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西洋の甲冑

プレートアーマー

プレートアーマーとは、人体の胸部、あるいは全身を覆う金属板で構成された鎧。金属板で構成されるため、板金鎧(ばんきんよろい)とも呼ばれる。甲冑は全身に装甲をすることで人体の防衛力を高めようとしたもの。板金加工技術が進んで軽量化が行われた16世紀以前のもので鎖帷子を含め装備重量は30-50kgだった。

甲冑は少しでも体に合わないと着心地が悪く、特にくるぶしの部分が体にあっていないと痛みすら引き起こした。このため裕福な者は北イタリアや南ドイツで甲冑を腕のよい職人にオーダーメイドし、平均的な騎士は貿易船が持ち帰った平凡なミラノ甲冑を購入していた。また、甲冑は新規で買うなり作らせるなりすると大変に高価なものとなったため、甲冑を先代から受け継ぐなどして次代の体にあわせて改造し再使用したこともあった。オーダーメイドの場合、採寸は後述のヘルム、ゴーントリット、サバトンを除く部位だけでも30箇所に及んだ。また、製作には3ヶ月程の期間がかかった。このような事情もあり、一般兵が略奪品以外でプレートアーマーを身に付けることはほとんどなく、農兵程度ではレザーアーマーが利用され、一般の歩兵では金属製の小さな環を綴ったメイル、あるいは金属の小片を綴りあわせたラメラーアーマーやスケイルアーマーないしブリガンディーンなど、より簡易で安価な鎧を利用していた。

プレートアーマーは頭部を保護するヘルメット(ヘルム、アーメットとも)、喉を守るゴージット(ビーヴァ)、ポールドロンまたはスポールダと呼ばれる肩当て、そしてそれを補強するガルドブラ、肘を守るコーター、前腕を守るヴァンブレイス(英語版)(アッパーカノン)、下腕部を防護するリアブレイス(ロウアーカノン)、手首を守るゴーントリット、脇をまもるベサギュー、胸部と背部を守るクウィラス(単にブレストプレート、バックプレートとも言う)、腰部を守るフォールド、フォールドから吊り下げられた二枚一組の小板金のタセット、胸部のブレストプレートと対になったバックプレートから吊り下げられ臀部を守るキューリット、チェインメイルスカート、大腿部を守るクウィス、膝を守るパウレイン、脛を守るグリーヴ、足を守る鉄靴ソルレット(サバトン)等からなる。

こういったそれぞれの部品は、様々な形状の金属板を切り出し、槌で叩いて三次元的な曲面を持つパーツにして、これらを組み合わせ構成する。このパーツで体の動きを妨げないよう重ね合わせたり関節を設けたりするわけだが、多くのパーツはリベットで留められる。一部には皮革などが皮バンドとして用いられ、これを使って体に固定する。

ソルレット、ゴーントリットなどはパーツの左右に穴を開けリベットでかしめ、回転軸とし自由度を持たせる。スライドリベットは一方の穴を大きくしワッシャーをいれてリベット自体の穴に自由度を持たせる。また、革ベルトにリベットでパーツを留める。タセットやゴチック式の肘部分は外からは見えないが革ベルトであり柔軟に可動する。

板金の厚みは物や部分にもよるが1~1.6mmほどで、現在の自動車用板金よりは厚いが、自動車板金に使われる高張力鋼板よりは格段に弱いため、打撃や貫通といった攻撃に耐えるため要所要所に補強が入れられていた。敵にさらす左側をより厚くしたものも多い。グリニッジ甲冑などは肘を大きく作り盾の代用とする。

なお、19世紀中頃にナポレオン3世は、甲冑をアルミニウム製とすることで軽量化を考え、科学者ドビーユに援助したが、当時の技術ではアルミニウムの大量生産は不可能であり、この目論見は頓挫した。アルミニウムの大量生産が確立するのは20世紀に入ってからであり、様々な製品に用いられるようになったが、軟らかく防弾には向いている素材と言えず、アルミニウム製の甲冑は実現しなかった。

フリューテッドアーマー

フリューテッドアーマー(fluted armour, 溝付甲冑)とは、16世紀初頭に開発された西洋の甲冑の一種。神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世の命により開発されたことから、マクシミリアン式、マクシミリアン甲冑(Maximillian armour)ともいう。

甲冑の重量を軽減するため、従来の甲冑より薄い鉄板を使用している。薄い鉄板の強度不足を補うため、表面に幾筋もの溝 (flute) 状の凹凸を打ち出し、それまで重さ40キログラムもあったものを18キログラムまで軽減した。

様々なヘルム


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