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リメイク版『LIVE A LIVE』の雑多な感想

『LIVE A LIVE』のことは以前から知っていた。
Wii Uでバーチャルコンソールとして配信が開始された際に話題になっていたことも記録している。というかその時に気になって購入もしていた。随分と前なので記憶が薄いが、途中で迷子になって詰んでしまった記憶がある。

ニンダイでリメイク版が発表された際には驚いた。「伝説のRPG」とは呼ばれているものの知る人ぞ知る作品という感じで、今になってこんな力を入れたリメイクが出るとは思っていなかったからだ(失礼)。とはいえ、さまざまな時代を舞台とした作品が多数入ったオムニバス形式のRPGであることや、そして終盤のとある要素(ネタバレになるので伏せる)にはとても惹かれていたため、購入を決意するのにそう長い時間はかからなかった。

以下感想。ネタバレを含むのでプレイ予定の方はご注意ください。






総評として、ものすごくアツくて、ものすごく良いゲームだった。エンディングのスタッフロールを見ながら多大な充足感に満たされるような、そんな作品だ。

ゲームシステム

基本は見下ろし型のスタンダードなRPGだが、戦闘システムはかなり革新的かつ面白い。
・戦闘はマス目状のフィールドで行われ、ボードゲームのコマのようにキャラたちが配置される(主人公らは1マス、敵には最大3×3マスの大きさがあるものもいる)。
・各々の素早さに基づいた速さで溜まる行動ゲージが満タンになった者から行動し、コマンドを選択する。キャラごとに固有の技が存在し、技によって攻撃できるマスや範囲が異なる。
・範囲は周囲4方向4マス、斜めに一直線、全体攻撃、その他トリッキーなものなどさまざまである。ものによっては強力な分追加で待機時間を必要とする技も存在する。
・MPにあたる概念は存在しない(待機時間や攻撃範囲の違いがその代替)。
・回復スキルや回復アイテムもある。こちらも他の技と同様、範囲が決められている。

このような感じである。これがなかなかよくできていて、敵の攻撃範囲を意識しながら自キャラの配置を模索したり、強い技を出す際に攻撃されるリスクも考えたり(先述の待機時間が攻撃を受けることでキャンセルさせられることもある)など、駆け引きがかなり面白い
また、原作を殆ど遊んでいないためなんとも言えないが、このバトルはリメイクによってものすごく遊びやすく改善されているように思った。具体的にはHPや行動ゲージ、攻撃範囲、バフ・デバフの見やすい表示、派手な攻撃エフェクトなど、単なる手応えに関係する部分も合わせて、現代に合わせて圧倒的に利便性が向上しているように感じる。

一つ苦言を呈するとすれば、完全なランダムエンカウント式となっている中世編及び最終編のエンカウント率がかなり高めな点だ。どれほどやり込むかにもよるだろうが、広いフィールドを歩き回ることを必要とされるので少々キツかった。


ストーリー

誤解を恐れず言えば、このゲームのストーリーには少しだけ荒削りな部分も感じた。丁寧で巧妙な物語をただただ求める人にはあまり合わないゲームかもしれない。しかしそれを補ってあまりある「アツさ」と「勢い」によってこの作品のシナリオは成り立っていると思った。

近未来編や功夫編はそんな「アツさ」の塊だ。友人あるいは師の思いを胸に奮い立つ主人公。クライマックスは一番いいセリフに被せられる形で流れるBGM『MEGALOMANIA』も相まって「これでテンション上がらない奴いるか!?!?」って感じだ。
あと、独特な台詞回しも唯一無二の魅力だ。「あの世で俺に詫び続けろ」っていう言い回し、すごすぎる。

また、ストーリーという要素からは少し逸れるが、リメイクで追加されたボイスも素晴らしい。これでもかと有名な声優さんたちが登場し、フルボイスで物語が展開する。本作は極端に言えばどこかで見たような感じ(中世編はFFのセルフパロディだし、現代編はかなりスト2っぽい)とケレン味に溢れているのだが、その魅力を声優さんたちの勢いある演技が底上げしているように思った。元々フルボイスと相性が良いゲームだったと言えそうだ。

また、先ほど荒削りと書いたが、ゲームシナリオとしてはなんら問題はない。原始編の言葉のない物語も、幕末編や現代編のシンプルなストーリーも、ゲームを引き立たせるという意味では極めて必然的なものである。

そんな中でも、最もよく練られていると思ったのはSF編だ。宇宙船という閉鎖空間で疑い合う人間たちとそれを巡り対立するAIという物語が丁寧に綴られている。戦闘がほぼない異色作となっているだけある。

しかし一番印象的だったのは中世編から最終編にかけての物語である。古くからの友人にも、唯一自分を信じてくれていると思っていた姫にさえ裏切られ、人間そのものに対する深い憎しみを抱くようになった中世編主人公オルステッド。彼に呼び寄せられ集結した全編の主人公が、自らの道を進んだ者として彼の歪んだ野望を打ち砕く、という流れはあまりにもよくできている。それに、ストーリーラインとか抜きにして「住んでいる場所も時代も違う者たちが力を合わせ巨悪を討つ」というという構図はめちゃくちゃ胸躍るものだと思う。この一本だけでセルフでスマブラしてるみたいなもんだから。


グラフィック

HD-2Dのスタイルで描かれる本作のグラフィックは圧巻だ。より高解像度となったキャラクターたちのドット絵の美麗さもさることながら、ドットを立体に起こしたようなマップもとても美しい。中でも、立体的なマップである幕末編や、ロケーションの関係で複雑な造形が多いSF編は特に恩恵が大きく感じた。
陰影や、カメラの被写界深度によるHD-2Dならではの表現も随所で用いられている(中世編はかなり顕著。オクトパストラベラーなどの影響かも)。

「もともとあるマップを原型として作っていくならまあ楽なのかなぁ」とか最初は思っていたが、いざ原作と見比べてみるとあまりの違いっぷりに驚いた。先述のようにフィールドが全て3Dになっているのはもちろんのこと、フィールド上でのキャラドットのサイズが大きくなっていたり、戦闘での立ち絵が全てアニメーションするようになっていたりと、ほぼ完全な別物である。ドット絵を描く者の端くれとして、その恐るべき手間暇にただただ感服することしかできない。


音楽

下村陽子氏による音楽は、各編の世界観に合わせて曲調が変わっている点も相まって素晴らしかった。またリメイクにあたって全曲アレンジされているが、このアレンジも原曲の良さをうまく活かしているように感じた。

やっぱり『MEGALOMANIA』の名曲っぷりは凄まじい。そりゃトビーフォックス氏もオマージュしたくなる。アレンジも「原曲に忠実に1ループ+アレンジ強めな1ループ」という形になっていて、非常に良い形式だな〜と思った。

実はプレイするまでは「1ループ短いし、そんなに好きじゃないかも」と思っていたのだが、実際にプレイして聴いてみて完全に評価がひっくり返った。物語の一番いいところで流れる曲を好きになるというのはよくあるが、この曲はそれを8回繰り返すことになるのである意味当然かもしれない。さっきも同じようなことを書いたが、このゲームをやってこの曲を好きにならない人なんていないだろう。

正真正銘のラスボス戦で流れる『GIGALOMANIA』も、『MEGALOMANIA』のフレーズを入れ込みつつも威厳溢れるラスボス然とした楽曲で良い。



各編のバランスについて

これは良い悪いという話ではないかもしれないが、編ごとのボリュームにはかなりバラつきがあるな〜と思った。並べるとしたら

圧倒的に長い:最終編(ダンジョン等のやり込み要素や、主人公の多さも含む)、

標準的:SF編、近未来編、中世編、功夫編、幕末編、原始編

短い:西部編、現代編

という感じになる。それぞれに違ったゲームシステムを含んでいて、編としてまとめた際にボリュームの差異が出てくるのは当然のことかもしれない(戦闘のみで構成される現代編なんてまさにそうだ)が、「え、もう終わり?」と少し思ってしまったのは事実だ。


まとめのようなもの

ゲームシステムなどの面ももちろん素晴らしいのだが、全体としてみるとこのゲームの良さは「アツさ」に集約される。それぐらい強い印象を残す、ある意味で極めて上質なストーリーだった。自ら体験するという特徴があるRPGというジャンルにはには相性が良いのかもしれない。
そのアツさに身を委ねて戦う楽しさは唯一無二であり、是非ともお勧めしたい作品である。クリア時間が20時間前後なのも、大ボリュームすぎるゲームで溢れる昨今にはある意味良い点だ。


一番好きな二人。各編のストーリーも好きだし、最終編でも十二分に活躍してもらった(キューブが主人公)。メーザーカノンと旋牙連山拳がやっぱり強い。残りのメンバーはおぼろ丸と高原 日勝。


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