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【掌編】カラオケ【ついなちゃん二次創作】

「待ってー、広葉くーん♪」
「待たないし!今日は帰って修行しなきゃだし!」
「キャー、照れてるー♪」
「かわいいー♪」
「か、かわいいとか言うなし!」

黒髪と、湧水のように澄んだ瞳を持つ小柄な少年を、上級生と思しきセーラー服の少女数人が追いかけ回すのを見て、厚柿あつがき中学一年生の少年二人組…新聞部の部長・小林小太郎こばやし こたろうとバスケ部所属・日折司輝ひおり しきは怪訝な顔をした。
上級生の女子達に追い回されているのは、小太郎と司輝の親友で、稀代の陰陽師、安倍晴明あべのせいめいの末裔・安倍広葉あべ ひろはである。

「おい、何で広葉ヒロの奴、あんなにキャーキャー言われてるんだ?」
司輝が小太郎の顔を見ると、小太郎も反応に困ったような顔をした。
「判らんな…最もあいつ、顔つきが女子みたいでかわいいとか良く言われて困っている…とは以前にぼそっとカムアウトしていたような気がするが」

そんなふたりの目の前に、何やらふわふわ飛んで来た。ピンク色の丸っこい体をした不思議な生き物…広葉の式神であるウーパールーパーのうー太郎である。
「うぱー、うぱうぱ(おいコタロー、司輝。広葉が何故あんな目に遭ってるか、知りたくはないか)」
うー太郎が思念でふたりに話しかける。その思念には何処か愉快そうな響きがあった。
ふたりが無言で頷くと、うー太郎は続けて思念を送った。

「うぱうぱ、うぱぱ(コタロー、司輝。お前達、この間広葉を連れて3人でカラオケに行ったろ)」
「ああ」
「うぱうぱ、うぱぱー(あの時に広葉がノリノリで唄っていたのを、たまたま同じカラオケ屋に居合わせて聞いてた連中が居るんだよ。それが今、広葉を追いかけ回してる上級生の女子達さ。あいつ等、余程広葉の歌声が気に入ったと見えて『今度一緒にカラオケに行きましょう』と猛烈にアプローチをかけてるんだよ。それで広葉が怖気づいて逃げてるって訳だ)」
「…」

小太郎と司輝は顔を見合わせ、それから小さく溜息をついた。
「何と言うか…」
「モテる奴は大変だな」
「うぱぱぱ、うぱー(オモチャにされてる、の間違いじゃないのかな)」

「うー太郎!何処だ!?居たらこの状況何とかしてくれよー!」
随分と離れた場所から、広葉の悲鳴が響いた。

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