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テクニカルディレクションの面白さについて

こんにちわ。テクニカルディレクターの森岡です。今回は10月15日のTDAのオープニングトーク『テクニカルディレクションとは?』に先駆けて、自分のテクニカルディレクションについての経験とその面白さについて書いていこうと思います。

2014年のテクニカルディレクション

2014年の4月、私は広告制作会社にインストレーションエンジニアとして入社しました。

インスタレーションと言う言葉に馴染みのない方もいらっしゃるかもしれません。Wikipediaによると空間全体を使った表現手法をインスタレーションと呼びます。私がこの業界に入った当時、広告の分野ではプロジェクションマッピングのようなデジタルを使ってイベントスペースが人目を引くように工夫する商業インスタレーションがとても流行っている時期でした。

様々な企業が広告代理店と共にプロモーション施策としてデジタルや最新のテクノロジーを使った新しい体験ができるインスタレーションを欲っしている時代でした。

私はそんな時代にインスタレーションを専門に扱う部署のエンジニアとして入社したのです。当時、部署には4人前後のエンジニアしかいませんでした。

まずはメールでフィジビリティチェック

当時のプロジェクト実施の切っ掛けは、直接のクライアントである広告代理店から来る『こんな企画思いついたんだけど、実現可能かな?』という問い合わせメールに対して実現可能性をチェックし、返信することでした。今でいうフィジビリティチェックです。

『この体験をラグなく実施するにはあのデバイスとこのデバイスを連携させれば・・・』とか『いっそこの判定システムはバイトを入れて手作業にしてしまったほうがコストが下がって予算にハマるのでは・・・』などと実現可能性とクォリティと予算のバランスの落としどころを探りました。

当時はUXという言葉も知らず、単純に『体験』と呼んでいました(とはいえ広告を見る人を『ユーザ』と呼んでいいのか甚だ疑問ではありますが)。自分の経験と知識を総動員し、実現可能でかつクォリティの高いプランをパズルのように組み上げていくフィジビリティチェックの面白さを知りました。

当時は新しい体験ができるテクノロジーなら即採用!みたいな雰囲気があり、『何か面白いテクノロジーを使った企画ある?』と聞かれることも多く、来た企画のフィジビリティをチェックするだけでなく、フィジビリティの取れた企画を逆に提案することも度々ありました。

また、どうしても仕組み上、体験がうまく行かなさそうな場合は逆に企画の修正案も考えて提案しました。単純に企画のチェックだけでなく、実現可能性とやりとりをする関係で仕事が進んでいました。

作る事で、観察する事でより湧いてくるアイデア

どうしても実現可能か、あるいは体験とし良いものになりそうかの判断がつかなかった場合はモック・プロトタイプを作りました。

実際に作ってみると、良い意味でも悪い意味でも想像と違う点があり、『こうすると良いかも』とか『今回の企画だとハマらないけどこういう企画だと良いかも』みたいなアイデアがどんどん湧いてきました。

昔からアイデアが特段ある方、というわけでもありませんでしたが、技術や仕組みを知ってるが故に、作ったことがあるが故に出てくる沢山のアイデアは、ハッカソンなどでよく見ていた何の根拠もないアイデアよりもずっと価値があるもののように思えました。

特に面白かったのはそうやって見出したアイデアが、広告業界のアイデアマンの出せない未開拓のジャンルのアイデアだったりすることでした。企画の成立がCDやADやプロデューサーではなく、業界に転職したてのテクニカルディレクター(当時はエンジニアと名乗っている場合のほうが多かったですが)のアイデアと技術によって担保されることが何度かありました。

拡張するテクニカルディレクション

最初の頃はインスタレーション相談が多かったのですが、年月が経つにつれてそのジャンルは多岐に渡るようになりました。

ハードウェアを、ソフトウェアを、アプリを、少ない人数で雑でも良いから早く体験可能なように作れる広告業界の制作スキルはメーカによって、新プロダクト開発の際のプロトタイピングスキルとして再発見されました。サービスデザインやデザインシンキングといったデザイン手法とセットで語られることが多かったように思います。

また、企画段階で実現可能性を担保したり、最も重要な検証のための最小限のモックを決めるテクニカルディレクションのスキルは新規事業検討時の相談の際に重宝されるようになり、クライアントは広告代理店だけでなくメーカの製品開発チームやデザインチーム、新規事業部などより実事業に近い所と一緒に仕事をするようになりました。

最初はフィジビリティチェックも自社内の技術が判る人と話し合えばある程度見通しが立っていましたが、段々と『量産に耐えられるようにするには』や『量産コストを下げるには』といったもうスケールの大きく、それ故にもう一段高い精度と幅広い範囲の技術を把握した上でのテクニカルディレクションが求められるようになりました。2016年以降は外部のジャンルの大きく異なる技術者とやりとりすることも増えていきました。

2018年を過ぎると最早製品というよりかはチームや組織をどう変更していくべきか、会社の制度をどう変革していくべきか、社員の気持ちをどう変えていくべきか、といったクライアントの組織そのものへのコミットメントを求められることが増えていきました。当時はDXという単語は殆ど見られませんでしたが、今思い返すとDXそのものの相談だったように思います。

これからのテクニカルディレクション

テクニカルディレクションを行うようになって8年経ちましたが、業界の流行り廃りはあるものの、テクニカルディレクションの重要性および求められる業界は常に増加しているように思います。

そんなテクニカルディレクションの過去現在未来を15日に喋る会をしますので皆様お時間ありましたら是非ご視聴お願いします!

https://tech-director.org/event/opening-talk-session



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