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【小説】烏骨鶏【ついなちゃん二次創作】

神奈川県・厚柿市あつがきしのスーパーマーケットで、渡部わたなべついなはとある商品を見て声も無く驚愕した。

烏骨鶏うこっけいの卵 6個入り3,500円(税別)】

「普通の卵とどう違うのやろ…」

所謂レグホーン種等の卵の6個入りならば、恐らく200円もあればお釣りが来るだろう。ついなは、驚愕を隠せないまま、買い物を終えて帰宅した。

「ただいま」
「おかえり。…どうしたんだい、顔色が悪いよ」
ついなを出迎えたのは、ついなの良人おっとでパティシエを職業とする紳士、渡部悠弦わたなべ ゆづる
「何でも無い…いや、スーパーマーケットでちょっとビックリするものを見てしもてん」
「何を見たの?」
悠弦の問いに、ついなはスーパーマーケットで見かけた烏骨鶏の卵の話をして聞かせる。悠弦はそれを聞くと可笑しかったのか、ほんの少しだけ微笑んだ。
「確かに予備知識が無かったら驚くね。…種明かししてあげようか」
「烏骨鶏の卵の値段について何か知ってるん?」
「…烏骨鶏は、元々中国原産の鶏でね。原産国の中国では、漢方食材として高値で取引されるんだ。何でも、普通の鶏よりも滋養が高いらしい」
「へぇ…」
「だから、卵も同様に稀少価値が高いって訳。産卵数もレグホーン程多くないから、尚の事単価が高いみたい。…多分キミが見た烏骨鶏の卵は、他所に比べたらまだ安い方じゃないかな。地域によっては、10個入りのパックで10,000円を超す事もあるみたいだよ」
「…マジで!?」
「僕は嘘はつかないよ」
悠弦はついなの問いに、かすかな笑みで応えた。

「…もうひとつ質問、良いかな?」
「何なりと」
「ダーリン、何で烏骨鶏の卵の事に詳しいん?」
「…職場で、特注のケーキを頼まれた事があってね。その時にお客さんから、烏骨鶏の卵を使うよう指示があったんだ。流石に採算が取れないんで、最終的にちょっとお高めの普通の卵で納得して貰ったんだけれど」

(世の中には、まだまだウチが知らん事や、変わった御仁もあるものや)
呆然と脳裏で独りごちるついなの耳に、遠くから豆腐売りの唐人笛チャルメラの音が届いた。

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X連動企画【ついなちゃんフライデークリエイト】5月第3週のお題より【卵】を拝借しました。少しいつもより短めです。

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