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太陽光発電ビジネスとは(メディア様向け)経緯と課題

はじめに:2023年末頃からTVメディアからの銅線窃盗の動画提供依頼を受ける機会が多くなった。
予備知識なしで取材に来られ”太陽光発電事業について説明するところから始めなければいけない”か、”盗難多発しているのでお気をつけ”的な浅い内容になりがちです。
もっと深掘りして欲しいという意図から基礎的な内容をまとめました。

都会だけで生活していると気づきにくいが、遠出をするとソーラーパネルが並んでいる風景が増えました。ほとんどが個人や民間企業の投資目的です。

2011年の東日本大震災後、原発停止措置の(恐らく)代替策として見切り発車で成立したFIT制度(2012年スタート) により全国に大小の太陽光発電所がつくられてきました。


儲かっていた太陽光ビジネス

太陽光投資:2012~2016年頃は利回り20%と言われていた時期もあった。が2020年以降(FIT単価12円以下)は10%以下といわれている 
※比較 不動産投資:年利6%~10%/ 貴金属投資/約5%

■太陽光発電設備 原価(50kW未満規模=”低圧全量買取”の場合)
  設備費用800万円
  施工費350万円(重機/人件費等)
  土地代150万円
□建設費合計1300万円→分譲/転売→1500~2000万円で販売 
             ※多くは資金を借り入れて購入
 FIT価格1kWh/36円~27円の場合 年間300~240万円の利益
年間収入300万円÷投資金1500万円=利回り20% 
1500万の投資で300万円の収入が20年間続く
 =6000万円の儲け/4500万円の差益 
早くこの制度に気付いた人や田舎で土地を持っている人が飛びついた
→売電金額は日本国が保証するので手堅いため、金融機関も無担保/低金利でお金を貸した

問題多発

金融投資の思想がそのまま太陽光投資に持ち込まれたため初期投資額の安さが求められた。結果粗悪な設備が乱立した。

  • 安い土地、甘い造成→自然災害、地盤から倒壊

  • 安い部材→国産パネルメーカの衰退・故障が多い海外メーカ混在

  • 安い賃金→未熟ゆえの施工不良多発・熟練者の転籍で維持できない・素行の悪い施工に携わった人物が銅線盗難をするケースもある

  • 保守管理費用はかけたくない→防犯対策は手薄

  • 施工会社→儲からなくなった場合、廃業・倒産

※施工会社はEPCといわれることが多い
※2013年頃急激に需要が増えたが、製造、品質管理体制が甘く2017年以前の中国生産パネルは当たり外れが多い
※ソーラーパネルで発電した電気は乾電池と同じ直流→家庭や送電線に使用される交流変換するのがパワーコンディショナ(PCS)と呼ばれる。
PCSメーカも中国製がシェア半数以上
※50kW(低圧)の発電所でテニスコート5面分くらい。メガソーラーは低圧の20倍サイズ

まっとうな太陽光発電所

しっかりとした設計、運用管理ができている発電所も中にはある。
Qセルズ製のソーラーパネル、オムロン、パナソニック製のPCSはトラブルは稀だ。サポートやアフターサービスで勝負しているメーカーもある。
土木系のEPCやゼネコン子会社系が手掛けた発電所は手抜きが少ない。基礎から抜かりない。ただし元請けやオーナーが渋って工期短縮やアドバイス無視した現場は問題が残る。
業界団体に所属し講習に参加するような会社が手掛けた発電所もトラブルが少ない。

太陽光発電はメンテナンス必要

かつては、「メンテナンス不要」がうたい文句だった太陽光発電だが、設計不良や施工ミス、漏電等で保全装置が働き発電停止することもあるし、落雷被害もある。PCSは10年で交換目安と言われている。
セールストークを信じて一度も現地を訪問せず購入しソーラーパネルが雑草覆われ発電低下を放置していることもある。
太陽光発電設備の運用管理は義務化されたがはたして遵守されているかは定かではない。

メンテナンス業者(O&M)の相場

低圧規模の場合、月額1万円程度という料金設定で、点検や発電停止時の駆け付け業務を代行しているケースが多い。
サービス内容はまちまちで、電気資格のない者が目視点検のみの場合も。
まっとうな会社は、手持ちのお客さんの発電所で手いっぱいで、新規の客はお断りかスポット対応のみという状況。

発電のモニタリングサービス

発電状況を知るための手段として発電データをインターネット経由でクラウドサーバに保存し、発電所オーナーやメンテナンス会社がパソコンやスマホでチェックできるというサービスがある。
晴れているのに発電量が上がらない場合、設備故障やブレーカ断もあるが電線盗難が原因ということもある。

銅線盗難について

2024年現在、産廃業者の銅買取価格は1kg/1200円を超えています。
10kg(米袋の重さ)で1万円になる。ゲーム感覚で「2人でちょっと盗ろうや」と軽い感覚で銅線盗みたくなるのでしょうか。
運転手と実行犯という映像もありました。指示役から司令を受けた闇バイトというケースも考えられます。

投資ということもあり、安い土地すなわち不便でひと気のない場所が選ばれることが多く、夜間照明もないので格好のターゲットです。

盗難対策について

自分はエンジニアの立場で、セキュリティカメラ+インターネットを提案しているが、露出している電線部を金属やコンクリートで囲う という手段も有効だと思う

犯人の国籍について

日本国籍の犯人も少なくないのだが、メディアは「犯人は外国籍」という表現を使いたがる傾向がある。様々な国の友人を持つ私としては嫌な気分だ。
人種差別の表現傾向が続くと海外メディアから問題視されますよ。
先進国=法治国家では居住者は日本人も外国籍も善良だ。偏見報道はダメ

千葉県警の公表ではこの映像の犯人は日本人の20代兄弟とのこと

出力制御の問題

太陽光発電所が乱立した九州地方では発電需要が供給を下回り、電気が余るようになってきた。
FITとして2014年の段階で「将来的には電力が余る見込みなので、2016年以降の設備認定分以降、売電出力を下げる機械が必要になりますよ。インターネットNGなら手動で下げて」とアナウンスされていた。
九州電力エリアでは2018年度から 出力制御 がはじまった。当初年間数回であったが2022年以降は頻度が多くなり売電できず、金融機関への借入金返済が困難になり手放すケースが増えた。
他の電力会社でも出力制御エリアが拡大してきている。
電力買取の制度を知っていれば「発電しても買ってもらえない可能性がある」リスクも考えて投資する/しない の判断もできただろうが、太陽光発電設備を売る側も買う側も、制度の内容も確認しなかったか見通しが甘かった。


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