全ての学びには,伴走が不可欠です。その伴走する役割を教師は担ってきました。多くの人は誰かの学びのプロセスを追体験することでしか,その価値を理解しその学びの文化に参画することができません。その体験でのつまづきを解消する手立てが必要です。これまでは,それが学校などの三密を前提としたコミュニティでのリアルな学びの関係性の中で育まれてきました。withコロナの今,その学びをネット空間に拡張する時と考えます。

  #技術の学びリンク と,あえて「リンク」を入れたのは,自分の学びは,誰かの学びの成果に支えられて今ここにあるということを基盤として,技術の学びを互いに参考にしあえる場をネット空間上に作り上げることに意味があると考えるからです。
 組織や学校などあらゆる壁を越えて,学びの場を拡張しましょう。ネット上だけではないかもしれません。あらゆる人が様々な可能性を探り,次のスタンダードを創り出す。そんな時代を私たちは生きています。



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